迷宮都市の奴隷商
「さてと、まずは奴隷商に行くか。」
「え? …あっ、そ、そうだよね! うんうん。」
「も、もちろんその通りじゃの。」
ここまで来た目的はあくまでもシャルのお母さん探しだ。
ビアンカさんとアイリさん忘れてたな…すっかり頭の中が迷宮になっていたみたいだ。
俺も迷宮ってことでテンション上がってるから分からないでもないけどね。
迷宮都市の奴隷商もすぐに見つけることが出来た。
王都でもそうだったけれど、こんな目立つ場所に有って良いのだろうか?
まあいいや、さっそく入ることにする。
「いらっしゃいませ。」
中に入るとでっぷりと太った男がカウンターに座っていた。
「本日は我が奴隷商にようこそ。どの様な奴隷をお探しでしょうか?」
見かけとは裏腹に実に丁寧な対応だ。
「えっと、王都の奴隷商で、迷宮都市の奴隷商に狐の獣人が買われていったって話を聞いたので、来てみたのですが。」
「そうでしたか、確かに狐の獣人は高く売れますからね。ウチにも何人か居ますよ。」
「見せてもらうことは出来ますでしょうか?」
「はい。こちらの部屋にどうぞ。」
男性に案内され、個室へと移動してきた。
ソファーを勧められたので座る。
「では、連れてきますので少々お待ちください。
おい、今居る狐の獣人を連れてこい。」
「かしこまりました。」
男は他の店員に声を掛けている。
「待っている間、お飲み物でもどうぞ。」
そう言って俺達の前にお茶を出してくれたので頂くことにする。
ガチャ…
「失礼します。」
奴隷を連れて男が戻ってきた。
連れてこられたのは男性の狐の獣人が2人だ。
一人の男は平常心だったが、もう一人の男は目を見開いてシャルを見ていたが、奴隷の立場のせいか声を出すことは無かった。
シャルを見ると、やっぱり知ってる人だったみたいで、驚いた顔をしていた。
「今ウチで出せる戦闘にも使える狐の獣人はこの2人になりますね。」
「この2人は一般奴隷ですか?」
「いえ、犯罪奴隷となっております。なので迷宮の探索とかには役に立つと思いますよ。」
「話をさせて頂いても?」
「かまいませんよ、2人とも、この人と話をして下さい。」
ズイっと右側の男性がアピールしてきた。
「俺はジュドーだ、戦闘も魔法も得意だから役に立つと思うぞ。どうだ?」
「あなたはフォクス村の出身ですか?」
「いや、俺はサンリツ帝国から来たからな、そんな村は知らないな。」
「分かりました、ありがとうございます。
えっと、ではそちらの男性とお話しさせてください。」
先ほどシャルを見てビックリしていた男性だ、期待できそうだ。
「アッシュだ。先ほどあなたが言ったフォクス村の出身だ。」
「と言うことは、この子を知ってますね。」
俺がシャルの方を見る。
「ああ、シャルティアさんの娘だろ? 良く知ってる。そうか無事だったんだな。」
「縁が有って俺が預かることになった。今はこの子の母親を探している。」
「…シャルティアさんはここに連れてこられたぞ。」
ガタッ!
「本当か!」
「ああ、ただ、今もここに居るか、それ以前に生きているかは分からないが…」
「どういう意味だ?」
「俺がここに来たときに、シャルティアさんも一緒に連れてこられた。ただ…」
男は少し言いにくそうな感じで口を閉じてしまった。
「何が有ったんだ?」
男は一度シャルをちらりと見た。どうしても言いにくそうだ。
「お客様の前ですよ、話しなさい。」
奴隷商の男性が命令すると、アッシュさんは痛みで顔を歪めた後に話し始めた。
「ぐっ…シャルティアさんは、おそらく捕まった時に抵抗したらしく、目を魔法で焼かれて見えなくなっていたのと、右足が無かった。」
シャルが立ち上がる!
「シャル、まずは落ち着いて。それでシャルティアさんは?」
「わからない…何処かに連れて行かれてしまった後は会ってない。」
男がそこまで話した所で奴隷商の男性が言ってきた。
「ああ、あの奴隷のことだったんですか。今もここに居ますよ。」
「本当か!」
「ええ、売り物にならなくて困っていたんですよ。」
「譲ってもらうことは出来ますか?」
「もちろん構いませんよ。そうですね、こちらとしても維持費が掛かりましたしねぇ~
金貨10枚でどうでしょうか?」
「え? 目が見えなくて足が無い奴隷でしょ? 高くない!?」
アイリさんが文句を言っている。
「そうは言ってもですねぇ、こちらも商売ですからなんとも…」
くそっ、俺達がどうしてもその奴隷を欲しがっているのがバレたからな、足元を見たのだろう。
だけど、渋ることで余計に値段を上げられたり、売らないって話になるのも困るし…
「わかりました。それで結構です。買わせて頂きます。」
「いやぁ~、お客様は目が高い。良い商売させて頂きました。
おい、例のを連れてこい。」
「かしこまりました。」
再び店員に声を掛けている。
「では、こちらの奴隷は如何いたしましょうか?」
アッシュと言った男が期待した目でこちらを見ている。
シャルの知り合いだし助けては上げたいとは思う。
「ちなみに幾らですか?」
「こちらは男性で力も強く、戦闘に特化した狐の獣人で、当店としてもお勧めすな奴隷でして、金貨50枚となっております。」
「50枚!?」
確か手元には30枚ほどの金貨が有ったハズ。だけどシャルティアさんを買うと残り20枚か。
「すいません、お金が足りないので無理です。」
アッシュさんはガックリと項垂れた。
金貨50枚が高額だと知っているので無理も言えないのだろう。
ガチャ…
「失礼します。」
シャルティアさんを呼びに行っていた男が戻ってきた。
あっさり見つかりました。




