今日のナタリーさん 85
私はナタリー、冒険者である。
胸を揉まれる感覚に目が覚めました。
すると、彼が私の胸を揉んでいました。しかも私は裸です。
ふと、昨日のことを思い出しました。
そう言えば湯あみをした後、酔っぱらっていたのも有って、そのまま寝ちゃったんでした。
声を掛けると、彼は焦っています。
焦っているためか胸を触っていることに頭が回ってないみたいでした。
ふと、彼の左手はアイリの胸に伸びているのが見ました。
これってアイリと比べられてないでしょうか? アイリは私より大きいですし、不安が募ります…
そこにビアンカさんの悲しそうな声が聞こえたことでうやむやになりました。
アイリの一声で彼の手が離れてしまったのは残念ですが、仕方ないですよね。
彼がシャルティアさんとシャルちゃんを起こしに行ったので、ビアンカさんを慰めることになりました。
「ほら、ビアンカもいい加減機嫌治しなよ~」
「分っておるのじゃ、分かっていてもこればっかりは仕方がないんじゃあぁ~」
「あ、あの、ビアンカさんの胸は大きくは無いかもしれませんが、綺麗で可愛いですし、良いと思いますよ?」
「…うわあああぁぁぁ~~ん!!」
どうやら失敗してしまったみたいです。とは言っても放っておくわけにも行きませんので、何とか機嫌を取ることにしました。
何とか機嫌を治すことが出来ましたが、疲れました…
今日は久々の休みになりました。
ポーション作りは一時辞めて、明日からはダンジョンで稼ぐ方向で行くことが決まりました。
確かにシャルちゃんやシャルティアさんは奴隷らしいことは一切無かったので、急ぐ必要も無いのは賛成です。
そのため、シャルティアさんの装備を用意するために出掛けるみたいです。
シャルティアさんは私達と同じく彼にとって必要な人で有ると確信しています。
今まで大変な目に会っていたシャルティアさんを労わると言うか、親睦のためにも今日は彼をシャルティアさんに任せて見ても良いのではと思いました。
アイリも同じ考えだったらしく、彼の誘いを断り、私を誘って来ましたので乗ることにしました。
彼と別れた私達は街へと繰り出しました。
「ハルとシャルティア、おそらくくっ付くじゃろうな。」
「逆に何も無いってのも変じゃないかな?」
「何か賭けるか? あたいはエールを賭けるのじゃ!」
「決まり切ってるのに勝負になる訳ないじゃない。
ビアンカが何もないに賭けるならやっても良いよ?」
「うっ…参ったのじゃ。」
アイリとビアンカさんが楽しそうに話しています。
私も同意見で納得もしているのですが…何かもやもやしています…
「どこ行くんじゃ?」
「私はちょっと下着を買いに行きたいんだよね~」
「下着ならこの前買ったばかりじゃないのか?」
「買ったけどさ、急にキツクなっちゃったんだよね。」
「それってあれか! おっぱい神の加護のせいか! やっぱりズルイのじゃ!」
「しょうがないじゃない、私だってそんな神様の加護が付くとは思っていなかったわよ。
あ~あ、せっかくハル君が選んでくれたのになぁ~」
「え? ハルさんが選んでくれたんですか?」
「あたいも選んで貰ったのじゃ。」
「ず、ズルイです!」
「じゃあ、ナタリーも今度選んで貰ったらいいじゃない。」
「そうですね、お願いすることにします。」
「私もその時は選んで貰おうっと♪ でも、今は必要な分だけ買っておかないとね。」
と言うことで、私達は下着を取扱っているお店にやってきたのだった。
色々と試着をしたりして選び、購入した後に帰ろうとした所、彼とシャルティアさんがやってきました。
「おっ、ハルが来たのじゃ。」
「どうしますか?」
「隠れてみよっか?」
「賛成なのじゃ。」
「だ、ダメですよ、ハルさんとシャルティアさんに悪いですよ。」
「そういうナタリーだって興味有るんじゃない?」
「うっ…」
興味が無いとは言えず、言葉に詰まってしまいました。
「決まりじゃな。」
こうして私達は彼とシャルティアさんの様子を蔭から見守ることになったのでした。
彼は店員にお任せするみたいでした。少しだけホッとしている私は嫌な女です…
少しして店員が彼を呼んで確認することになったみたいです。
最初のワンピースはとっても似合ってます。さすがはプロですね。
ふと、あまりの違和感の無さに気が付きませんでしたが、シャルティアさんがニットの帽子をかぶってませんでした。
どうやら付け毛をサービスしてくれたみたいです。やっぱり女性に髪は必要ですから良かったです。
2つ目の服もさっきのよりは落ち着いた感じですが、これもよく似合っています。
そして、次にダンジョンで着る服になったのですが…青を主とした少し変わった服装です。
すこし大胆では無いでしょうか…彼の前でだけならまだしも、私は恥ずかしくて着るのは躊躇しちゃいそうです。
でも、まるでシャルティアさん用にあつらえたかの様で物凄く似合っています。
彼も大絶賛しています。
「アイリ、そろそろ行かない?」
「そうね、これ以上は野暮ってもんでしょ。」
「そうじゃの。」
急に催促した私に対し文句も言わずにお店の外に出てくれました。
「ほらナタリー、甘い物でも食べに行こっ。」
アイリが私の手を引いて甘味処へ引っ張っていきます。
「ちょ、ちょっとアイリ急にどうしたの?」
「ん~、ハル君なら大丈夫だよ。」
アイリの言葉にドキリとした。
もしかして私が気にしていることに気が付いた?
「ナタリーのことだから、自分の場所が無くなるとか思ったんじゃ無いのかな? かな?」
「そ、そんなことは…」
「違う?」
「・・・・分かりません。」
「ハル君はヘタレだから分からなくもないけどね~、でも、私のカンだけど私達のことは同じ様に愛情を注いでくれると思うんだよね~」
「あたいも同意見じゃの。」
「実際ハル君は、ナタリーに差を付けたり、酷いこととかしたことって有った?」
「…無いです。」
「でしょ? だから大丈夫。
多分、ティアさんがもと人妻で包容力が有って、何となく似た者と言うか、ナタリーに近い所も有るから気になったんでしょうね。」
「そうかも…」
アイリに言われて、確かに私はシャルティアさんを気にしていました。
もしかしたらそうなのかもしれないと思いました。
「今日は特別にティアさんに譲ってあげるから別だけど、明日からはみんな同じく平等だからね。」
「うん。」
「ほれ、旨い物食いに行くんじゃろ? 行くのじゃ!」
「「は~い。」」
私達は色々食べたり、買い物したりと楽しむことにしました。
夕刻になり私達は宿に帰ることにしました。
「あれは…」
前方に彼とティアさんが一緒に歩いているのが見えました。
しかも腕を組んじゃったりして仲が良さそうです。
先ほどのアイリとの話で納得できている私は、もう気にすることは無くなったので大丈夫です。
「うん、やっぱりこうなったよね。」
「思ってた以上に仲良くなってるのじゃ。」
「いえ、おそらく時間の問題だったと思いますよ。」
私達が2人を見てそんな話をしていると、シャルちゃんが走って行き、シャルティアさんに抱き着きました。
「あたいらも行くのじゃ。」
私達も合流することにしました。
彼を少しからかった後、シャルティアさんが突然頭を下げました。
そんなに自分を低くしないで下さい。私達は同じ立場なんですよ?
ただ、一つだけ懸念材料が有ったので、聞いてみることにしました。
そっか、そこまでの覚悟を持って居るんだったら、もう何も言うことは有りません。
一緒に彼を支えていきましょうね。
そして、先ほどシャルティアさんが自分を低く見ていた理由が分かりました。
そう言えば人族と獣人族の関係のことを忘れていました。
いつも彼は獣人族の女の子を見ると鼻を伸ばしていたので…まぁ、手を出す訳では無いので良しとします。
彼もティアさんもお互い問題が無いことが確認出来て良かったです。
宿に到着したら、食事に来ていた人たちと、宿の主人で何やらもめてしまいましたが、彼の一言で無事解決です。
私達はもちろんのこと、ティアさんも喜んでいます。
それにしても、何で彼が居る私に興味を持ったんでしょうね? 不思議です。
夜は彼とティアさんは当然同室ですが、明日からダンジョンに向かうので、あまり無茶はしないで下さいね?
私達は明日のことも有るため、さっさと寝ることにしました。
私はナタリー冒険者だ。明日もまた頑張ろう。
ナタリーさんはやきもち焼き。




