異世界?
「…はっ」
目が覚めた俺は自分の体を確認し、どこにも痛みが無いことが確認できた
「あれ?俺は電車にひかれたはずじゃ…
名前は響 晴彦、42歳の独身でサラリーマン、趣味はアニメやライトノベルと…記憶も問題なさそうだな」
安心して落ち着いたためか、自分の体がいつもと違うことに気が付いた
先ほど前は仕事帰りだったためスーツにカバンの恰好だったのに、今はみすぼらしい布の服に布のズボンである
そして、周りを見ると草原の真ん中で電車も駅も何もなかった
それに、鏡が無いから顔はわからないが、いつもと違った声って言うか、かなりのイケボになっているし、身長も180cmくらいか?目線が随分高くなった
そして一番の変化は、どう見ても二十歳くらいに若返ってるっぽい
「まじか…だが、これはもしかすると今流行りの異世界転生と言うものか?
…と、言うことは、ステータスオープン!!」
「…鑑定!!」
「…メニュー!!」
「…アイテム系で確認するタイプかな?
じ、じゃあ次の定番のアイテムボックス!!…ストレージ!!…空間魔法!!」
「だあぁぁぁ!!何にも起こらないじゃねーかああぁぁぁ~~~!!
せめてヘルプかチュートリアルは無いのかあぁぁぁ~~!!」
ぜぃぜぃぜぃ………ふぅ~
「しゃーない今できることも確認することもこれ以上何もないし、水や食料も無いのも困るし移動するしかないな。
とは言っても、周りは野原しかないし、目標になる目印も無い、どっち行けば良いだろ?」
考えても仕方ないのでとりあえず前に進むことにした
「仮に異世界だとして、モンスターとか居たらヤバイな、武器になりそうなものはっと」
無いよりはマシかと、牽制になりそうな石を拾ってポケットにしまうことにした
てくてく歩きながらもしかしたらスキルでも手に入れられるかもしれないと石を拾っては投げるを繰り替えした
「ま、スキルの概念が無かったとしてもコントロールが付けば多少は当たるようになるだろうし、いきなり本番も怖いから練習、練習っと」
ピロン!投擲スキルを入手しました!!………なんてアナウンスは流れなかったが(笑)
それでも繰り返し練習したおかげか10回中5、6回はだいたい狙ったところの近くに飛ばせるようになった
必中ではないがこんなもんだろう
「でも、そろそろ、水っ、飲まないと、喉がカラカラでヤバイ…」
しばらく進むと大きな木が見えた
その木には丸いリンゴみたいな実が生っていた
「う~む、ありがちなパターンだと毒とか、モンスターの罠ってのもあり得るな」
まずは練習の成果を試してみるかと石を木目掛けて投げてみた
カーン
見事に幹に当たって良い音がしたが、特に変わったことも無かった
「どうやらモンスターではなさそうだ、じゃあ毒の可能性もあるけど試してみるか。
確か毒だと舌がしびれるとかだっけかな」
実を一つ取って皮の部分を取り除いてから舌先で突いてみた
芳醇な香りと甘さにかぶりつきたい衝動を抑えっつつ待つことにした
・・・・
10分ほど待ってみたが特に舌にも体にも異常は見られなかった
「大丈夫…だよな?つーか食わんとマジ死ぬかもしれんし覚悟を決めるか」
とその時チチチと鳥の鳴き声が聞こえ、そちらを見てみると小鳥が実を啄んでいるのが見えた
「…問題なさそうだな? と言うことで、いただきま~す!!」
シャクッ
「うま~~!!なんだこれ!!」
ボキャブラリーが足りなく上手く表現出来ないが
リンゴやメロン、マンゴーやブドウ、みかん等の複数の果物がミックスしたような複雑な甘さにも係わらず、それらが違和感なく1つの味としてまとまり至高な甘みに昇華されおり、かつジューシーな果物だった
夢中になった俺は〇まっしぐらも真っ青になるくらいに、ひたすらこの果物を食べ漁るのだった
実はこの果物を食べたことで後々大変なことが起こるのだが、俺はまだそのことを知ることは無かったのだった
「ふぅ、食った食った」
ここまで食べて毒だったら目も当てられないが、もうどうしようもない
まぁ、違う意味でお腹を壊しそうだなと思いつつも、特に体に異常もなくお腹ものどの渇きも満足したので今後の方針を考えることにした
と言っても考えられるパターンとしては2つしかないけどね
このまま食料がある限りここで誰か来るのを待つパターンと
来るかどうかを待つより動けるうちに移動するパターンか
ぎりぎりまで居るのも良いけど、何が起こるかわからないし、
後々のことを考えると移動した方が良さそうだな
でも、さすがに疲れたし、今日はここで休むとす・・・・
ここまで言いかけて気が付いた
「そーいや、時計が無いから正確にはわからないが、この世界に来てから少なく見ても5、6時間は経ってるよな?
来た時点でお昼くらいの太陽の位置なのに全然変わってない!?」
「白夜・・・じゃないよな、白夜だとしても太陽は移動するよな?
他にはこの世界が平面で夜のない世界とか?
時間が停止している世界だと俺も止まってるよな…
後は、神とか精霊とかが住んでいる世界とか…ははっ、まさかな」
ここに来てから特に危険なものに出会うことも無かったし、
屋外で屋根は無いが雨が降っている訳でもないし、気温も丁度良い感じだから
ひとまず寝て、落ち着いてから移動すればいいやと考えた俺は、ごろりと横になった
「明るいせいで寝にくいな、の〇太君じゃあるまいし、昼間から寝るなんて……ぐぅ」
・
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意識が浮上し、目が覚めた
「知らない天井だ」
死ぬまでに言ってみたいNo.3セリフをつぶやいた
でも、そこには天井など無く、果物の木が見えるだけだった、もちろん言ってみたのは気分の問題だ
No.1、2は機会があれば公開するとしよう
朝飯変わりに果物(というかこれしか無いが)を食べた後は、着ている服を脱いで風呂敷代わりにして果物を持てるだけ持ち、俺は出発することにした
最後に、命を助けてもらった木に十分に感謝をし、歩き始めた
すると、どこからか、ささやくような声が聞えた気がした
(またね)
「え?」
そして声と共にいきなり景色が変わり、俺は森の中に佇んでいたのだった