新しい武器は
部屋の中に入ると、中央には例の如くゴブリンナイトが立っていた。
「行くぞ!」
俺の掛け声と共に、皆が動き始めた。
「アイスウォーターアロー!」
「炎の矢!」
先制攻撃でアイリさんとティアさんの魔法が発動した。
当たればラッキー程度で、目的はあくまで足止めだ。
さすがはゴブリンナイトだ。ビアンカさんがたどり着いて無いフリーの状態のため、余裕で盾と剣で魔法を防いでいるが、そのせいで足は止まっていた。
その隙にビアンカさんがゴブリンナイトまで迫ることが出来た。
「このっ!」
ビアンカさんの攻撃は盾で防がれたが、これも予定通りだ。
そこにシャルが飛び込む…フリをして急停止! ゴブリンナイトはその誘いに乗ってしまい、ロングソードを空振り、体勢が少し崩れた。
「行けっ!」
俺が薙刀を大きくゴブリンナイトの死角から当たる様に、バットのフルスイングの如く大振りで振った。
ザクッ!
俺の攻撃は、体勢を崩していた御蔭も有って、見事にゴブリンナイトの首を刎ねた!
…が、その勢いが殺しきれずにビアンカさんへと刃が向かってしまった。
「マズイ!」
そうは思っても、勢いが付いたのを止める力が俺には無かった。
お願いだ! ビアンカさん、避けてくれ!!
ガィン!
そんな俺の気持ちを他所に、ビアンカさんは盾であっさりと攻撃を防いでくれた。
「危ないのぉ。」
台詞とは裏腹に、ビアンカさんは余裕そうだ。
「ご、ゴメン!」
「まぁ、ハルの攻撃は見えておったからの。ゴブリンナイトを切るのに威力も落ちてたし、全然余裕じゃ。」
「それでも俺は、ビアンカさんに対して攻撃をしてしまったんだ、だから本当にゴメン。」
「まぁ、どうしてもと言うのなら、今日はあたいが、ハルと一緒の部屋にでもしてもらおうかの。」
「うん、仕方ないね~」
「ですね。そうしないとハルさんも納得しないでしょうし。」
「残念。」
「あらあら、うふふっ。」
どうやら今日の夜はビアンカさんと一緒が決まったみたいだ。
と言うか、ビアンカさんは、それで良いのか?
「わ、分かった。」
とりあえず了解しておこう。
「やった~! なのじゃ!」
こんなことで喜んでくれるのなら、まあ良いか。
でもこれで終わりにしては駄目だ。しっかりと反省しなければならない。
反省事項は、初めての武器で攻撃範囲を把握しきれてない俺の問題だ。後でしっかりと反復練習をしておこう。
「それにしても、ビアンカは何で怒らないんだ?」
「そうじゃのぉ~、実際に切られたら痛いし、多少は怒るかもしれんが、切られておらんからの。
じゃが、例えハルに殺されたとしても、あたいは恨まないのじゃ。」
「何で?」
「ワザとじゃ無いのは知ってるし、ここはダンジョンじゃ、万が一もあり得る。
それにの、あー…後は内緒じゃ。気にすることは無いのじゃ。」
「分かった。有難う。」
ビアンカさんが何かを言いかけたが、多分聞いても教えてはくれないだろう。
だったら、お詫びと言うのも変だが、精いっぱい愛そうと思う。
「さて、ゴブリンナイトを倒したけど、どうする? このまま下に降りるか? もう一度挑戦する?」
「どうせまた戦うんだし、今度で良いんじゃない?」
「じゃな、降りるのじゃ。」
「オーク!」
「分かった、じゃあ声を掛けてから下に行くか。」
俺は扉を開けて、待っているPTへと下に行くことを知らせ、扉を閉めてから階段を降りるのだった。




