野営
宿に泊まることが出来なかった俺達は、野営が出来る場所を探すことにした。
さすがに村の中にテントを張る訳にも行かないので、村の外へ出ることにした。
「こんな時間に外に出るのかい? 夜は危ないぞ!」
門番の人に注意された。
「実は宿が満員だったのでテントを張るために外に行こうと思っていたんですよ。」
「テントなら村の中央広場なら張っても問題無いぞ?」
「そうなんですか?」
「ああ、確か今日は2組程テントが有ったはずだから行ってみると良い。」
「わかりました。ありがとうございます。」
門番と別れた後に、みんなに確認してみることにした。
「村内でテントを張れるみたいだけど、どうする?」
「あたいはどちらでも構わないのじゃ。」
「私も同じ~」
「でも、真っ暗の中で準備をするよりは、村の中で野営をする方が安心できると思うのですが、どうでしょうか?」
「言われてみればそうだな、それに魔物を気にしなくても良いし、村内で野営するか。」
「「「は~い(なのじゃ)。」」」
村内での野営をすることに決まったので、俺達は中央広場に向かうことにした。
中央広場には門番に言われた通り2組のテントが設置していた。
「ハル君、あそこが良いんじゃない?」
アイリさんが示したところは平でテントが張りやすいのと、他のテントから離れているのでその辺のポイントも高いので、決めることにした。
折角なので、早速新しいテントの使い勝手を試してみることにする。
シートを敷いてからテントを開き、地面へと差し込む。
広げたテントの先をアンカーで打ち込み固定して完成だ。この間なんと10分程度だ。
「簡単じゃの。」
「予想以上だったよ、こんなに簡単ならもっと大きいサイズ買っておけば良かったかも。」
「だね~」
「でも、このタイプのテントでしたら、これが一番大きかったみたいですよ?
それ以上は今持って居るのと変わらなかったと思います。」
「そっか、残念。」
ナタリーさんはしっかりとチェックしていたみたいだ。
「まぁ、何にしろ寝る場所は出来たな。じゃあ飯でも作るか。」
「そうですね。」
「ハル君、私達は…」
「一緒にやるか?」
アイリさんにそう聞いてみたが、首を振った。
「ううん、止めておくわ。余計な手間を増やしちゃうだろうし、適材適所で良いかなって。」
「う~ん、そう言うなら仕方ないか。」
「ごめんね。」
「いや、その通りだと思うよ、やりたい人がやれば良いしね。」
「ハル、あたいも…」
「はいよ、じゃあ、こいつを渡しておくな。村の中だし大丈夫だろう。」
俺は王都を出る時に買った酒樽を取り出した。
「よく分かっているのじゃ! アイリ、一緒にやらんか?」
「そうね、お言葉に甘えることにするわ。」
ビアンカさんとアイリさんはこれで良いとして、シャルは…食べるの専門だな。
「じゃあ、ナタリー一緒に作ろうか。」
「はい♪」
「ちょっと待つのじゃ!」
「ん? どうした?」
「エールを冷やして欲しいのじゃ。」
「了解~」
久々にフリージングの魔法でお酒を冷やしてあげた。
「ありがとうなのじゃ。」
「どういたしました。」
「アイリ、飲むのじゃ~」
喜んでくれて何よりだ。
夕食を作る前に馬の世話だけ先にしておくか。
村の中なので草はあまり無いため、多めの干し草と飲み水を用意した。
さて、こっちの夕食は何を作ろうかな。
「ハルさん、今日は私に任せて貰っても良いですか?」
「そう? なら任せるけど、手伝いも良いの?」
「んー、あっ! ハルさんはシャルちゃんのプリンを作らなくちゃ駄目じゃないですか。」
「そう言えばそうだったな、じゃあ俺はプリンを作るか。」
「お願いしますね。」
それじゃやりますか、何人分作るかな…鍋の大きさからすると5人前が精々か、どうせ暇だし、プリンは直ぐ作れるし、時間が許すだけ作っちゃうか。
材料は5人分だと、卵3個と、砂糖70gくらいか、牛乳が500mlっと。バニラエッセンスは無いから無しだ。
今回はカラメルも作って本格プリンを目指そうと思う。
まずは、砂糖と水を混ぜて、鍋で火にかけ、鍋を回す様にして混ぜていく。
薄っすらとカラメル色になった所で火から外し、予熱でじっくりと焦げ付かせていく。
綺麗な色になった所で器へと注ぐ。
次にプリンだが、今回は贅沢に黄身だけのプリンだ。
白身と黄身を分けて、泡起たない様に混ぜる。
その間に牛乳を火にかけ、温めておく。この時牛乳を沸騰させては行けないので注意が必要だ。
温まった牛乳に砂糖を溶かし、溶いた卵に少量ずつ追加しながら混ぜていく。
もちろん泡を立てない様に丁寧に行う。
出来上がった物をザルで濾してカラメルの入っている器へと移す。
多少の気泡が出来てしまったので、火魔法のライターで泡を消して準備完了だ。
蒸し器が無いので、茶碗蒸しと同じ要領で蒸すことにする。
蒸し器は何だかんだで使える物だし、今度鍛冶屋で依頼して作って貰っても良いかもしれないな。
完成したプリンをフリージングで冷やし、アイテムボックスへと収納した。
この一連の作業を10回ほど繰り返した辺りで、ナタリーさんの声が掛かった。
「みなさん、夕食が出来ましたよ~」
「待ってたのじゃ!」
「もう、お腹ペコペコ~」
【やった】
んじゃ、最後のプリンを冷やしてから行きますか。
「お待たせ~」
「遅いのじゃ!」
「悪い悪い。」
「ハルさん、お疲れ様です。」
「ナタリーこそお疲れさん。」
「じゃあ、ハルさんも来たことだし、頂きましょうか。」
どれどれ、今日の夕食はっと。
ハンバーグナポリタンに、サラダと野菜スープだ。とっても旨そうだ。
まずは、ハンバーグから行ってみるか。
ぱくり…旨っ!
じゅわっと溢れる肉汁と上に掛かっているタレが合わさると、より肉の旨味とタマネギの甘みが感じられて最高だ。
続いてナポリタンをご飯代わりに食べる…こっちのトマトベースの酸味がまたたまんね~
口直しにスープを一口…ほほぉ! てっきりコンソメ系のスープかと思ったらカツオ出汁かよ、こりゃたまんね~な!!
ぱくぱくむちゃむちゃごっくん…
「ごっそーさん、旨かった~!」
「ホント美味しかったね~」
「最高なのじゃ。」
どうやら王都での料理教室はナタリーさんの腕をまた一段と上げたみたいだった。
ナタリーさんもみんなに褒められて嬉しそうだ。
くぃくぃ…
袖を引っ張られたので、そちらを向くとシャルだった。
「どうした?」
【ぷりん】
「ふふ~ん、ちゃんと作っておいたぞ。」
俺はプリンをアイテムボックスより取り出し、皆へと配った。
シャルは目を輝かせている。
さあ、食べようとした所で俺は止めさせた。
「ちょい待ち!」
シャルはえ? って悲しそうな顔をした。
「ああ、食べちゃ駄目って訳じゃないよ、えっと、こうして食べた方が美味しいかなと思ってさ。」
俺は皿を取り出し、器から串を使って皿へとプリンを移してあげた。
ぷるんと震えるプリンはまさにプリンだ。カラメルの汁が少し垂れているのもGOOD!
「そして仕上げは…」
プリンを作るときに余った白身を使って、メレンゲを作っておいたのだ。
紙で搾り器もどきを作って、綺麗に飾り付けていく。
最期に赤いベリーを乗せてプリンアラモードの完成だ!
「どうだ!」
シャルの目はプリンに首付けだ。そ~だろ、そ~だろ。
おそるおそるスプーンでプリンをすくって口へと入れる…カッ! っと目を見開いた気がしたら、勢いよく食べ始めた。
「ねぇ、ハル君~、お姉さんもアレ食べたいなぁ~♪」
アイリさんのおねだりだ。久々にお姉さんって台詞を聞いた俺はゾクゾクと身を震わせた。
「喜んで!!」
「ハル、あたいも!」
「ハルさん、私も良いですか?」
「おう!」
みんなの分のプリンアラモードを作ってあげたのだった。
「ん~!! 冷たくて美味しい~!!
それに、このふわっふわなのがたまらない~!!」
「食べたことが無い物じゃの、美味しいのじゃ。
まぁ、酒には合わなそうじゃがな。」
「ハルさん、この白いのって何ですか?」
「それはメレンゲって言って、卵の白身に砂糖を加えて泡立てた物だよ。
本当は牛乳から作るホイップクリームが良いんだけど、今は材料が無かったからね。」
「へぇ~卵がこうなるんですね、勉強になります。
いつかホイップクリームってのも教えてくださいね?」
「もちろん。」
・・・・
「さて、野営の順番をどうするか。」
「とりあえずじゃんけんで決めましょうか。」
「そうだな、じゃあ、じゃんけん…」
「「「「ぽん!」」」」
今回はアイリ、ナタリー、ビアンカ、俺の順番になった。
朝ごはんは、今夜の残りを食べるので作らないそうだ。
「じゃあ、後は宜しく。」
「任されたよ~、また明日ね~」
アイリさんを見張りに残し、俺達はテントで休むことにした。
今回はシャル、ビアンカ、俺、ナタリーさんの順番になったみたいだ。
それでは、おやすみなさい…ぐぅ…
プリンはレシピを見なくても作れるくらい作りまくったな…




