今日のナタリーさん 83
長くなったので分けます。
私はナタリー、冒険者である。
えっと、どうしてこうなってしまったのでしょうか。
「こっちにもランチ1つ!」
「あ、ずりーぞ! こっちの方が先にランチ1つだ!」
「ナタリーさん、俺が最初ね~」
「は、はい、ただいま。」
何かと言いますと、私は今宿屋の食堂を任されている状態になっています。
今をさかのぼること3日目…
「はい、今日の夕食です。」
「相変わらず旨そうだ。」
「わ~い♪」
依頼の分の食事を出して、後は彼の分を持って行こうと準備をしていたら、一人の男性が入ってきました。
「すいません、ここって飯食えますか?」
すぐさま宿の主人が対応します。
「すいません、ここは宿泊客のみとなっております。」
「マジか…すっげー良い匂いがしたから来てみたんだが…お金は払う! ダメだろうか?」
「そうは言いましても…」
何か困っているみたいですし、1人分なら出せますし、仕方が無いですね。
「1人分なら出せますよ?」
「!! スゲー…じゃなかった、良いのか?」
「ええ。」
「ちなみに、あんたの手作りか?」
「はい、そうですけど…」
「やっほおぉぉぉ~!!」
突然喜び出して声を出したのでびっくりしました。
そんなにもお腹が減っていたんですね…
「うめぇ! 最高だ!」
男性はガツガツと料理を食べて、お金を払うと帰って行きました。
無理やり食事をお願いしたので悪いと思ったみたいで、目を合わせられなかったのか下を向いていました。
そんなに気にしなくても良いのに…
次の日も料理を作って居たら、宿屋の主人がやってきました。
何か焦っている感じがしましたが、何か有ったのでしょうか?
「あ、あの、ナタリーさん、少し宜しいでしょうか?」
私は一度料理の手を止めて返事をします。
「はい、何でしょうか?」
「大変言いにくい話なのですが…」
「どうかしましたか?」
宿屋の主人は迷ってましたが、意を決して話始めました。
「貴方の料理を提供する気はありませんか?」
「はい? 突然どうしたんですか?」
「実は、多分ですが、昨日食事をされた方から噂が広まったらしく、宿の外に大勢の方がやってきてしまったんですよ。」
「えぇ!? こ、困ります!」
「そうですよね…」
そこにケリーさんがやってきた。
「父ちゃん!! 家にあんなに客が来るなんて、凄い!!」
「いや、ケリー、あれは客じゃ無くて…」
「これで父ちゃんもお金に困らなくなるよね! きっと死んだ母ちゃんが見守ってくれたからだよね!」
「あ、ああ、そうかもしれないな。」
宿の主人が何て言ったら良いかで悩んでいます。
ふぅ~…仕方がないですね、困っている人を見ると助けてしまいたくなるって、彼の影響なのかもしれません。
でも、そんな自分が好きと思えるようになったのは、良いことなのかな?
「…わかりました。協力致します。
でも、私はあくまで冒険者がメインです。ハルさんの作業が落ち着くまでで良いのでしたらやりましょう。」
「ああ、もちろんです。もちろん私もお手伝いさせて頂きます。」
「僕も頑張る!」
こうして私は宿の料理を作ることになったのでした。
・・・・
「ナタリーさん、おいらに愛情たっぷりのランチね!」
そんなこと言っても、私の愛情は彼専用です。ごめんなさい。
「ケリーさん、これお願いね。」
「は~い。」
ケリーさんが食事を運んでいきます。
「お待たせしました。ランチです。」
「俺はナタリーさんに持って来て貰いたかったんだが、まあいい。」
そう言って男性は食事を食べ始めました。
「おう、こっちにもランチ3人前な。」
「は~い。」
再びケリーさんが食事を運んでいきます。
「お客さんが一杯ですね。」
戻ってきたケリーさんはニコニコ顔だ。
そうなのだ、日に日にお客がどんどん増えていき、常に満員状態になってます。
それでも彼の食事は手を抜かずに、食事に来ている来ているお客様を放っておいても優先的に対応している私を褒めてあげたいです。
私はナタリー冒険者だ。明日もまた頑張ろう。
ナタリーさんが作った料理が人気が出るのはわかるが、人妻予定だと知ったらどうなるんだろうか…




