モツ煮込み
薬屋を出た俺は、そのまま教会へと足を運ぶことにした。
中に入ると神父さんが居たのでお布施を払い、お祈りすることにした。
「…何も思い付かないから、今日は良いか。お祈りじゃなくて聖水汲みが目的だしな。」
((´;ω;`)ショーボン)
((つ∀T)オッパイ…)
(エッΣ(゜Д゜;マジデ!?)
(c(`Д´と⌒c)つ彡 ヤダヤダ)
∧∧
((#゜Д゜)ゴルァ!! フザケンジャネーゾ!)
「…サーセン。」
と、とにかく俺は聖水を汲んで帰ることにした。
・・・・
宿屋に到着して一度部屋に戻ってみたが、まだダンジョンから帰ってきてないみたいだ。
う~ん、どうすっかな。
そうだ! たまには俺が夕食を作って振舞ってあげよう!
そうと決まれば、何を作ろうかな。
アイテムボックスの中身を確認してみる…ん? オークモツか…モツ煮込みなら酒にも合うし、良いんじゃないか?
と言うか、俺が食いたくなって仕方がない。よし!
キッチンを借りても良いが、作ってる最中のモツの匂いは独特だからな、今回は外で作業することにしよう。
折角だから大量に作ろう。まずはオークモツを処理しないとな、解体したそのままだからとてもじゃ無いが食べられない。
俺は外へ行き、庭に生活魔法で深い穴を掘り、モツの中に熱めのお湯を、壁を破らない程度の勢いで流し込んだ。
中に詰まっていた物と一緒に腸内の油も流れていき、綺麗にすることが出来た。
普通だったら面倒な手順で処理する必要が有ったので、ホント生活魔法様々だな。
綺麗になったモツを一口サイズに適当に切って行く。切って行く、切って行く…こ、この位で良いかな?
とりあえず用意したのは10kgだ。け、決して途中で面倒になった訳じゃないぞ? 本当だぞ?
これを大きな鍋に入れて、水と一緒に煮込む。沸騰したらお湯を捨て、も一度水を入れて煮込む。
2回目の沸騰後、生活魔法で水を出しながらモツを1つ1つ丁寧に洗う。
塩もみ、小麦粉で処理をする方法も有るが、貧乏性の俺は、その方法はあまり好きじゃないんだよね。
だって、使った材料は料理には使えないので捨てるしかないからな。勿体ないじゃん。
洗ったモツは、水けを取って、これでモツの下処理は終わりだ。
生活魔法を使ったとは言え、量が量なので随分と時間が掛かってしまった。
次は野菜の処理だ。モツの量からすると、大根4本、ニンジン7本、ゴボウ7本くらいか? こんにゃくが無いのが残念だ。これも適当に一口サイズに切って行く。
長ネギ20本、ニンニク5個、ショウガ5個を微塵切りにして準備完了だ。
鍋にごま油を入れて、長ネギ、ニンニク、ショウガを入れてじっくりと焦がさない様に炒める。
十分に火が通った所で野菜、モツの順に追加して炒める。
火が通った所で、ひたひたになるまでお酒を入れる。水でも良いんだけど、酒で煮ると臭みが取れてモツが柔らかくなって旨いんだよね。
ジェニファー素材に日本酒っぽいのが有ったので使わせてもらおう。一応言っておくが、大吟醸では無いぞ? 料理酒っぽい感じのお酒な。
火を点け、中火でコトコトと30分ほど煮込む。
その後は、みりん300ml、醤油150ml、味噌2kgを追加して味を調える。
これは好みなのだが、鷹の爪を入れるとパンチが効いた味になるので俺は入れる。とりあえず5本ほど入れておこう。
入れ終わったら弱火にして、さらに30分煮込んだら完成だ。
正直1度冷ましてからの方が、味が染みて旨いんだが、今回は時間が無いのでこれで終わりにする。
「…ごくり。」
作った本人が言うのも何だが、凄く良い匂いがしていて旨そうだ。
「ちょ、ちょっとくらい良いよね? そ、そうだ、味見は必要だよね?」
そうと決まれば器に盛り付け、後は細く切ったネギと七味、最期に鰹節を掛けたら完成だ。
鍋や、道具は全てアイテムボックスへと仕舞う。洗うのは後でやるとしよう。
「やっぱりモツ煮込みと言ったらビールだよな!」
残念だがビールが無い以上、エールで代用だ。
食堂の空いている席に着くと同時にケリーに声を掛けた。
「ケリー、すまんがエールを1杯貰えるか?」
「あ、はい。直ぐに持ってきます~」
ケリーがキッチンに向かい、直ぐにエールを持って来てくれた。
「ハル様、どうぞ。」
「サンキューな。はい、エール代。」
俺は鉄貨2枚を支払い、エールを受け取った。
待ちきれない俺は、早速生活魔法でエールを冷やす。
ケリーが何か言ってた気がしたが、俺の頭にはモツ煮込みしか無いので、良く聞えなかった。
それでは、いただきま~す!!
ぱくり…旨っ! 柔らかいモツが、濃い味付けと一緒に食べることで、のどが渇く。
このタイミングでエールをゴクリ! くううぅぅぅぅ~~~こりゃたまんね~!!
ぱくり、ごくっ! ぱくり、ごくっ! モツを食べる毎にリセットされる味覚に、冷たいエールののど越し、この永久機関で生きていることを実感する。最高だ!!
一応、味見なので、少量しか無かったモツ煮込みは、あっという間に無くなり、エールも空っぽになってしまった。
満足感を得た余韻を味わった後に、殺気(?)らしきものを感じた俺は、その殺気を誰が飛ばしているのかを確認することにした。
「ズルいのじゃ。」
そこには涎を垂らしてジッと器を見ていたビアンカさんと、シャルが居た。
そして、流石に涎は出ていなかったが、アイリさんと、ナタリーさん、そしてティアも物欲しそうに見ていた。
「あ、あの、そのですね、これはですね、えっと…」
「ハル君?」
「ハルさん。」
「ハル様。」
「ハル~」
「・・・・」
ティアさん、その笑顔での無言は怖いです。
「み、みんながお腹空いて戻って来るかな~と思いまして。ちょっと作ってみました。」
「「「「「!!」」」」」
「た、食べますか?」
「「「「「食べる(ます・のじゃ)!!!」」」」」
俺はアイテムボックスからお鍋と器を人数分取り出した。
後はすくうためのオタマを取り出し、器に盛って行く。
「ケリー、人数分のエールと、シャルの分のジュースを頼む。」
「はい。お待ちください~」
すぐさまケリーが持って来てくれたので、冷やして頂くことにした。
「おほぉ! これは旨いのじゃ!!」
「本当! 美味しい~!!」
「やっぱりハルさんは凄いです。」
「美味しいです。」
「美味しいけど、これだけだと、ちょっとショッパイ…」
シャル的には今一つだったみたいだ。
確かにご飯か酒でも無いと、量は食べられないのかもしれない。
ただ、酒に合い過ぎるから飲みすぎにも注意は必要なのだけどね。
・・・・
「マジかよ…」
あれだけ沢山作ったにも係わらず、鍋の中は空っぽになってしまった。
理由は、俺達が旨そうに食べていた所を見て、他の客も売ってくれと言ってきたのが原因だ。
それにしても軽く100人分は作ったハズなのに、空っぽになるとは思わなかったよ。
しかも1杯、銅貨1枚にも係わらずだよ? 御蔭で銀貨8枚ほどの儲けになってしまったのだ。
え? 銀貨2枚分はどうしたのかって? そりゃあね? 察してくれる助かる。
ふと、店主の顔が見えたのだが、ホクホク顔だった。
確かにモツ煮込みとエールの相性はバッチリだ。物凄くエールが売れたのだろう。
お役に立てて幸いです。また時間が有ったら作っても良いかもしれない。
夕食が済んだ俺達は部屋に戻ることにした。




