勝負の行方は
「…ん、…さん、ハルさん!」
何か呼ばれている気がする…だけど、枕が柔らかくて気持ちいいし、何か体も疲れているみたいだし、もう少し寝かせてくれると嬉しいな。
あれ? 俺って何時寝たんだっけ? 確かみんなで狩りに行って、オーガを見つけて、戦闘になったんだっけ…戦闘!?
そうだ、あの後どうなったんだっけ? みんなは無事なのか? とにかく起きなくちゃ!
目を開けてみると、まずは巨大な2つのふくらみが目に入ったがこれは何だ?
で、その向こうに涙でぐしゃぐしゃのナタリーさんの顔が見えたってことは、これってナタリーさんのおっぱいか!? 絶景である。
そして、その周りに、同じく泣いているアイリさん、ビアンカさん、とても心配そうに見ているシャルが見える。
「ハルさん!」
「ハル君!」
「ハル!」
「!!」
「ごめん、ちょっと寝てたみたいだ、オーガってどうなったんだ?」
「オーガならほら、あそこじゃよ。」
ビアンカさんが示した先には倒れているオーガが居た。
どうやら無事に倒せたみたいだった。
「それで、俺が意識を失った後のことを教えて貰っても良いか?」
「ハル君! 意識を失ったじゃないよ? 死んじゃったんだよ?」
「え? 俺って死んだの?」
「オーガの最後の一撃を頭に受けての、あれは酷かったのじゃ。」
ビアンカさんがぶるっっと震えている。
俺は自分の顔を触るが、特に異常はなさそうだ…って触ってて思い出したが、そーいや骨も折れてたよな?
何で普通に動いているんだ?
「な、なぁ、俺って骨とかも折れてたよな? 何で治ってるんだ?
あ、そうか、ナタリーさんが治してくれたんだね、ありがとう。」
「いえ、私が治した訳では無いです。
でも、なんて説明したら良いのか…」
「じゃあ、私から説明させてもらうね、おそらくだけど、ハル君の称号の命の効果なんだと思うよ~
オーガが倒れたので、慌ててハル君に近寄ったら突然ハル君が光ったと思ったら傷も何も綺麗に無くなったんだよ~」
「そーいや命の木の実の効果が死亡した時に生き返るだっけ?」
「そうそう、多分それだと思う。」
「確認してみるか、ステータス!」
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名前:ハル
年齢:20
状態:普通
LV:5
HP:27/27(+5)
MP:60/60(+8)
STR:10
VIT:8(+2)
AGI:13(+5)
INT:26(+3)
DEX:25
LUK:4
スキル:投擲Lv5、言語理解、剣術Lv1、激おこぷんぷんLv5、魔力操作Lv6(new)、生活魔法Lv6(new)、鑑定Lv3、隠密Lv4、解体Lv4、調合Lv6、索敵Lv5(new)、直感Lv1、アイテムボックス、恐怖耐性Lv2(new)、竹槍術Lv1、麻痺耐性LvMAX、呪い耐性Lv1(new)
称号:命99、ケモナーLv2、暗黒変態紳士、薬剤師、ショーボン創造神の加護、中二病、このロリコン野郎!(new)、女たらし(new)
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「あ、ホントだ、99に減ってるわ。
後レベルも上がってるし、色んなスキルが増えてるな…って、えっ!?」
「どうしたんじゃ?」
「な、何でも無いよ。うん、何でも無い。」
称号に変な物が追加されている…
ロリコンって…俺っておっぱい星人だった様な気がするんだが、深層心理ではそうじゃなかったのか!?
もしかして、ビアンカさんとシャルが原因なんだろうか? …あり得るな。
そして、女たらしって、そうなんだろうか? 全く自覚は無いんだが…
「ねーねー、ハル君、どんなのか見せてよ~」
「あたいも見たいのじゃ。」
「わ、私も見たいです。」
いや、これは見られたらマズイ! つーか人生が終わる!
彼女らに隠し事はしたくは無いが、こればっかりは隠したい!
「もらいっ!」
「アイリさん駄目~!!」
アイリさんにギルドカードを取られ、ビアンカさんにブロックされている。
何て無駄のない連携なんだ、ってそんなことはどうでも良い、なんとか誤魔化せねば。
「へぇ~相変わらずスキル多いし、色々と上がってるね~
恐怖体制はオーガだと分かるけど、呪い耐性って、ハル君呪われたの?
後、麻痺耐性がMAXって、何をしたらこうなるの?」
「恐怖と呪いはいつの間にか取得してました。
麻痺耐性はアイリさんと、ビアンカさんのおかげで取得することが出来ました。」
「え? 私達が?」
「ええ、何時とは言いませんけどね(汗)。」
「ふ~ん、じゃあ、女たらしは…まぁ、分かるから良いけど、このロリコン野郎って何?」
「さ、さあ? 何でしょうね?」
「野郎ってことはハルのことじゃろ?
ならロリコンって何じゃ?」
ん? もしかしてケモナーと一緒でロリコンの意味も分からないのか?
確かロリコンって、ロリータコンプレックスの略だったよな、ロリータって確か小説のタイトルでも有ったが、その意味は小説に出てくる少女の愛称だった記憶があるな。
そうか! この世界には無い概念であって、単なる人の名前の愛称だから意味が通じないのか、そうかそうか。
もし、称号が「この少女愛好野郎が!」だったら危なかったな…
そうすると、この称号の名称ってどんな理由でこんな名称になっているんだろう?
「ねーねーハル君、これってどういう意味なの?
多分、ケモナーと同じく知る必要が有ると思うんだけど?」
やっぱりアイリさんがピンポイントで聞いてきたよ、でも、意味が知らないってことはチャンスである。
「アイリさんが分からないんだもん、俺にも分からないよ、何なんだろうねこれ?」
「むぅ~、ハル君も分からないってことは諦めるしかないか~、残念。」
ほっ…どうやら何とかなったらしい。
この話題を引っ張ると墓穴を掘りそうだし、別の話題で誤魔化すことにする。
「それにしてもオーガって初めて戦ったけど、物凄く強かったよな、クリストさんってあれを倒せるんだもん、スゲーよな。」
「いえ、オーガだったらあそこまで強くないです。
ほら見て下さい、微妙に肌色が違いますし、体も大きいし、角が3本ありますよね? これはオーガロードだと思います。」
「オーガロードじゃと? 道理で強い訳じゃ!
あたいも1撃くらいなら耐えられると思っておったが、出来なかったしの。
よくもまぁ倒せたものじゃ。」
「そうだ! ビアンカさんはケガとか大丈夫ですか? 確かふっ飛ばされましたよね?
ケガしているんだったら言って下さい、俺ポーション持ってますから!」
「気にかけてくれるのは嬉しいのじゃが、もう治っておるしの。
あたいは少しの打ち身と擦り傷程度だけじゃったから、ナタリーに直してもらったのじゃ。
ナタリーは凄いんじゃぞ? あっという間に治してしまったのじゃからの。」
「いえ、私なんかは駆け出しですし、全然ですから…」
「何言ってるの、ハル君のために一生懸命やってるのは知ってるんだから~」
「でも、でも、ハルさんは称号のおかげで助かったからまだしも、もし違う人だったら…
それに、私は今回何も出来ませんでしたし、もし、ハルさんが死んでいたと思うと…」
ナタリーさんがポロリと涙を流した。
「あ、えと、ほ、ほら、俺はこの通りピンピンしていますし、これから頑張れば良いんじゃないかな?
いや残念だったな~、俺もナタリーさんの治療受けたかったな~」
ナタリーさんは何も答えず、目を細めてやさしく微笑んだだけだった。
「さてと、このオーガロードだっけ? どうしたら良いんだろう?」
「売って酒代にするのじゃ!」
「まぁ、売った場合は等分にするので、後は好きにすればいいと思うんだけど、俺達みたいなのがオーガロードを持って行っても良いのか?」
「はい、逆に報告しない方がマズイですね。
もしかすると、何かの前触れかもしれませんし、危険を注意するためにも必要ですね。
ただ、色んな人の目に付きたくないので有れば、私の方からこっそり報告することも可能ですけれど…」
「アイリさんが居るんだし、その辺は問題無いのでは?」
「ハル君が私を評価してくれるのは嬉しいんだけど、さすがにオーガロードは無理だからね?」
「そうなのか? アイリさんの魔法なら行けそうな気がするんだけど。」
「私も資料でしか見たことが無くて、今日のアレを見て確信したんだけど、多分ハル君も気が付いているかな?
オーガロードって魔力を感知するんだよね~」
「そーいや、アイリさんの魔法に気が付いたし、俺の魔法を避けたし、最後のパイルバンカーも気が付いていたっぽいしな。」
「でしょ? ある意味魔法使い泣かせなんだよね。
魔法で効果的なのは、仲間を含めて広範囲魔法をするか、今回のハル君みたいにゼロ距離での方法位しか恐らく無いんじゃないかな?
たから通常は武器による物理攻撃が主になるんだけど、そうすると傷だらけになって素材としては微妙なんだよね~
だから、今回のオーガロードの素材は胸の部分にしか穴が無いし、きっと高く売れると思うよ~」
「それだと、色々と根ほり葉ほり聞かれそうな気がするな。」
「その辺は気にしなくても大丈夫ですよ。
自己申告するなら別ですが、基本秘密主義の方が多いですから。
ギルドからは強制的に言わせるってことは、ありませんからね。」
そう言えば登録の時の自己申告だったな、ただ申告すると仕事の依頼がって話だっけな。
「じゃあ売る方向で良いのかな?」
「後は素材を自分たちで使うってのも有りますよ、オーガロードの素材だと凄い武器、防具が作れると思います。」
「う~ん、みんなはどうしたら良いと思う?」
「今すぐ決められないんだったら決まるまで持っていれば良いんじゃないかな~
ハル君ならその辺り問題ないでしょ? で、ギルドには報告だけすれば良いと思う。」
「そうじゃな、どうせこの街では作れんじゃろうし、それで良いかもしれんの。」
「そうだな、じゃあこのオーガは一応俺が預かっておく。」
俺はオーガロードをアイテムボックスへと収納した。
「じゃあ報告も有るけど、疲れたし帰ろうか。」
「「「は~い(なのじゃ)。」」」
こうして俺達は森を出てギルドへ帰ることにした。
とうとう残機が1減ってしまった。




