明日の予定
宿に戻ってきたのだが、何だが騒がしいな…
「だから今日は休みなんですよ!」
「マジかよ…ナタリーさんの手料理が食べられないなんて…」
「もうお終いだ~」
「お願いだ! 何とかならないか?」
良くは分からないが、ナタリーさんの名前が出ているみたいなので、聞いてみることにした。
「ナタリー、何のことか分かるか?」
「多分ですが、ここ1月ほど食事を依頼として作っていたので、そのことを言っているのだと思います。」
「そういえば、ナタリーは何か別の仕事もしていたみたいだけど、それか。」
「はい。」
俺達の会話の声が聞えたらしく、客らしき人達がこちらを向いた。
「おお! ナタリーさんだ! 今日も又お美しいです。」
「お、俺、花を持ってきました。ナタリーさんどうぞ!」
「ナタリーさんの手料理が食べたくて、また来てしまいました。」
「あ、えと、ありがとうございます。」
「今日はお休みなら、一緒に食事でも行きませんか?」
「何言ってんだ、俺が誘おうと思ってたのに。」
「いやいや、ナタリーさんは俺と一緒に行くんですよね?」
こいつら…食事はもちろんのこと、ナタリーさん目的か。許せん…
「おい! お前「ごめんなさい。」…ら…」
「「「えっ?」」」
「私には心に決めた方が居ますので、気持ちにお答えすることは出来ません。」
ナタリーさんはそう言って、俺の腕にしがみついてきた。
「えっ…マジ?」
「そ、そんな…」
「誰だ?」
一斉にこっちを見たので答えておく。
「ナタリーは俺の妻だが? 何か文句あるのか?」
「つ、妻!?」
「う、嘘だろ?」
「他にも何人か女性がいるがまさか?」
「みんな俺の大事な妻だ、一人も渡すつもりは無い!」
「くっ…くそっ!」
「覚えてやがれ!」
「うわ~ん!」
男たちは悔し涙を出しながら去って行った。
「つ、妻だって~えへへっ♪」
「嬉しいのじゃ。」
「さすがはハルさんです。」
「わ、私も入っているのでしょうか?」
「そのつもりだったけど、ティアは違うのか?」
「!! ありがとうございます…」
「シャルは?」
シャルが自分を指差してアピールしている。
「シャルは大人になったらな。」
俺がそう言うと、ガックリと項垂れた。シッポも垂れ下がっているが仕方ないと思う。
ティアさんがシャルの所に行ってくれたので何とかしてくれると信じることにした。
「あの、すいません。店主さん。」
ナタリーが宿の店主に話しかけている。
「はい、何でしょうか?」
「私達は明日からダンジョンに入るので、食事を作るのを終わりにしたいのですが。」
「…そうですか、残念ですが、仕方ないですね。」
店主がこれ以上ないくらいに落ち込んでいる。うん、旨い飯が食えなくなるのは辛いよな
ナタリーさんもバツが悪い顔をしている。
「あ、えと、休みの日くらいならば…」
「ナタリー、そしたらあんたの休みなくなるじゃない、駄目よ!」
「はい…」
うん、アイリさんの正論に反論する余地も無かったみたいだ。
「と言う訳なので、ナタリーの仕事はお終いでお願いします。」
「わかりました。
では、20日働いていただいたので、金貨2枚になります。」
「ありがとうございます。」
ナタリーさんはお金を受け取った。
「ナタリーの奢りかの?」
「もう、ビアンカさんったら。」
「あはははっ、冗談じゃ。」
「良いですよ。もともとティアさんのお金を稼ぐついででしたので、みんなで使った方が良いです。」
「なら決まりじゃな、明日の英気を養うのじゃ。」
「やった~、ナタリーの奢り♪」
「俺も少し出すよ。」
「いえ、今回は私に出させてください。」
「そっか、ならお願いするかな。」
「はい♪」
思いがけない所でナタリーさんのおごりで食事になることになった。
食事をしながら明日の話をすることにした。
「それで、明日はダンジョンに行く前に冒険者ギルドで情報集めたいんだけど、いいかな?」
「何を調べるんじゃ?」
「有るならダンジョンの地図、罠、魔物の情報、ドロップ等かな。後はティアさんの冒険者登録もしておいた方が良いかなと思ってさ。」
「そうですね、その方が安心できますね。」
「他に何か聞いておいた方が良いのとかって有る?」
「その辺も一緒に聞いたら良いんじゃないかな?」
「そうだな。
じゃあ、明日は冒険者ギルドに行って調べものと登録が終わったら、ダンジョンに行ってみよう。」
「「「「「はい(なのじゃ)。」」」」」
これで明日の予定は決まった。楽しみだ。
いよいよダンジョン攻略が始まります。




