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ビアンカさんと

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


宿屋に到着して中に入ると、ケリーが沢山のシーツを抱えて運んでいた。

俺達が入ってきたことに気が付き挨拶してきた。


「お、おかえりなさい。あっ…」


振り向いたせいか、抱えていたシーツが崩れた。


「おっと。」


俺は慌ててシーツをキャッチ! シーツは無事だった。


「あ、ごめんなさい。」


「汚れなくて良かったよ、これ何処に運ぶんだ?」


「お客様にそんなこと頼めません。」


「これくらいなんでも無いから、ほら、案内してよ。

 あ、皆は先に部屋に戻ってて良いよ。」


「わかった~」


「では、先に戻ってますね。」


「さっさと着替えて飯にするのじゃ。」


「私もお手伝いをしましょうか?」


「いや、運ぶだけだし、疲れているだろうから良いよ。ありがとう。」


ふとシャルの機嫌が悪いことに気が付いた。


「シャル、どうした?」


「何でも無い!」


たまにシャルの機嫌が悪くなる時が有るよな、反抗期だろうか?

俺はシャルの頭を撫でた。


「シャル、直ぐに戻るからな。」


「うん。」


俺がそう言うと、少し機嫌が直ったみたいだ。


「じゃあ、これ何処に運べばいい?」


「あ、はい。こっちです。」


俺はケリーの案内の元、シーツを運ぶのだった。


「ここにお願いします。」


ここはリネン室みたいな場所みたいで、シーツ、毛布、枕等が棚に収められていた。

俺はシーツが保管している棚にシーツを仕舞った。


「ありがとうございました。」


ケリーがお礼を言ったので、俺はつい頭を撫でてしまった。


「大したことはしてないよ、いつもケリーが頑張ってるからな、つい手伝っちゃうだけだ。頑張れよ。」


「はい! えへへっ。」


ケリーは褒められて嬉しかったのか、顔を赤くして俯いていた。


「じゃあ俺は部屋に行くから。また後でな。」


「はい。」


俺はリネン室から出て自分の部屋へと向かうのだった。

部屋に戻るとすでに着替えてくつろいでいたみたいだ。

ただ、ナタリーさんとティアさんが居なかったので、おそらく夕食を作りに行ったのだろう。


「ただいま。」


「お帰りなのじゃ。」


「おかえり~」


シャルは少しムスッとしている。

う~ん、何か気に入らないことでも有るんだろうか? 年頃の女の子は難しい…

とりあえず装備を外して着替えることにする。


「それじゃ夕食食べに行こうか。」


「行くのじゃ。」


「お腹空いた~」


「うん。」


食堂へ移動し、空いているテーブルへと座ると、ナタリーさんとティアさんが食事を運んできた。


「おっ、来た来た。」


「待ってたのじゃ。あとケリーよエールを頼むのじゃ。」


「は~い。直ぐにお持ちします。」


相変わらずケリーは働き者だ。

ふと、ナタリーさんが何かを待っている様な感じで、そわそわしながらこちらを見ていた。何だ?

すると隣に座っていたアイリさんが肘で俺を突いて小声で話しかけてきた。


「ほら、ハル君、ナタリーが待ってるよ。」


「えっと、何をだ?」


「もぅ…朝のヤツでしょ? そう言う所がハル君らしいんだけどさ~」


朝の? 何か有ったっけ? えっと…あっ!!


「な、ナタリーや、俺がこんな体になったばっかりに、い、何時もすまないねぇ、ゴホゴホ…」


俺がそう言うと、ナタリーさんはとっても嬉しそうな良い笑顔になった。


「おとっつあん! それは言いっこ無しですよ♪」


と、元気よく嬉しそうに言ってくれた。

ナタリーさん、違う、違うんだよ…そのセリフは娘が親を気遣う様に言うセリフだよ?

決してそんなに嬉しそうに元気一杯言うセリフでは無いんだ…


「な、ナタリーありがとうな。」


「はい♪」


とりあえず満足してくれたみたいなので良しとするか。


「エールお待たせしました。」


「ありがとうなのじゃ。」


会話が切れたタイミングでケリーがエールを持って来てくれた。

ホント、この子は良く気が利く良い子だよな。

さて、今日の夕食はっと、ミートソースにサラダとコーンスープだ。


ぱくり…旨い! トゥメイトゥの酸味がひき肉とタマネギの甘さといい塩梅だ。

サラダもドレッシングが工夫されていて、いつも味が変わって飽きない様にしてあるし、コーンスープも絶妙な味付けで最高だ。


ぱくぱくむしゃむしゃ…ごっくん。


「ごっそーさん。」


食事が終わったので明日の話をしておくことにする。


「俺は明日、トラップの講習を受けるけれど、皆はどうする?」


「ん~、たまには私達だけでダンジョンでも行ってみる?」


「そうじゃの、ハル抜きでも進める様になっておくのも悪くは無いの。」


「そうですね、ハルさんが万が一気絶した時のことを考えると必要かもしれません。」


「頑張る。」


「私も精一杯お手伝いします。」


どうやらダンジョンへ行くみたいだ。


「そっか、皆の実力だったら問題無いとは思うけど、十分気を付けてね。」


「「「「「はい(なのじゃ)。」」」」」


さて、何時もだったら部屋決めを行うのだが、今日は…


「ふふん、今日はあたいだな。」


そうなのだ、ダンジョンでビアンカさんに攻撃をしてしまったことによる謝罪で決まったんだっけ。


「じゃあおやすみ~ また明日ね。」


「みんな、じゃあの。」


「「「「お休みなさい。」」」」


皆と別れて俺とビアンカさんは2人部屋へと戻ってきた。


パタン…


扉が閉まるとビアンカさんが抱き着いて来たので、俺もビアンカさんを抱きしめる。


「こうしていると、安心するのじゃ。」


「俺も安心するよ。」


「そうかの? ハルの心臓がドキドキしておるが?」


「それは仕方がない、だって愛するビアンカを抱きしめているんだ、ドキドキしない方が失礼だろ?」


「…馬鹿。」


ビアンカさんは俺の胸に顔をうずめたまま小声で言ってきた。


「でも、あたいも嘘ついたのじゃ、実はあたいもドキドキしているのじゃ。」


「そっか、同じだな。」


「同じじゃの。」


そう言ってビアンカさんが顔を上げると、潤んだ瞳で俺を見てきた。

普段とのギャップというか、しおらしいビアンカさんを見ていると、たまらなく愛おしくなる。


「ん…」


こうして俺達の夜は更けていくのだった。


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