副ギルド長
廊下の突き当りの右の部屋か、ここだな。
俺はドアをノックした。
コンコン…
「どうぞ。」
了解が得られたので入ることにした。
「失礼します。」
入った正面に机が有り、色んな書類が積み重なっていた。
そこで資料とにらめっこをしてた中年の男性が居た。
男性は俺達が入ってきたので顔を上げ、話しかけてきた。
「私はここのギルドの副ギルド長をしているサイモンだ。
君たちが抜け道を見つけたと言ってきたのかな?」
「はい。こういった発見をした場合の対応が分からなかったので窓口で相談しました。
あ、私は冒険者のハルと申します。」
「地下5階までは既に調べ尽くしたと思っていたんだが、本当かね?」
「はい。仲間たちにも確認して貰いました。」
少し考えた副ギルド長は、1枚の紙を出してきた。
「これは?」
「地下4階の地図だ。」
「見ても良いですか?」
「かまわんよ、どうせ銅貨8枚程度で売られている物だしな。」
了解が得られたので確認してみることにした。
「こ、これは…」
なんかぐにゃぐにゃとした地図で、分かりにくいな。
分かれ道は合ってそうだが、距離とかは結構適当っぽい感じだ。
横から皆も覗き込んだ。
「なんじゃこれは、ハルが作ったのと大分違うの。」
「本当だね~、これじゃ見つからないのも仕方がないんじゃないかな?」
「さすがはハルさんです。」
シャルとティアさんは奴隷と言う立場から会話に参加するのは遠慮したみたいだ。
俺達の会話を聞いた副ギルド長は、俺の書いた地図に興味を持ったみたいだ。
「では、君が作成した地図を見せて貰えないかな。」
副ギルド長がそう言ってきたので、俺が地図を渡そうとした所で、アイリさんからの待ったが掛かった。
「ハル君、ちょっと待って!」
「え?」
「ハル君、情報はお金よ? 安易に見せては駄目だよ?」
「副ギルド長は見せてくれたけど?」
「それは副ギルド長が持って居る地図が大した価値が無いからだよ。言ったでしょ? 銅貨8枚の価値だって。」
そーいやそんなことも言っていたな。
ふと副ギルド長を見ると苦笑いをしていた。
「そのお嬢さんの言う通りだな。済まなかった。」
「で、役に立つ重要な情報だった場合はどうするのかな? かな?」
副ギルド長は少し考えた後にこう答えた。
「見てみないことには何とも言えないが、役に立つ情報で有ったのならば、それに見合った金額を払うことを約束しよう。」
「ならいいわ、ハル君後は宜しく~」
「アイリ、ありがとう。」
俺だったら素直に出してしまっていたからな。有難いな。
ここまでお膳立てしてくれたんだ、しっかりやるとしよう。
「これは俺が作った地図になります。これが地下3階への階段、で、こっちが地下5階への階段になります。
そして、ここが例の抜け道になる通路になります。」
副ギルド長は俺の地図をマジマジと見つめている。
「こんな地図は見たことが無いが、本当なのか?」
「ええ、合っていると思います。」
「こんな所に抜け道が有るとは…」
副ギルド長は、元々持って居た地図を見比べている。
最初の地図は、見当違いの場所に有るため、抜けられるようには見えなかった。
「一見ただの壁に見えますが、触ることが出来ず、通り抜けることが出来ます。」
それを聞いた副ギルド長はガタッと立ち上がった。
「それは本当か!? だとしたら新発見だ! 他にも同じような通路やら隠し部屋が有るのかもしれない!」
副ギルド長は大興奮で叫んでいる。
「他にもこういった通路とかは見つけて無いのか?」
「まだ地下4階までしか攻略してないので無いですね。
ただ、地下4階まで書いたことで気が付いた事も有りました。」
「それは何だ?」
「教えるのは良いですが、重要な情報と判断出来たのなら、それなりの対価を頂きますよ?」
俺は学ぶ男だ、しっかりと約束を取り付けるのだ。
「もちろんだ、先ほどの抜け道も確認出来た後は、十分の報酬を約束しよう。」
「では、お教えします。
まず、こちらが地下1階の地図になります。」
俺は地下1階の地図を渡した。
こっちはまだ範囲が狭いせいか、買った地図でも多少歪だが、わりと正確だった。
「ふむ、それで?」
「こちらが地下2階の地図です。何かお気づきになりませんか?」
地下2階の地図を渡す。
「どちらも綺麗な四角なんだな…ん?」
副ギルド長が2枚の地図を重ね合わせ、透かして見た。
「こ、これは…地下3階の地図も有るかね?」
「はい、こちらですね。」
地下3階の地図も渡した。
副ギルド長は地下3階、地下4階の地図も合わせて透かしている。
「1つ降りる毎に等間隔に広くなっている?」
「その通りです。なので地下5階はそれよりも一回り大きな地図になると思います。」
「なるほど、次の階の大きさが降りる前から分かる様になるのか…」
「はい。」
「…この件は一度預からせてもらっても良いだろうか?」
「構いませんが、地図を持って行かれるとこちらも困ってしまいます。」
「写すのは構わないか?」
「私が作った物と保障して頂けるのならは構いません。」
「分かった、正式な書類として出させてもらおう。」
俺の地図は専門の職人に写され、ギルドの公式文章の書類を貰い、この件は一度終わりとなった。
「では、後日結果を報告させてもらう。
窓口で連絡してもらうので、その時は宜しく頼む。」
「わかりました。」
話も終わったみたいなので、俺達は副ギルド長の部屋から出て冒険者ギルドを後にした。
カレンさんは忙しそうだったので、視線が合った際に頭を下げるだけにしておいた。
意外と大ごとになってきました。
 




