告白
カポカポカポカポ…
馬車は王都の方向を目指して進んでいる。
みんな暫くアルデの街が小さくなるまで見ていたが、見えなくなったので落ち着いたみたいだ。
とりあえず馬車を運転できるのが俺だけなので、他の4人は後部の荷台でくつろいでいる。
「荷物が無いから広くて良いね~」
「うん、乗合馬車みたい。」
「これもハルの御蔭じゃの。」
普通は水や食料、荷物やらでギュウギュウらしい。
「ねぇ、ハル君、聞いても良いかな?」
「何?」
「ジェニファーが言ってたのって、ハル君の本当の名前なの?」
「そうだよ。」
「えっと、ハルヒレじゃなくて、ハルホロでも無くて、何だっけ?」
「晴彦だよ。頭をとってハルって名乗ってた。」
「ハルヒコ、ハルヒコ、ハルヒコ、ハルヒコ…覚えたのじゃ。」
「ハルヒコさんですね。 なんか新鮮です。」
「ふ~ん、何でそう名乗ってたの?」
「深い意味は無いんだけど、知らない場所、知らない人達の中で、本名を名乗るのが怖かったから…かな。」
たまに異世界転生物に限らずアニメとかでも、本名を知られることで呪われるとか契約されるとか有ったしな。
「他の土地に来たんだもん、知らない場所だし、知らない人ばっかりは当たり前じゃない。」
「ん~、いつかみんなには全部話そうとは思っていたんだけど、良い機会かもしれない、聞いてもらえるかな?」
「もちろん。」
「お願いします。」
「大丈夫なのじゃ。」
もしかしたら話すことで嫌われる可能性だって有るかもしれないが、一緒に居ることで隠し通せるものでも無いし、隠したくも無い。
どうなるか分からないが、なるようになれだ、正直に話すことにした。
「ジェニファーと俺が同郷ってのは知ってるよね?」
みんなが頷いた。
「そこが遠くて行けないって言ったけど、実は違うんだ。」
「え? もしかして近くの村とかだったとか?」
「そう言えば、ハルヒコさんは、ギルドの登録の時、開拓村って言ってましたね。」
「あ、それ嘘、開拓村じゃないよ。
あと、名前は今まで通りハルで良いよ。」
「あ、わかりました。
それじゃハルさんは、何処から来たんですか?」
「日本って国から来たんだよね。」
「ニホン…ですか、聞いたことのない国ですね。」
「聞いたことが無いのは仕方がないと思う。
だって、この世界に有る国じゃないから。」
「? ハル君、言ってる意味がわかんないんだけど。」
「もしかしたら宇宙の何処かに有る星って可能性も有るけど、異世界って分かる?」
「異世界…ですか? 名前からすると異なる世界でしょうか。」
「うん、異なる世界で合ってる。
俺、前は地球と言う星の日本って言う国に住んでいて、そこで電車に轢かれて死んだんだよね。」
「えぇっ! ハル君って前にも死んでたの!? でも、命の木の実が有って良かったじゃない。」
「違う違う、その時命の木の実なんて無いから、一度完全に死んだんだよ。
そして目が覚めたら、別の世界に来ていて、別の人にもなってた。
前にアイリに言ったと思うけど、世界樹の有った場所が目覚めた場所だったんだよね。」
「別の人ってどういう意味なのじゃ?」
「言葉の通りだよ、向こうの俺はアイリより少し背が高いくらいで、顔はこんなにカッコよくなかった。
歳も40超えてたしな、もしかしてガッカリしたか?」
ビアンカは首を左右に振って否定した。
「見た目がどんなのに変わろうと、ハルはハルじゃ。
ハルも言ってくれたじゃろ? 好きな人の胸だから好きであって、見た目じゃないって。
あたいも同じじゃ、ハルだから好きになってのであって、見た目は関係ないのじゃ。」
「私もそうですよ。」
「私も同じ~」
「…ありがとう。実はこれ言うの結構怖かったんだよね。
でも、みんなに嘘を言いたくなかったら正直に言ってみたけど、言ってみて良かった。」
「それでハル君は、いつかニホンって所に帰るの?」
「ジェニファーも言ってたけど、多分無理なんじゃ無いかな?
それに、折角出来た俺の嫁さんと別れてまで帰りたくも無いしね。」
「よかった~」
「はい、良かったです。」
「帰るとしても、何処までも着いて行ったのじゃ。」
「ありがとな、そういうことで、これからも宜しくな。」
「「「はい(なのじゃ)!」」」
「これで、ハルさんが色々変わっていた理由がわかりました。」
「え? そんなに変わってた?」
「うん、変わってるの。」
「変わってるね~」
「そ、そうか、そうだったのか…」
「ハル君、もしかして昔の英雄とか、賢者も、そのニホンって所から来たのかな? かな?」
「多分だけど、名前からするとそうかもね。」
「やっぱりね、みんな獣人好きだったもんね。」
と、言うことは将来シャルちゃんも…」
「ま、まぁ、先のことは後で考えるとして、とりあえずこんな俺だけど、これからも宜しくな。」
「はい、宜しくお願いします。」
「宜しく頼むのじゃ。」
「うん、宜しくね~」
こうして俺の秘密をみんなに教えることができたのだった。
う~ん、この話って必要なのかな? って思ったけど、秘密にするってのが苦手なので、書くことにしました。




