傷心のナタリーさん
すっかり遅くなっちゃったが宿屋に到着~
腹減ったからさっさと夕食を食べるとするか
「帰ったぞ~マスター飯よ…あれ?」
いつもこの時間の食堂は賑やかなのに、今日は静かだ…
!!あれ?今日って10の日だっけ?ヤバイぞ!!宿代は勿体ないが逃げるべきか?
ふと、食堂の入り口にマスターが立っているのが見えた…が、どう見てもいつものマスターだ、決してジェニファーではない
「マスター…で、いいんだよね?」
「ああ、俺だ」
「今日は客居ないっぽいけど、どうしたん?」
すると、マスターは親指で食堂の中を指したので、そちらを見てみた
女の人が一人でお酒を飲みながらどす黒いオーラを出しながら泣いていた…ってあれはナタリーさん?
「マスター、あれってギルドの受付嬢のナタリーさん?」
「そうだ、あれが原因で客が全員逃げてった」
「何か有ったんですか?」
「分からん、最初はリリア嬢と一緒に来ていたんだが、途中から逃げていった。
後はあの状態だ、まいったな、このままだと商売上がったりだ。
坊主、あれ、何とかならんか?」
「無理」
「だよな…」
様子を伺うためにナタリーさんを見たら目が合った、見てる、見てるよ、凄く見てる、ジーっと見てる、どうする、どうするよ俺
さすがにこの状態で逃げるわけには行かないよな、仕方がない
「マスター呼ばれてるっぽいから行ってくるわ」
「頼む、エールをおごってやるから何とかしてくれ」
「あまり期待しないでくれ」
俺はナタリーさんの席に行くのだった
「こ、こんばんは、ナタリーさん。
ここで会うのは初めてだよね」
見てる、見てるよ、しかも無言が辛い、何か言ってほしい…
「な、ナタリーさん?」
ナタリーさんは前の席をちらっと見てから、こっちをジーと見た、座ってほしいのだろうか
「せ、せっかくだから、前座っても良いかな?」
コクンと頷いたので座ることにした
「し、失礼します」
さすがに隣に座る勇気を持ち合わせていないので、対面の席に座ることにする
マスターがすかさずエールを持ってきてくれたので、覚悟を決めるためにエールを一気に飲み干した
「いや~喉が渇いていたので、先に頂いてしまいました。
え~っと、ナタリーさん何か有ったんでしょうか?」
相変わらずジーっと見ている、涙が止まってくれたのは幸いだけど、何か話してくれ~
こちとら前世で伊達に魔法使いや魔導士なんかやっとらんわ、何話せちゅーんじゃい
せめて仕事の話だったらまだ会話できるんだけどなぁ…
仕事か、話のとっかかりとしては最適なのかもしれないな、ダメ元で行ってみるか
「実は今日俺、休みだったんですよ、でギルドの方へ行けなかったんですけど、何か変った事とかありましたか?」
「休み?」
お、思ってた反応と違ったが、とりあえず反応は有ったな
よし!ここからは俺のターン!ドロー!
カードを1枚伏せ、速攻魔法『疲労回復エナジードリンク』を発動!
「実は、ここの所ずっと休みなしだったせいか疲れが溜まっちゃったんですよ。
だから今日は思い切って休みにしたんですよ」
「そうなんですか」
そして、モンスターカード「薬剤師ロッテオババ」を攻撃表示で召喚!!
バトルフェイズに突入、ナタリーさんへダイレクトアタック
「それでね、工業区域へぶらぶらしてたんですよね、たまたま入ったお店が薬剤師のお店でして、いきなり色々手伝わされちゃったんですよね。
なんだかんだで、薬剤師のオババじゃなくてロッテさんに師事することになっちゃいました。
今日は、それからずっと調合の基礎を学ぶことになっちゃんですよ、休みのはずだったのに変ですよね」
「ロッテさんは知ってます、薬剤師では有名な方です。
今まで弟子を取ったって話は聞いたことがありませんでしたが、その方に師事されたのですね、凄いです」
「有名な人なんですね、見た目は凄かったですが…」
どうやらナタリーさんの黒いオーラは消え、いつものナタリーさんになったみたいだ
『YOU WIN!』
え?伏せカードはって?さ、さあ?なんの話かな?
ペラッ
魔法カード【鋼の心】
相手の攻撃時のみ発動可能
相手のターン終了時まで効果が継続される
自分の心を鋼に変えひたすら耐えるマシーンになることができる
効果終了時にすべてのダメージを一気に受けてしまうが、死ぬことは無い、たぶん、おそらく
うん、使わなくて良かった
「明日はホーンラビットを狩りながら解体の練習しようかと思っています。
夕刻には納品に伺うと思いますので、対応お願いしますね。
そろそろ部屋に戻ろうと思っているんですけれど、ナタリーさんはこれからどうするんですか?」
「明日も仕事なので、私も帰ります」
「そうですか、それでは明日ギルドで」
「はい、それではまた」
ナタリーさんは席を立ち帰って行った…無事任務完了かな?
「坊主、助かった。
それにしても何やったんだ?すっかり元気に帰って行ったぞ?」
「いや何も、ただ今日の話をして、明日ギルドへ行くって言っただけだ」
「ほほぉ~」
何かマスターは言いたそうな顔でニヤニヤしている、むかつく顔だ
「マスター腹減ったから飯!サービスしろよな」
「何言ってんだ、サービスならもうしただろ?」
そうだった、チッ、もっとボッっておけばよかった
「ほら飯だ、サービスはこいつな」
今日のメニューはご飯!!と牛皿に野菜スープだ
な、ん、だと…
「この前坊主が喜んでたからな、坊主用として取り寄せておいた。
値段が値段だから毎日は無理だが、たまには出してやる、ありがたく食え」
やべー少しうるっとしてしまった
マスターよ、俺を攻略してどうするんだ?食われるのか?食っちゃうのか?
ジェニファーじゃなくてマスターが食うのか?
「マスターの気持ちはうれしいが、お断りします」
「何を勘違いしているのか知らんが、俺もお前だけは勘弁してくれ」
うん、それを聞いて安心した
気を取りなおして飯だ
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【オンデカ米】
品質:D
効果:無し
沼地に生えている雑草、実は食用可
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うーん、この世界では米は雑草扱いなのか…
だからあまり普及していないのか
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【牛皿】
品質:B
効果:体力回復+2
ミノタウロスの肉、丸ネギを、おろしたショウガナイを塩魚汁、酒、砂糖で煮込んだもの
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塩魚汁?確か魚を塩漬けにして発酵させた醤油みたいなものだったよな?
「マスター塩魚汁って手に入れる事できない?」
「前にも言ったがウチで扱ってるものは売れないぞ?」
そういや、そんなこと言ってたな、残念だ
「まあいいや、マスター大きな深い皿みたいなのって有る?」
「有るが、何に使うんだ?」
「ご飯食べるのに使うんだけど?」
「…ちょっと待ってろ」
マスタが丼っぽい皿を持ってきてくれた、そうだよコレだよコレ、マスター分かってるねぇ(偉そう)
俺は、丼にご飯を入れて、その上に牛皿の中身を乗せた
「おいおい、何やってるんだよ」
そんな事を言うマスターを無視し、俺は出来上がった牛丼にがっつくのだった
「はふはふはふ、旨~!!」
紅ショウガと七味が有れば文句なかったんだが、こればっかりはしょうがないな(笑)
何かマスターがじっと牛丼を見ているが知らないふりをしておいた
「ごっそーさん」
色々と大変な夕食になってしまったが、牛丼が食べられたので満足だった
部屋に戻った俺は体を拭き、ステータスの確認をする
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名前:ハル
年齢:20
状態:普通
LV:1
HP:12/12
MP:25/25
STR:8
VIT:5
AGI:4
INT:15
DEX:20
LUK:3
スキル:投擲Lv2、言語理解、剣術Lv1、激おこぷんぷんLv2、魔力操作Lv2、生活魔法Lv2、鑑定Lv3、隠密Lv1、解体Lv2、調合Lv2(new)
称号:命100、ケモナーLv2、暗黒変態紳士、ロッテの弟子(new)
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ふむ、予想通りに調合のスキルが付いたな、解体と同じくレベル2って事は、独自で学ぶより、人に教えを請うた方がスキルの習熟度が高いのかもしれない
後は称号にロッテの弟子が付いたな、まあ弟子入りしたしな、称号が付くことで何が変わるのかは分からないけどね
それにしても今日は休みのはずだったんだがなぁ…まあいいや、おやすみ~…ぐぅ
実はカードゲームはそれほど詳しくなかったりします
間違いだらけはご愛嬌と言うことでw




