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醤油


講習も2時間程度で終わってしまったので、今はまだお昼くらいの時間だ。

宿に戻ってのんびりするのも良いが、どうしようかな。

折角重りを付けて居るんだし、修行の一環と言うことで、街中の散策をすることにしよう。


とりあえず商業区域の中央広場までやってきた。

重いとは言え、歩く分には問題なく、多少疲れはしたが、まだまだ頑張れそうだ。

なので、ウィンドウショッピングを行うことにした。


とは言え、何処に行こうかな。

そんなことを考えていると、声を掛けられた。


「おっ、前にも来てくれた坊主じゃないか、食ってかないのか?」


声を掛けられた方を見ると、前に食ったこともある、屋台スープを売っているオヤジだった。


「いや? たまたま通りかかっただけで、今日は食いに来た訳じゃないからな。」


「そうかい、残念だ。」


なんとなく悪い気がしてきたのと、お昼で少し小腹も空いているので、折角だから食べて行くことにする。


「まぁ、腹減ってるし、折角だから食ってくよ、1個くれ。」


「まいど、鉄貨5枚だ。」


俺は、財布から鉄貨5枚を取り出し、支払い、スープが入った器を受け取った。

さっそくスープを頂く…相変わらずの塩味だけだ、不味くは無いんだが、物足りない…


「そーいえばさ、オヤジさんって、前に、このスープをアルデの街で一番って言ってたよな。」


「おう、当然だろ?」


「俺、薔薇の宿屋を利用しているんだが…」


「うっ…そ、それは…、い、いや、あそこは、そ、そう! 香辛料をたっぷり使ってるからだな。うん。」


「・・・・」


「…2番だ。」


「まぁ、別に責めている訳じゃないから、気にすんな。」


「そ、そうか。」


「それに、前にマスターに他の宿のスープはこんなんだって出されたのと比べると、ここのスープは確かにアレより旨いと思うしな。」


「そーだろ、そーだろ」


「でも、塩だけだとしてもなぁ…もっと旨くなりそうな気もするけどな。」


「とは言ってもなぁ…」


「ここのスープって、ホーンラビットの肉と、丸ネギを刻んだのを煮て、塩で味付けしただけだよな?」


「まーな、だから、その値段で出せるんだけどな。」


「ちなみに、幾らくらいまでなら値段上げられそうだ?」


「鍋一杯で50杯分だから、多くても鉄貨2枚として、銀貨1枚が限度って所かな。」


「りょーかい、何か有るかもしれんから、とりあえず買い物行ってくるわ。」


まずは肉屋に行くことにする。


「すいませーん。」


「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」


「ケッコー鳥の骨って有ります?」


「有るっちゃ有るが、何に使うんだ?」


「料理だけど?」


「これって食えるのか?」


「いや、犬じゃないんだから、食えないぞ?」


「まあいい、骨はゴミだから、好きなだけ持って行け。」


「それじゃ、2羽分貰うよ、幾ら?」


「ああ、処分してくれるんだ、タダで良い。」


「そっか、ありがとな、じゃあ折角だから1羽分のケッコー鳥の肉を売ってくれ。」


「まいど、銅貨1枚と鉄貨3枚だ。」


俺はお金を支払って肉を受け取る。


「また来てくれよな。」


「それじゃな。」


俺は肉やを後にした。

しかし、骨をタダで貰ってしまったな、ラッキーである。

この世界には鶏ガラから出汁を取るってやらないのだろうか?

マスターはしっかり出汁を取っていたが、あれってジェニファーが居たから出来たことなのかもしれない。

出汁の概念を広めて良いのかの疑問は有るが、旨いものが増えるのは賛成だ。

俺は作るのは嫌いでは無いが面倒なので、他人に作らせて食べられるのならば、気にしないことにする。

次は野菜を売ってる店に向かうことにする。


「らっしゃい、らっしゃい、今日はDAICONが大安売りだよ~」


なんか昔ながらの八百屋みたいだな、なんか懐かしいや。

店の中を覗くと、結構品ぞろえは良いみたいだ。


「すいませ~ん、キュロット10本、ホワイトネギ4本、せロリ2本、しぃたけ10個、ショウガナイ2個、ぱっセリ1個を貰えますか?」


「まいど、全部でえっと…銅貨1枚と鉄貨8枚だな。」


俺はお金を支払い、商品を受け取る。

よし、次だ、次は前々から興味の有った、調味料を扱ってるお店だ。


「ここで良いのか?」


たどり着いたお店は少し立派なお店で、入り口には警備員(?)が立っている。


「すいません~」


「何だ?」


「ここって、調味料を扱ってるお店で良いんですよね?」


「そうだが、何でだ?」


「いや、警備してるので、店を間違ったのかなと思ったので。」


「あぁ、そりゃそうだ、香辛料は高価な物だ、警備する人が居るのは当たり前だろ?」


「あ、そう言えばそうだった、納得しました。」


日本のスーパーみたいに手軽に買えるものじゃなかったんだっけな。

まぁ、悪さをする訳じゃないし、堂々としていれば問題無いか、さっそく店の中に入ることにする。


「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」


「ちょっと香辛料を探しに来ました。見させてもらっても良いでしょうか?」


「はい、ごゆっくりどうそ。」


了解を得られたので、店の中を見て回る…と言っても大したものは売ってない。

塩と胡椒と、唐辛子と、いくつかハーブらしきものが有る程度だ。

塩は200gくらいで銅貨1枚、唐辛子やハーブは100gくらいで鉄貨1枚だが、胡椒が1粒で銀貨1枚だった、高えぇぇぇ~~!!


「胡椒ってこんなに高いんですか?」


「胡椒はもともと、数が取れない、栽培も難しくてね、どうしてもこの値段になってしまうんですよ。」


高いとは聞いていたが、ここまで高かったのか…

そうするとマスターの入手先っていったい何処なんだろう?

ある意味胡椒の販売だけでも大儲け出来るんじゃないだろうか?

ちなみに、アイテムボックスにも大量の胡椒は有る、これ売ったらどうなるんだろうか(汗)

今回は、あくまで屋台のスープの改良だ、アイテムボックスの件は無しにしておく。


「とりあえず唐辛子を鉄貨1枚分下さい。」


「まいどありがとうございます。こちらが商品になります。」


商品を受け取り、お店をでようとした所で、片隅に陶器で出来た瓶が置いてあった。

興味を覚えた俺は、お店の人に聞いてみることにした。


「すいません、あれって何ですか?」


「あ、あれは…処分する予定の物だったのですが、置きっぱなしにしていました。申し訳ないです。」


「処分? 中身って何ですか?」


「お恥ずかしい話なのですが…」


店員の話を聞くと、東方での調味料でもある味噌の作り方を教えてもらい、興味本位で作ってみたらしい。

だけど、味噌にはならず、ドロドロの液体で、匂いもキツかったので処分しようと思っていたらしい。


「開けてみても良いでしょうか?」


「構いませんが、臭いがアレなので、外でお願いします。」


「わかりました。」


俺は瓶に近づき、持ち上げる、かすかに感じた匂いを嗅いで、俺は確信する。

逸る気持ちを抑え、外に出る。

蓋を開けると、黒い液体が見えた、そして懐かしいあの匂いが…

小指にちょっと付けて、舐めてみる…醤油だ! いや、正確に言うとたまり醤油か?

昔本で読んだことが有るが、隣の国でお坊さんが味噌造りを習い、帰ってきて作ったら失敗してドロドロの液体になってしまったが、舐めてみると美味しかったってのが醤油の原点らしい。

他にもいろんな説があるが、今はどうでも良い、正にここに、その醤油が有るってことの事実だけが俺には必要だからだ。


この世界には、塩魚汁は有ったが、醤油は無かったので、これは正直嬉しい。

塩魚汁でも旨いが、魚から作られる関係上、微妙に魚の生臭さが出てしまう。

それに比べて、大豆から作られるこの醤油は、塩魚汁とはまた違った旨さが有るし、個人的には慣れ親しんでいるのも有るし、こっちの方が好みだ。

外国の人が醤油工場とかに見学に行くと臭いって言われているので、この世界の人も嗅ぎ慣れていない醤油の匂いは臭いと感じたんだろう。


「どうでした? 凄い臭いだったでしょう?」


「臭いは慣れてない人だとそうかもしれないですね。

 ちなみに、これを譲ってもらうことは出来ませんか?」


「え? これをですか?

 私としては処分が出来るので構いませんが、良いんですか?」


「もちろんです! 他にも有ればそちらも引き取ります!」


「実は、お恥ずかしい限りなのですが、売れると思ったので、大量に作ってしまってしまったんですよね。

 材料費だけで構いませんので、引き取ってくれるのなら、こちらとしても助かります。」


「ちなみにどのくらい有るのですか?」


「その瓶が100個になりますね、材料費が1瓶で銀貨1枚くらいでしょうか。

 金貨10枚になってしまいますが、大丈夫ですか?」


「もちろん買わせて頂きます。

 ちなみに、今後これを作ることは?」


「無いですね、正直失敗したと思っています。

 お金は、今回売れたので戻ってきたので良いですが、時間を無駄にしてしまいましたね。

 これも勉強でしたね。」


「そうですか、なら作り方だけでも教えて貰っても良いでしょうか?」


「ええ、買って頂いたのですし、良いですよ。

 と言うか、レシピを差し上げますよ、私にはもう必要のないものですから。」


「ありがとうございます。

 とりあえずお金払っちゃいますね。」


俺は財布から金貨10枚を取り出し、店員さんに支払った。

店員さんは引き出しからレシピを取り出し、金貨を受け取った際に渡してくれた。


「こちらがレシピになります。

 それで、瓶は裏の倉庫に有りますが、どうしましょうか?

 手数料を払って頂ければ、指定場所にお送り致しますが。」


「あ、全部持って帰りますから大丈夫です。」


「そ、そうですか、ではこちらにどうぞ。」


店員さんは奥の倉庫に案内してくれた。


「この中には例の物しかありません。

 扉を開けておきますので、運び終わりましたら店先の警備している人に声を掛けて下さい。

 それでは私は別の仕事が有りますので、この辺で失礼させて頂きます。

 本日はありがとうございました。」


「こちらこそありがとうございました。」


店員さんは行ってしまった。

まぁ、これを運ぶとなると時間が掛かるし、見ていられなかったんだな。

こちらとしても助かったし、丁度良かった。

レシピを含めて、全部の瓶をアイテムボックスへと収納した。

全部で500Lほど有るので、しばらくは問題無いだろう、それにレシピも有るし、最悪作れば良いしな。


俺は倉庫を出て警備している人に声を掛ける。


「終わりましたので、俺は行きますね。」


「はい? え? も、もう終わったのですか?」


「はい、それでは~」


ポカーンとしている警備している人を後に、俺は店を出て行った。


「さて、準備はこんなもんか、戻ろう。」


俺は屋台のオヤジの所に帰ることにした。


味噌が有るのに醤油が無かったのでつい…

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― 新着の感想 ―
[一言] 醤油は、もろみだと、料理が増える……………
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