トラップ講習 3
「まずは、トラップが有るかどうかの判断をするだけで良いっすよ。」
エキストラさんにそう言われたので、俺は扉を観察することにした。
パッと見ではどの扉も同じに見えた。ただ、鍵穴とかは無いので、鍵が掛かっている訳では無さそうだ。
だけど、俺は2つの扉だけは直ぐにトラップのドアだと気が付いた。
「あ、2番目と5番目、これはトラップだ。」
「正解っす。さすがっすね。」
先ほどの床トラップと同じだった。うっすらと魔力が纏っていた。
他の扉には魔力が感じなかったので、順番に調べていくことにした。
「1番目と7番目もトラップだな。」
「正解っす。」
これは分かりやすかった。ドアノブの下側に針が有ったのだ。
おそらく握ると毒を受けることになるのだろう。
「6番目と10番目もそうだな。」
「正解っす。」
ドアノブ自体には何も無かったが、扉を開ける際の顔の位置辺りに穴が空いていた。毒ガス系のトラップだろう。
これで残り4つだ。だけど、残りのドアにはトラップが有るかが、分からなかった。
「すいません、分からないです。」
俺は降参することにした。
「まぁ、最後のトラップは見ただけじゃ分からないっすからね。」
そう言ってエキストラさんが針金をドアノブに向けて放り投げた。
バチッ!
一瞬火花が出た。
どうやらドアノブに電気が走っているみたいだった。
「なる程、電気か。」
「電気? 何っすかそれ? これは雷っす。」
「あ、いえ、こっちの話です。」
「まあいいっす、これのトラップの解除は楽っすよ。今やったことと同じっすね。」
「わかりました。」
どうやら放電すれば良いみたいだ。確かに簡単だ。
「じゃあ、順番に解除の方法を教えて行くっす。」
「お願いします。」
「まずは針は触らない、もしくは折っちゃえば良いっす。」
「あ、それで良いんですね。」
これも簡単だった。
「次に穴の開いているトラップっすけど、穴を何かで防ぐだけで良いっすよ。」
「こっちも簡単ですね。」
「ただし、飛び出す針ならまだしも、ガス系のトラップだった場合は、隙間が有るとガスを吸っちゃう可能性が有るので、気を付けるっす。」
「了解です。」
「問題は最後のトラップっす。」
エキストラさんの真剣な顔に、俺はゴクリと喉を鳴らした。
「これは生きている者が触ることで発動する罠っす。何が起こるかは発動するまで分からないっすね。
睡眠だったらまだしも、呪われるかもしれないし、下手すると死ぬっす。」
「解除の方法は?」
「無いっすね。一度発動させるのが解除の方法っす。」
「じゃあどうするんですか?」
「方法は2つ、無視するか、誰かが覚悟を決めて触るかっすね。
そのためだけに専用の奴隷を連れている人も居るくらいっすよ。」
それを聞いてティアさんが言っていたことを思い出した。
だからあんなことを言ったんだ。まぁ、俺はやるつもりなんか無いけどね。
「分かりました。」
「トラップについてはこんなもんっすね。何が質問とか有るっすか?」
「床と扉以外にもトラップって有るんですか?」
「地下20階より先に行けば有るかもしれないっす。だけど、情報が無いため教えることは出来ないっすね。」
「そうですか。まぁ、当分先の話ですし、その時になったらまた考えたいと思います。」
「頑張って追いつくっすよ。」
「はい。」
「何か有ったら聞くと良いっす、サービスしておくっすよ。」
「はい。その時はお願いします。」
「それじゃ、またっす。」
エキストラさんはそう言って去って行った。
さてと、講習も終わったことだし、窓口へ戻ることにした。
今はガラガラの時間だったので、すんなりと俺の順番が来た。
「次の方どうぞ~」
「カレンさん、講習が終わりました。」
「ハル様、お疲れ様です。
依頼料はすでに支払っておりますので、以上になります。」
「分かりました。」
「では、カレンが承りました。
またのご利用をお待ちしております。」
用事も済んだので、俺は冒険者ギルドを後にすることにした。




