地下3階
ダンジョン入り口までやってきた。
相変わらず色んな物を売っているが、特に必要な物も無いため、素通りすることにする。
今回の目的は地下3階なので、そこまではさっさと進むことにした。
地下1階のスライムは経験値を稼ぐためにも潰していく。
地下2階以降のスライムは明かり確保のために出来るだけ焼いて行くことにした。
おかげでホーンラビットの戦闘は楽になり、サクサクと進むことが出来た。
「さて、いよいよ地下3階だな。」
階段を下りた先はイキナリ別れ道だ。
右へ進むか左へ進むかだが…
「敵の反応有り! こっちに来るぞ!」
選択する暇も無く敵が近寄ってきた。
俺が声を掛けたことで、全員戦闘準備をする。
「右から来るぞ! 数は3。」
「任せるのじゃ。」
ビアンカさんが前に出たと同時に敵が飛び出してきた。
「グラスウルフじゃ!」
ビアンカさんが盾で抑えている間に、俺とシャルが攻撃を仕掛けるが、意外と素早い動きで攻撃が掠る程度しか当たらない。
「ん?」
俺達が攻撃を仕掛けている最中に反対側からも2匹の反応が近づいてきた。挟み撃ちかよ!
「後ろ、数2が来てるぞ!」
「任せて下さい!」
ナタリーさんが前に出て、アイリさんとティアさんが魔法の準備をする。
「アイスウォーターアロー!」
「炎の矢!」
短縮詠唱で発動した魔法がグラスウルフへと向かい命中した。
「キャイン!」
「ギャウ!」
1匹は見事頭に命中し、そのまま倒れたが、もう1匹は僅かに逸れ、右足の付け根辺りに当たった。
動きを阻害された所にナタリーさんの攻撃が入る。
「えい!」
見事頭にメイスを叩きつけ、グラスウルフは倒れた。
「こっちの方が手間取ってるな。次が来たら厄介だな、だったらダブル高温高圧洗浄!」
1匹はビアンカさんに任せ、2匹を高温高圧洗浄にて攻撃した。
顔面に熱湯を掛けられたグラスウルフが怯んだ隙にシャルと俺の攻撃が命中した。
「ギャ!」
「キャイン!」
シャルは見事グラスウルフの喉元を打ち抜き1撃で倒したが、俺は寸での所で躱され、右後ろ脚を切っただけった。
「でも、これで機動力は奪った!」
続けてお腹に向けて攻撃を仕掛ける。
「ギャウ!」
流石に避け切れなかったため、見事命中! 倒すことが出来た。
残りの1匹は3人掛かりだったため、アッサリと倒すことが出来た。
「ドロップを回収したら一度地下2階へ戻ろう。」
「「「「「はい(なのじゃ)。」」」」」
肉と牙を回収した俺達は地下2階へと戻った。
周りには敵も居なかったので落ち着く事ができた。
「降りて早々大変な目に会ったな。」
「そうじゃの、まさか後ろからも来るとは思わなかったのじゃ。」
「で、ハル君どうするの?」
「ん~今回は後ろが2匹だったから何とかなったけど、3匹が来たらどうだった?」
「倒せたとは思うけれど、誰か怪我をしたかもしれないね~」
「はい、私では防ぐのは難しかったと思います。」
「そうすると、前と後ろのどちらにも攻撃を防ぐ人が必要ってことか。」
みんなであーだこーだと考えていると、
「あ、あの、足止めなら私が出来ると思います。」
ティアさんがおずおずと言ってきた。
「そうなんですか?」
「えっと、炎を嫌う敵であれば多分。」
「ちなみにどんな方法ですか?」
「炎の壁を作ります。」
「試して貰っても良いですか?」
「では、炎の壁!」
ティアさんが魔法を唱えると、高さ2m、幅5m程の壁が出現した。
「ファイアーウォールか。ティアさんこれを2枚同時にって出せますか?
2枚出せるのなら道を防げそうなんだけど。」
「えっと、やり方が分からないで無理です。ただ、連続でならば可能だと思います。」
「そう言えばハル君って、2つ同時に魔法使ってたよね? どうやるの?」
「え? アイリは出来ないの?」
「普通出来ないと思うんだけど…」
そう言う物なのか? 確かに俺も気が付かなければ使えなかったけどさ。
「アイリって魔法使う時に杖の先に魔力を集めていたよね。」
「当り前じゃない。」
「杖無しだと魔法ってどうなるの?」
「魔法発動に魔力が余計に必要になるのと、威力が落ちたり、制御が難しくなったりするね~」
「ちょっと杖を貸して貰っても良い?」
「はい、ど~ぞ。」
アイリから杖を受け取ったので、魔法を使ってみることにした。
とりあえずライターの魔法を使ってみることにした。
杖の先から火が出たが、いつも使っているのと変化は無かった。
次に火×5で使ってみた。白色の炎が一瞬出た。
「うおっ!」
予想していた色の炎じゃなかったことにビックリした。そうか火×5だと白なんだな。
とりあえずそのことは置いておくとして、実際杖を使ってみた感じだが、特に魔力も威力も変わりなかった気がするな…
これって生活魔法だからだろうか?
「アイリ、ウォーターボールの魔法を杖有りと、杖無しで比較して貰っても良いか?」
「良いよ~、まずは無しで行くよ~
ウォーターボール!」
硬球サイズの水の弾が飛んで行った。
今度は杖有りでやってもらう。
「ウォーターボール!」
今度はソフトボールサイズの水の弾が飛んで行った。
飛んで行く速度も若干早いか?
「魔力ってどのくらい使った?」
「ん~、杖有りだとMP2で、無しだと3かな?」
「なるほど。」
消費量が1.5倍で、威力が若干落ちるみたいだ。
「どうやら普通の魔法は杖が無いと使えない訳じゃないけど微妙なんだな。」
「そう言ったじゃない。」
「まあね、一応確認で言っただけだから。」
「威力が落ちても良いなら同時発動も教えるけどどうする?」
「何かに使うことも有るかもしれないから教えて~」
「私も牽制に使えると思うので、教えて頂けると助かります。」
「分かった。と行っても単純なんだけどね。
俺の場合は杖が無いから気が付いたのかもしれないけど、魔法って指とか手のひらや拳、足の先、肘とか先端になりそうな場所なら何処でも構わないので、魔力を集めると発動出来るよね?
それを複数個所同時に集めて発動すれば良いだけなんだよ。ほら。」
俺は人差し指と中指に魔力を集め、火の魔法を発動させた。
指先に2つの炎が揺れている。
「お~!」
「そのような方法が…」
「こう言うことも出来るぞ?」
今度は人差し指に風の魔法を、中指に火の魔法を発動させた。
火は風を受けて大きな炎となった。
「面白い~! これって複合魔法とは違うんだよね?」
「違うぞ、ただ別の魔法を合わせているだけだしな。
ただ、3つ以上は頭が混乱しちゃって無理だった。」
「同じ魔法でしたら、幾つまで大丈夫なのですか?」
「とりあえず両手の指は出来たな、ほら。」
両手の指先に炎を灯して見せた。
「すご~い!」
「…炎の矢!」
アイリさんが驚いている脇で、ティアさんが魔法を発動し、5本の炎の矢が飛んで行った。
「あ、出来ました。」
どうやら同時発動は問題無く出来るみたいだ。
「わ、私だって!
…ウォーターボール!」
アイリさんも負けじと魔法を発動させた。
5つの水球が飛んで行った。
「見て見て~! 出来たよ~!!」
アイリさんがぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。
「ちょっとコツさえ掴めればそんなに難しくは無いのかな?」
「そうですね、ただちょっと魔力の消費がキツイですね。」
「まぁ、緊急用として覚えておけば良いんじゃないかな?」
「うん。ありがと~」
「ありがとうございます。」
「これで後ろも何とかなりそうじゃな。」
「そうだな、連続して来られるとちょっと辛いけどな。」
「その時は、壁で凌げば大丈夫だと思うよ~」
「そうだな、その手筈で行くとするか。」
「「「「「おー(なのじゃ)!!」」」」」
「でも、その前に魔力回復も含めて休憩な。」
とりあえず聖魔力水を1本づつ飲んで貰い、休憩してから地下3階を攻略することにした。
魔法の使い方講座でした。




