乗合馬車
ギルドを出た俺達は、明日の相談をすることにする。
「アイリさん、ビアンカさん、遠出する場合ってどうするんですか?」
「私は遠出したこと無いからよく分からないかな?」
「あたいの経験で良いならじゃが、基本は乗合馬車か歩きになるの。
他にも自前で馬車を用意するって方法も有るが、維持を考えるとお勧めはしないの。
どちらにしても万が一のことを考えて、野営の準備だけはしておいた方が良いかもしれんの。」
「ふむ、ここからカルデの街までってどのくらいかかるのでしょうか?」
「えっとね、隣町だからそれほど遠くは無いから、馬車だったら半日、歩きだと1日半くらいかな?」
アイリさんが地面に大まかな地図を描いて教えてくれた。
ふむ、俺がこの街に来た道をそのまま進むと、カルデの街に着くんだな。
「アイリさん、ちなみにここの道を反対方向に進むと、何処に行くんですか?」
「えっとね、確か何か所か街や村があるけれど、王都まで続いているよ~
でね、王都の先にもまだ街や村があって、ずっと先にサンリツ帝国になるんだっけかな?
ごめんね、私もそれほど詳しくなくて…」
「いえ、俺は全然知らなかったから、十分助かりました。」
「まぁ、追加と言うのもなんじゃが、このカイトウ王国とサンリツ帝国の国境近くに迷宮都市が有るの。」
「迷宮都市か…モブさんが言っていたダンジョンが有る所だっけ、興味はあるのでいつかは行ってみたいな。」
「そうじゃの、冒険者として、あたいも行ってみたいの。」
「ハル君が行くんだったら、私も行きたい~」
「そうだな、みんなで行けたら良いな。」
ま、何にするにせよ、もう少し実力を付けてからじゃないとな。
「それで、明日の移動はどうするのじゃ?」
「とりあえず歩きだと間に合わなくなる可能性もありそうだし、行きは馬車で行こうか。
帰りはまたその時考えれば良いしね。」
「なら乗合馬車の詰所に確認しに行きましょうよ。」
「そうだな、出発時間や値段とかも知りたいしな。」
「決まりじゃな。」
俺達は乗合馬車の詰所に向かった。
・・・・
「ここが乗合馬車の詰所か。」
ここは事務所的な建物と、馬屋、いくつかの馬車が置いてある施設だ。
ここに居ても仕方が無いので中に入ることにする。
「いらっしゃいませ。」
カウンターに女性が一人だけ座っていた。
「すいません、明日、カルデの街へ行く乗合馬車を利用したいのですが、どうすれば良いでしょうか?」
「乗合馬車のご利用ですね、朝の便と昼の便がありますが、どちらをご利用いたしますか?」
「朝と昼の違いって到着時間が違うだけですか?」
「そうですね、その認識で合ってますよ。
値段はどちらを利用しても銅貨5枚となります。」
「どうします?」
「ハル君にお任せ~」
「あたいもどちらでも構わないのじゃ。」
「んー、なら、朝の便で出て、向こうの午後は街を散策って感じにしよっか。」
「それでいいよ~」
「問題無いのじゃ。」
「すいません、明日の朝の便、3名でお願いします。」
「はい、それでは3名で銀貨1枚と銅貨5枚になります。
馬車は朝の8の時間に出発しますので、遅れずに来てください。」
俺達は、各々銅貨5枚を支払った。
俺が払っても良かったが、PTで依頼料を割ると言った手前、諸経費も払って貰わないと駄目だろうから、払ってもらうことにした。
予約が取れて安心した所で、ふと思いついたことを聞いてみることにする。
「ここって馬車を購入する事って出来るんですか?」
「はい、サイズや付属品によって値段は変わりますが、可能です。」
「ちなみに値段は?」
「大きさにもよりますが、5人乗り馬車で、荷台のみの馬車が金貨5枚、ホロ付きで15枚、屋根扉が付いたタイプだと白金貨10枚になります。」
いきなり値段が上がるが、屋根扉ってことは貴族が使う様な馬車かな?
「馬はどうなりますか?」
「馬1頭で金貨2枚で購入して頂くことになります。
ただ、各街の乗合馬車の詰所で買い取ることが出来ますので、必要に応じて売買される方が多いですね。」
「売値は幾らくらいになるのでしょうか?」
「特にケガも病気も無く、元気な場合は金貨1枚、銀貨5枚で引き取ることが出来ます。
後は、状態によって値段が変わる形になります。
もちろん、死亡、瀕死等で馬車を引くことが出来ない馬については、買い取ることが出来ません。」
「馬車も買い取ってくれるんですか?」
「馬車は、買取は致しませんが、馬車が早急に欲しいとかの依頼が有った場合は、条件や状態によりますが、買い取ることも有ります。」
「分かりました、ありがとうございます。」
「質問は宜しいでしょうか?」
「はい、有りません。」
「それでは、明日8の時間にお待ちしております。
ご利用ありがとうございます。」
俺達は詰所を後にした。
そして、詰所を出た所でアイリさんが質問してきた。
「ねーねー、ハル君は馬車を買うの?」
「いえ、今の所必要性も無いので、単なる興味本位かな。
ただ、いざ必要な時に有ると便利かな~って思ってさ。
ほら、俺なら収納しておけば邪魔にはならないしね。」
「なるほどね~」
「次はどうするんじゃ?」
「さっきのビアンカさんの話からすると、野営の準備かな?
アイリさんと、ビアンカさんは野営の道具って持ってますか?」
「私は持ってないかな~」
「あたいは一人用のテントしか持ってないの。」
「じゃあ、道具屋でも行ってみようか。」
「は~い。」
「任せたのじゃ。」
道具をそろえるならゴードン商会かな? 他の店は知らんし、とりあえず行ってみるか。
しかし ばしゃは いっぱいだった!