ギルドにて
冒険者ギルドへ到着したので、オークの納品書を貰ってから中に入ると…
「どうして誰も受けてくれないんだ!!」
突然男性の叫び声が聞こえてきた。
何だ? と思いその声の方を見ると、リリアさんの所にこの前見かけた竜騎士見習いが居た。
「だから何度も説明した通り、依頼はその力量に有った依頼しか受けられません。
それに、ワイバーンはこの辺りでは見かけませんから、誰も受けないんですよ。」
「嘘だ! 探しもしないで適当なことを言うんじゃない!」
「だったら調査依頼を出したら良いんじゃないですか?
居る居ないの調査だけなら、受けてくれる人も居るかと思います。」
「それで居なかったら、俺が損するだけではないか!」
「じゃあ、どうすれば良いんですか?」
「お前が調べて来れば良い。」
「はぁ? 冗談でしょ?」
そこにエミリーさんが来て、ポンとリリアの肩を叩いた。
「リリア、受付嬢がそんな言葉使ってはいけませんよ?
申し訳ございませんでした。一度細かい話も有りますし、奥の部屋に来て貰えないでしょうか?」
「そうか、なら案内しろ。」
「畏まりました。ではこちらへどうぞ。
リリアは後宜しくね。」
「エミリーごめん、分かったわ、こっちは任せて。」
エミリーさんが、竜騎士見習いと一緒に奥へと進んでいった。
竜騎士見習いが居なくなったとたん、ギルド内がザワつきだした。
「なぁ、お前だったらアレ受けるか?」
「勘弁してくれ、もし居たとしたら死にに行くようなもんだ。」
「だよなぁ。俺も同じ考えだ。」
「はいはい! すいませんがこの話は依頼が出てからにして下さい~!」
リリアさんが手をパンパンと叩いて場を仕切った。
「「「「うぃ~す!」」」」
何故か冒険者達が一斉にハモって了解し、解散していった。
余りの統一された感じに俺はビックリした。
リリアさん貴方は冒険者に何を仕込んでいるんだ?
何はともあれ、ギルド内も落ち着いたみたいなので、窓口に並ぶことにする。
今回は、最初からリリアさんの所に並ぶことにする。
「次の方~」
「リリアさん、こんばんは。
あれ、何が有ったんですか?」
「ふ~ん、今回は普通に来たんだ、感心感心。
同じことされたのなら、もぎってやったのにね。」
いったい何をもぎるのでしょうか? 怖いです。
「まぁ、色々とね、そちらには関係ない話だから気にしないで。」
確かに関係ない話だし、ギルドからすると余計なお世話かもしれないな。
「そうですか、わかりました。
では、ゴブリンの討伐と、オークの買取をお願いします。」
「えっと、ゴブリンが9匹、オークが1匹ね、合計で金貨1枚と銀貨8枚、銅貨9枚ね。
相変わらず稼いでるわねぇ~ 感心するわ。」
「まぁ、彼女らに苦労させたくないですからね、その辺は頑張りますよ。」
「そっ、それだけのことが言えるのなら、ナタリーのことも安心して任せられるわ、頼むわよ。」
「はい。」
「ほら、処理するからカード出しなさい。」
「宜しくお願いします。」
俺達はカードを提出する。
リリアさんはカードを受け取り、処理をする。
「はい、終わりっと。
そう言えば、ナタリーはどうしてるの?」
「今は、マスターから料理を習っているよ。」
「ふ~ん、なるほどね、ナタリーらしいっちゃ、らしいか。
ほら、終わったんだったら行った行った。」
リリアさんに追い出された俺達は列から離れた。
まぁ、混雑しているし、仕方ないか。
「はい、ビアンカとシャルの分。」
俺はそう言って銀貨6枚と銅貨3枚を2人に渡す。
「これで旨い酒が飲めるのじゃ。」
シャルももう受け取らないって言うのは諦めたらしく、素直に受け取った。
「それじゃ、帰るか。」
そう言って、俺達はギルドを後にして、宿へと帰るのだった。
・・・・
宿に到着したのでいつもの氷を作ってから食事へと向かった。
「出てこぉ~い! ユウショオオオォォォ~~~ク!!」
パチン…
俺が指を鳴らすと、即座に現れた…夕食では無く、ナンシーちゃんが。
「ハルさん? 他のお客様も居るのでお静かにお願いします。」
久々のナンシーちゃんジト目だ。
「ナンシーよ、まぁ、いつものハルだ、諦めるが良いのじゃ。」
ビアンカさんの冷静な突っ込みありがとうございます。
シャルも腕を組んでウンウンと頷いている。シャルぇ…
ナンシーちゃんもため息を一つついて、
「そうですね、ハルさんらしいですね。
私は既にどうこう言う権利は無いのでアレですが、でも、ビアンカがしっかりと手綱を取らないと駄目ですよ?」
「善処するのじゃ。」
「それでは、夕食をお持ちしますので、少々お待ちくださいね~」
「あ、エールを1つ頼むのじゃ。」
「は~い。」
そう言ってナンシーちゃんがキッチンへ入って行った。
「何じゃ、ハルは飲まんのか?」
「んー今日は良いかな。」
「そっか、つまらんの。」
「次は付き合うから今日は勘弁な。」
「分かったのじゃ。」
「はい。ハルさん、夕食です。」
夕食を持ってきたのはナタリーさんだ。
「おっ! 待ってました!」
「ハルさん、あまりナンシーさんを困らせたら、めっ! ですよ?」
「すいませんでした~」
「ふふふっ、困らせるのは私達だけにしておいて下さいね。」
「善処します。」
「それでは、私は戻りますので、ごゆっくり♪」
そう言ってナタリーさんは戻って行った。
さて、今日の夕食はっと。
ご飯に、味噌汁、川魚の塩焼き、ホウレン草のおひたしだ。旨そうである。
ぱくり…旨っ!
朝食も旨かったが、夕食も旨い。俺好みの塩加減もそうだが、何か説明できないが最高としか言いようがない。
「あぁ、旨いなぁ、最高だ。」
「まぁ、美味しいのは認めるが、そこまででは無いような気がするのじゃがの。」
ビアンカさん的にはそこまででは無い様だ。
最近あまり鑑定って使ってなかったな、つい忘れてしまうんだよね。
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【ヨジマスの塩焼き】
品質:B
効果:なし(特定の人物のみHP回復+3)
川魚の一種、塩を付けて愛情を加えて焼いたもの
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「え?」
「どうしたんじゃ?」
「いや、俺が美味しいと思った理由が分かった気がしただけだ。」
「そうなのか?」
「多分、これナタリーさんが作ったヤツだ。しかもうぬぼれじゃ無ければ、俺限定で効果も倍増している。」
「ほぅ?」
「多分、ビアンカさんが言っているのは正解かもしれない。
マスターの料理の方が効果が高かったからな。」
「なる程の、愛情はスパイス…か。羨ましいのじゃ。」
「そうか? これもうぬぼれじゃなければだけど、ビアンカさんも俺限定なら美味しいのが作れると思うぞ?」
「なら、今度試してみるかの。」
「おう、楽しみにしてるよ。」
「分かったのじゃ。」
夕食を食べ終えた俺達は、部屋に戻ることにした。
今日は戦闘で疲れたみたいで、シャルが眠そうにしている。
さっさと体を綺麗にして寝ることにした。
おやすみなさい…ぐぅ…
リリア様お許しを…
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル




