今日のナタリーさん 86
私はナタリー、冒険者である。
いよいよ今日はダンジョンに行く日です。
何だかんだで私も楽しみだったみたいで、すんなりと目が覚めました。
顔を洗い、着替えて装備を整えて朝食に向かうことにしました。
しばらくして彼とシャルティアさんがやってきました。
挨拶を済ませ、朝食を食べた後は、調べものをするために冒険者ギルドへ向かうことにしました。
朝の混雑のため、冒険者の登録を後回しにして、先に資料室で調べものをすることにしました。
資料室は、各々調べものをしています。
私は聖魔法の本を読むことにしました。
しばらくして、調べ終わった所に、シャルちゃんが絵本を持って彼の所に向かいました。
どうやら本を読んで貰いたいみたいでした。
持ってきた本は『ビッチ一世物語 第4巻』でした。
ピッチ一世物語って確かアルデの冒険者ギルドにも有った記憶があります。読んだことは無かったので内容は知らないのですが…
彼が読み聞かせているのを一緒に聞かせて貰いました。
ピッチ一世物語ってこんなお話しだったのですね、
これは続きが気になりますし、前の話も気になります。今度探して読んでみようと思いました。
資料室を出た後は、シャルティアさんの冒険者登録を行いました。
特に問題も無く登録が出来たので良かったです。
登録の後に、情報共有と言うことで、皆のステータスを見せ合うことにしました。
相変わらず彼のステータスは凄いです。どうやったらこんなにスキルや称号が付くのでしょうか?
新しくついた鬼軍曹、おそらく王都の料理教室のアレですよね…
調べものや登録の関係で出発が遅くなってしまいましたが、いよいよダンジョンへと向かいます。
さすがは迷宮都市のダンジョン前と言うことでしょうか? 色んな商品を取り扱っている人達でにぎやかです。
彼がダンジョンの地図に興味を示しました。そうですよね、迷子になったら困りますし、当然です。
私? えっと…まったく頭に無かったです…反省ですね。
全ての階層の地図を買うのかと思っていたのですが、どうやら彼は自分で地図を作りたいみたいです。
参考に地下1階の地図だけは買ったみたいですが。
それにしても地図を作成するのは難しいと思うのですが、それに挑戦してみるとは、さすがは彼です。
ダンジョンへと入り、明かりを確保した所で、彼が計測を始めました。
え? まだ入り口で全然進んでませんけど?
でも、私は地図作りがサッパリなので、彼の行動を見守ることにします。
きっと必要な事なんでしょう。
彼がブツブツと何か言っていましたが、納得したみたいで、ようやくダンジョンの攻略になりました。
ある程度進んでは、紙に書き起こす作業を繰り返しています。
しばらく進んだ所で魔物を見つけたみたいです。そこでいつもの索敵と違うことを聞いてきました。
私も話でしか聞いたことが無かったのですが、知っていることを伝えました。この様な情報を教えることが出来たので、受付嬢をやってて本当に良かったです。
そして、いよいよ初戦闘です。
相手はスライムです。消化液さえ気を付ければ大して強い魔物では有りません。
殆どの人はよっぽどの場合以外は見向きもしないで過ぎ去ってしまう魔物です。
私達は初戦闘と言うことで倒すことにしました。
シャルちゃんが棍棒であっという間に倒してしまいましたが、こんなもんですよね。
次に会ったスライムですが、今度は燃やしてみるみたいです。
火を近づけると、勢いよく燃え始めました。スライムって燃えるんですね…しかも結構明るいです。
これってダンジョンの明かりとしては有効なのでは無いでしょうか?
後はどのくらい燃えているのか調べることにしました。
結構長い時間燃えて居そうなので、その間に地図を完成させてしまうことにしました。
地下1階の全てを周った後に、燃やしたスライムの所に向かいます。
どうやら丁度火が消えた所みたいでした。
これほど長く明かりが確保できるのでしたら、スライムは結構有効な魔物なのかもしれませんね。
地下2階では、他のPTの戦闘に遭遇しました。
この様な時って確か、向こうが必要と思わない限りは手を出しては行けなかったんでしたよね。
邪魔をしない様に見守ることにします。
彼らは一瞬の油断で怪我をしてしまいました。見た限り大したケガでな無く、あの程度で有れば、HPポーションで治りそうなので良かったです。
だけど、彼らは使い切ってしまい、持ち合わせが無かったため、HPポーションを譲ってもらいたかったみたいです。
でも、私達も手持ちは有りませんでした。
彼らはそのまま帰ろうとしたので、私が魔法で治すことを提案してみることにしました。
最初は無償で治そうと思っていましたが、ビアンカさんから指摘されてしまいました。
そうですよね、私の都合で他の回復魔法使いの方に迷惑を掛ける訳にもいきません。ですが、対価ってどのくらい必要なのでしょうか?
すると、向こうが指定してきましたので、その値段で請け負うことにしました。
治療も終わり、再びダンジョンを進みます。
広い場所に出た所で戦闘になりました。
彼の指示のもと、各自が動き出します。
私は万が一魔物が抜けた時の、アイリとシャルティアさんの護衛と、怪我した時の対応がメインです。
最初にティアさんが魔法を使いスライムを焼きました。周りが明るくなり、これで戦いやすくなりました。
ビアンカさんが盾で防ぎ、すぐさま彼とシャルちゃんが倒してしましました。さすがです。
戦闘が終わり、アイリがシャルティアさんの魔法について感心していました。
言われて気が付きましたが、シャルティアさんは魔法名しか唱えていませんでした。
そういえば彼もそうでしたね。
アイリも使えるみたいでしたが、簡単な魔法しか使えないとのこと。私は全く使えません。
折角なので聞いてみることにしました。
彼が言うには、過程と結果をイメージすれば必要ないとのことです。目から鱗でした。
すぐさまアイリが魔法を成功させてしまいました。私も試して…はだれか怪我した時になるのでイキナリ使うのは躊躇しちゃいそうです。
今度こっそり練習してみることにします。
地下3階への階段を見つけた所で、今日のダンジョン攻略は終了となりました。
みんなで打ち上げを行いました。そして今日の夜はシャルちゃんの番になったみたいです。アイリどんまい。
打ち上げもお開きとなり、部屋に戻ってきたので湯あみを済ませ、布団に入ることになりました。
みんなグッスリと眠った所で、魔法の練習をすることにしました。
「ん!」
針で指を刺すと、ぷく~っと血が出てきました。
えっと、過程と結果をイメージでしたよね。
確か…あれ? どうやって治っているのでしょうか?
私は治癒の神に祈り、その神の力で治すものと教えて貰っていたので結果は分かっても過程が分かりません。
とりあえず結果だけを想像して使ってみることにします。
「ヒール。」
・・・・何も起こりませんね。
「ナタリー? どうしたの?」
アイリが起き出してきました。
「あ、起こしちゃった? ゴメンね。」
「何か魔法を使う感覚が有ったからね、それでどうしたのよ?」
「えっと、短縮詠唱を覚えてみようと思って。」
「あーナタリーの魔法だったら、部屋の中で使っても問題無いからね~
で、どうだった?」
「駄目でした。」
「そっか、どうして失敗したの?」
私は先ほど魔法を使う際のイメージをアイリに話してみた。
「あの…」
そこにシャルティアさんが割り込んできた。
「あ~、ティアも魔力操作持ってたんだっけ。」
「はい、それで目が…」
「ごめんなさい。御迷惑おかけしました。」
「いえ、大丈夫です。
それより困って居たみたいなので…」
「実は短縮詠唱を行いたいのですが、神様にお願いする感じだとちょっと難しくて…」
「例えばですが、怪我をしてから治るまでの過程を想像したらどうでしょうか?」
「そうですね、やってみます。」
確か怪我をした時は、血が出てそれが固まりかさぶたになって、かさぶたが剥がれたら治っているんですよね。
その過程をイメージしてみる。
「ヒール。」
先ほどの怪我の血が固まり、ポロっと落ちた。
傷口は塞がっているが、普段使う魔法とは効果が違かった。
普段は血は固まらず、傷口だけが塞がれる感じだ。
「一応できました。」
「やったじゃない。
「でも、効果が少し違うんですよね。」
「違うってどんな?」
「えっと、今の魔法だと血が固まりかさぶたになって、それが剥がれて治ったけど、普通は血が固まりません。」
「なるほどね~、もしかしたらイメージ内容と、実際の回復魔法の効果が違うのかもしれないね。」
「そうすると、どうやって治しているのか分からないですね。」
「まぁ、結果は同じなんだから、緊急の時はそれでも良いんじゃない?」
「そうだね、普段は詠唱で緊急の時だけ短縮魔法と使い分ければ良いよね。」
とりあえず短縮詠唱に成功した私は明日のためにも寝ることにした。
私はナタリー冒険者だ。明日もまた頑張ろう。
実際回復魔法ってどうなっているんだろう?
自然回復速度の増加?
時空魔法で怪我する前に戻す?
傷口を縫合?
よくよく考えてみると謎技術だよね。




