王都探索
とりあえず王都での最低限の用事はこれで終わった。
シャルを奴隷からの解放は出来なかったが、問題解決さえすれば解放出来るのが分かっただけでも朗報と思うことにする。
問題は魔石の入手だが、こればっかりはなぁ…
自分で調達するのか、購入するのかはまだ決めて無いが、とりあえずお金は用意する必要が有るのだけは確かだ。
「なぁ、素朴な疑問なんだが、ゴブリンキングってどのくらいの強さが有れば倒せるんだ?」
「ゴブリンキングクラスなら白金級クラスのPTならなんとか倒せますね。金級クラスなら複数PTが必要です。銀級クラスではちょっと無謀だと思います。
レベルも金級クラスで参加するとして、最低でも40以上でしょうか?」
「俺レベル5」
「私レベル19」
「あたいはレベル8じゃな。」
「私はレベル2です。」
シャルはVサインじゃなくてレベル2ね。
レベルは全員のを足しても36で40にも満たない。
「無理だな。」
「無理じゃな。」
「無理だね~」
「無理ですね。」
シャルもコクコクと頷いている。
「時間は掛るかもしれないが、地道にお金を稼ぐのが一番だな。
まぁ、俺的にはシャルに何か無茶なこととかするつもりは無いから、気長に待っててくれると助かる。」
シャルは知ってるよ~何言ってるのみたいな顔をした。
「そうか、信用してくれてありがとうな。」
そう言ってシャルの頭を撫でてあげた。シャルは目を細めて嬉しそうな顔をした。
さて、とりあえず現状を把握することが出来たので、今は王都の探索を楽しむことにしよう。
ウィンドウショッピングをしていると、小道具を扱っているお店を見つけた。
興味が沸いたので入ってみることにする。
お店の中は小物入れやら、瓶、絵、人形とか色々部屋やお店を飾ったりする物が多いみたいだ。
自分の部屋が有ったのなら置いても良いかなと思えるような物が有ったが、自分の部屋がある訳じゃないし、今は良いか。
みんなもきゃいきゃい楽しそうに色んなものを見ていた。
ふと、シャルがジーっと何かを見ているのに気が付いた。
「シャル、何か欲しい物でも有ったのか?」
そう言って、シャルが見ていた物を確認した。
そこにはお店の前に置いてある手書きの看板にもなる黒板だった。
サイズは大小と色々と取り揃えてある。
「欲しいのか?」
俺が聞くと、シャルは迷っていたが、頷いた。
「どれが欲しいんだ?」
シャルはA4サイズの黒板を指差した。
値段はチョークが1ダース付いて銀貨1枚だ。
「よし、これくらいなら。」
俺が黒板を持って会計しに行こうとしたら、シャルに腕を掴まれた。
「どうした?」
すると、シャルは俺が前にあげたお財布を取り出した。
「自分で買うのか?」
シャルは頷いた。
「そうか、まぁそのためにお金渡してたのも有るし良いんじゃないか。」
すると、シャルは嬉しそうに黒板を抱きしめて会計しに向かった。
会計を済ませたシャルがニコニコ顔で戻ってきた。無事買えたみたいだな。
他に買う物も無かったのでお店を出ることにした。
お店を出ると、シャルがいそいそと黒板に何かを描き始めた。
そして、書き終わった物を俺の方に見せてくれた。
【はるさましゃるろっとをたすけてくれてありがとう】
シャル、いつの間に字を書けるようになったんだ? 凄いじゃないか!
いや、それよりシャルが書いた文字だ、何だコレ、めちゃめちゃ嬉しいじゃないか…
「ハルさんどうぞ…」
ナタリーさんが優しい笑顔をしながらハンカチを手渡してきた。
何でハンカチ? と思ったが、どうやら俺は涙を流していたみたいだ。
「ご、ごめん。」
ハンカチを受け取り、後ろを向き涙を拭った。
皆に恥ずかしい物を見られてしまったな。
「シャルに掛かれば、ハルも形無しじゃな。」
「そうだね~、でも私もウルってきちゃった。」
「実は私もです。」
「さ、さぁ、次行くぞ、次!」
「誤魔化してるの。」
「誤魔化してるね~」
「うふふふっ、そうですね、行きましょうか。」
俺達は再び街中を散策するのだった。
これでシャルも会話に参加が出来る…




