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今朝のこと


宿への帰り道、宿ってキーワードから、朝のことを思い出す。

そうだった、昼間の会った時は森の中だったので、そこまで気が回らなかったが、落ち着いた今だし、謝らないとな。


「ビアンカさん。」


「何じゃ?」


「…えっと、その…」


「じれったいの、ハッキリせんか!」


ええい、ままよ!


ガシャン!


俺はビアンカさんを抱きしめる…が、ビアンカさんは全身鉄の鎧の重装備だ、硬くて、女の子特融の柔らかさは全く感じることが出来なかったのは残念である。


「な、な、な…」


俺は、抱きしめたまま、ビアンカさんの耳元でささやく。


「朝は、ゴメン、俺、こういったことの経験が全く無くて、どうして良いのか分からなかった。

後から考えたら、ビアンカさんに失礼なことをしたと思う。だから謝らせてくれ。」



「…あたいも、この年まで経験が無くて、焦っていたのかもしれん、こっちこそすまんかったの。

 色々と知り合いから聞いた話や、物語とかの話を聞いて憧れてもいたからの。」


うん、何となくその気持ちは分かる。

俺だって、ゲームやアニメ、ラノベとかで良いな、羨ましいなって思ってたし、同僚や友達が恋愛だ、結婚だとかの話を聞いて、落ち込んだりしたりしたし、ビアンカさんもきっと同じ気持ちだったのだろう。

実際、今その立場になったみたいなのだが、主人公や同僚、友達の様にはならないってのが、俺クオリティなんだろうな。

でも、俺だって変わりたいと思っていたんだ、それに、某人物だって言ってたじゃないか、「いつやるか? 今でしょ!」って…


俺は、ビアンカさんを抱きしめていた腕を緩め、肩に手を添える。

ビアンカさんの顔を見ると、真っ赤に染まっていて、目が潤んでいた。

そして、ゆっくりと目を閉じたのを見て、俺は…



チュッ…



ビアンカさんのおでこにキスをした。

傍から見ると、小〇生にキスをしている大人だ。日本だったら間違いなく事案である。


「今の俺としては、これが精一杯だ、こんなヘタレな俺だけど、構わないか?」


「ま、まぁ、及第点としておくかの。構わないのじゃ。」


「ありがとう。そして、これからもよろしく。」


「こちらこそ、よろしくなのじゃ。

 じゃが、後の3人にも、キチンと言うんじゃぞ?」


「ああ、分かってる。」


「なら、今は、これでええ。

 今後のハルの頑張りを期待しておくかの。」


ビアンカさんが、腕にしがみついて来たので、そのまま帰ることにした。

正直、鎧が当たって痛かったが、言わぬが花なんだろうな。


・・・・


宿に到着した。


「ビアンカさんは、夕食どうしますか?」


「一度部屋に戻り、体を拭いて着替えてからじゃな。

 な、なぁ、一緒に食べないか?」


「いいぞ、なら、俺も用事済ませて、着替えてからにするか。」


「分かったのじゃ、じゃあ、また後での。」


「ああ、またな。」


俺は地下室へ向かいって氷を作り、階段を上がると、そこにナンシーちゃんが居た。


「あ、ハルさん、お疲れ様です~」


「よぉ、ナンシーちゃんもお疲れ。」


ふと、先ほどのビアンカさんの言葉を思い出す。


(じゃが、後の3人にも、キチンと言うんじゃぞ?)


そうだ、ナンシーちゃんにもキチンと言わなくちゃな。


「な、ナンシーちゃん!」


「はい、何ですか?」


「あの、えっと、その…」


「どうしたんですか?」


さっきは、雰囲気と言うか、流れで言えたが、いざ正面切って言うとなると、言葉が出てこない…


「実は…」


「おーい、ナンシーちゃん、エール追加お願いね~」

「私にもエール追加ね~」


「は~い、今持って行きます~!

 ハルさん、ごめんなさい、呼ばれているので行きますね。」


「あ、うん、呼び止めちゃってごめん、頑張ってな。」


「はい、それではまた~」


ナンシーちゃんは仕事に戻って行ってしまった。

何やってんだよ、ここまで来ておいて、またヘタレになるのかよ。

つくづく、この性格が嫌になってくる。伊達に40年以上も喪男やってないってことか…

とりあえず部屋に戻り、体を綺麗にしてから着替え、食堂に戻ることにする。


「遅かったの。」


ビアンカさんがすでにエールを飲んでいたが、夕食はまだ頼んでいないみたいだ。


「ナンシーちゃん、夕食頼むわ。」


「は~い、今お持ちしますね~、ビアンカさんもですか?」


「ああ、頼む。」


「少々お待ちくださいね~」


ナンシーちゃんがキッチンへ入って行った


「なんじゃ、飲まんのか?」


「明日、講習受けるのに、万が一酔っぱらって行ったら、相手に失礼だろ?」


「だらしないの、エール程度なら大丈夫じゃろうに。」


「まぁ、1杯くらいなら問題ないとは思うけど、気持ちの問題かな。」


「そっか、そう言う所は、感心じゃの、あたいには無理じゃがの。」


カラカラと笑っている。

まぁ、ファンタジー物で、ドワーフと言ったら酒ってくらいに必要な物だからな、それについて何か言うつもりも無い。


「で、ハルよ、ナンシーと何か有ったのか?」


「いや? 別に無いけど?」


「そうかの? ナンシーは何も変わらんが、ハルの態度は少し変だったぞ?」


「それは…」


「お待たせしました~、本日の夕食です。ごゆっくりどうぞ~」


ナンシーちゃんは別の客の対応するためにに行ってしまった。


「悩みなら相談に乗るぞ? なんてったってハルの彼女だからな!」


「それは頼もしいことで、いや、大したことじゃないんだけどな。

 さっき、ビアンカさんにキチンと言えって言われたじゃん、いざ言おうかと思ったら言葉が出なくてな。」


「はぁ~、何かと思えば、そんなことか。

 じゃが、あたいには言えたのに、どうしたんじゃ?」


「さっきは、雰囲気と流れってのが有ったからな。

 いざ正面切って言おうと思ったら、頭が真っ白になっちゃって…」


「本当に、ヘタレじゃの。

 あたいは、何でこんな奴を好きになったんじゃろう?

 でも、そんなハルを見ていると、安心するし、幸せな気分になるのじゃから、仕方がないんじゃがな。」


「まぁ、こっちにも色々と理由は有るんだよ! ヘタレなのは間違い無いけどさ。」


「なら、あたいの時みたいに、抱きしめてささやいたら良いじゃろうに。」


「こんなに客が大勢居る中で出来るか~!!」


「あたいだったら一向に構わないぞ? ほれ、どうじゃ?」


ビアンカさんが両手を広げて誘っている。

先ほどと違って、硬い鎧は無い、魅力的なお誘いでは有るのだが…


「お断りします。」


「なんじゃ、つまらんの。」


そんな公開プレイを見せられるほどの度胸はありませんが、何か?

そんなこんなで、ビアンカさんとの会話をしつつ、食事を楽しむのだった。

ナンシーちゃんの件は、次回と言うことにしておこう。


食事を終え、部屋に戻ってきた俺は、明日の講習に遅れないためにも、早めに寝ることにする。

おやすみなさい…ぐぅ。


ナンシー「ハルさん、何だったんだろう?」

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