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フォクス村


王都を出てからは特に変わったことも無く、街道を進んでいく。

途中の村や街で宿を取って泊まったり、野営をしたりして7日目、ようやく分かれ道までたどり着くことが出来た。


「ここを曲がれば良いんだよな?」


「そうじゃないかな? 他に分かれ道って無かったよね?」


「あたいが知ってる限りでは無かったの。」


「看板は迷宮都市方面しか書いてありませんね。」


「まあ、行ってみるしか無いか。」


俺は街道を曲がり、進んでいく。

途中に2つほど村が有ったが、すでに廃村になっていたため、誰も居なかった。

折角なので空き家を利用させてもらったりして3日目、ようやく目的のフォクス村に到着したのだった。


「酷いな…」


村を見た勝手に出た声がこれだった。

家は焼かれるか壊され、畑も草ボウボウで管理されてない状態、幸いなことに死体は見つからなかったが、おそらく捕まって連れて行かれたのだろう。

シャルの方を見てみると、シャルはきょとんとした顔で村を見つめていた。

おそらく、あまりにも知ってる村と違ったため、自分が住んでいた所と思えなかったのかもしれない。


「少し調べてみようか。」


「そうですね。」


俺達は村の中を歩いてみることにした。

家の中は空っぽで、おそらく奴隷狩りのついでに奪われていったのだろう。

村の奥まで来た所で、珍しく形を保っていた家が有った。

すると、シャルがハッとした顔をしてその家まで走り出した。


「もしかすると、アレがシャルの家だったのかもしれんの。」


「そうね、不幸中の幸いと言って良いのか分からないけどね。」


「シャルを一人にする訳にも行かないし、行くぞ。」


俺達はシャルを追いかけた。

シャルが家の中へ飛び込み、俺も後に続いた。


家の中でシャルはぼーぜんと立ちすくんでいた。

シャルの家はこちら側は無事だったが、見えなかった向こう側は壊されており、青空が見えていた。

そして、そのままボロボロと涙を流して泣き出した。


「~~~~!! ~~~~~~!!」


声にならない叫び声を上げ、シャルは泣いている。

俺はシャルを抱き寄せると、シャルはそのまま俺の胸で泣いていた。

暫くはこのままにしておこう…


俺は特に声を掛けることも無く、シャルの頭や背中を優しくさすってあげた。

1時間ほどシャルは泣いていたみたいだが、落ち着いたのと泣き疲れたのも有ったため、そのまま寝てしまった。


「…眠ったみたいですね。」


「ああ、それにしても、まさか村がここまでヒドイ有様だとは思わなかった。」


「ええ、そうですね…シャルちゃんの家族はどうなっちゃったんでしょうか。」


「そればっかりは分からないな…

 とりあえずシャルも寝てしまったし、今日は此処で1泊しよう。」


「わかりました。」


俺も何か手伝うかと動こうとした所、アイリさんに止められてしまった。


「ハル君はシャルちゃんの側に居て、後は私達でやっておくから。」


「…頼む。」


「任されたのじゃ。」


みんなが作業するのに出て言ったので、俺はアイテムボックスより毛布を取り出し、シャルを寝かせてあげた。


「くそっ!」


どうしようもない怒りを覚えたが、それを解決することも出来ず、イライラが募る…


「何でこんなにも良い子が辛い目に会わなくちゃならないんだよ…」


ふと、土間の片隅に何かが落ちているのを見つけた。

近寄って拾ってみると、それは手作りの人形だった。


「これは…もしかしてシャルのかな?」


----------------------------------

【手作り人形】

品質:B

効果:なし

シャルティアがシャルロットへ遊び相手として作った女の子の人形

----------------------------------


「シャルティア? シャルのお母さんの名前かな?

 この人形は後でシャルに渡してあげよう。」


・・・・


「ハルさん、夕食が出来たのですが、シャルちゃんは…まだ起きないみたいですね。」


「ああ、夕食は此処で食べるよ、悪いけど持ってきて貰っても良いかな?」


「わかりました。」


そう言ってナタリーさんは夕食を取ってきてくれた。

俺は夕食を食べた。

美味しいハズなのに、何か美味しく無いな…

夕食を食べ終えたので、夜の話をすることにした。


「ごめん、今日の見張りは任せても良いか?」


「ハル君は、シャルちゃんのことを見てれば良いの!

 こっちは私達に任せなさい。」


「そうじゃぞ、気にする必要は無いのじゃ。」


「今はシャルちゃんのことだけ考えてあげて下さい。」


「…ありがとう。」


俺は皆の好意に甘えることにした。


・・・・


夜も更け、見張りの交代もビアンカさんからナタリーさんに変わった辺りでことが起こった。

シャルが手足をバタバタと動かし、必死の抵抗をしている。

そして、シャルが必死に手を伸ばし、涙を流しながら何かを叫んでいる。


「~~~~~!! ~~~~~~~!!」


「これは…」


前にも同じ様なことが有ったけど、襲われた日の出来事か!


「何じゃ! 何が有ったんじゃ!」


「ハル君、シャルちゃんどうしちゃったの?」


「前にも同じことが有ったんだけど、多分、村を襲われている時の夢を見ているんだと思う。」


物音に気が付いたナタリーさんも戻ってきた。


「ハルさん! 何か有りましたか?」


「シャルがちょっとな。」


暴れるシャルをなだめる様に優しく抱きしめて、頭を撫でた。


「シャル、大丈夫だよ、落ち着いて。」


俺が声を掛けると、次第に抵抗が薄れ、再び寝てしまった。


「シャルちゃんは大丈夫でしょうか?」


「わからない。」


「そうですか…」


「だけど、俺はシャルが強い子だと信じている。

 それに、絶対シャルを救ってやるつもりだ。決して諦めない。」


「ハル君、私達も同じ気持ちだよ?」


「そうじゃぞ、みんなでシャルを助けるんじゃ。」


「私達にもお手伝いさせて下さい。」


「もちろん頼りにさせてもらうよ。ありがとな。」


その後は眠れなくなったのでみんなで夜通しシャルのことを見守ることにした。


最初白骨化死体が~ってのも考えたけど辞めました。

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