伯爵様
師匠の所に着いたのでさっそく入ることにする。
バンッ!
「ワタシハーソウゾウシンサマノーシンコウダンタイデース。
アナタハー、カミヲー、シンジマスカ?」
「もちろん信じておるぞ?」
「私も信じておるのぉ~」
「じゃ! そういうことで!」
そこに居たのは、高級そうな服を来た中年の男性と、師匠だ。
俺は、踵を返し、逃げることにする。
「これ、お待ち!」
逃げられなかった…
「ロッテ殿、この青年は?」
「こんなんだけど、私の弟子だ、実力はまだまだじゃが、将来性は有ると思うぞ?」
「ほぅ?」
うわっ、めっちゃ見られてる。
一応、俺も挨拶しておいた方が良いのだろうな。
「私、ロッテ師匠の弟子のハルと申します。
まだまだ若輩者で御座いますが、お見知りおきを。」
「そうか、それならば、私も名乗らんとな。
私は、アサマ=デ=ガンバルだ、一応ガンバル伯爵家の当主になる。」
やべー見た通りの貴族様だったか。
「アサマ殿は、私のお得意様でな、こうして定期的に買いに来ているって訳じゃ。」
「は、はぁ、で、師匠、俺は何で呼び止められたんだ?」
「何、単なる顔つなぎじゃよ、それに、場合によっては、ハルに委託するのも良い時期かとも思ったしな。」
「この青年も、作れるのか。」
「さっき言ったじゃろう? 私の弟子じゃと。
レベルが低いから、まだ作れん薬も有るが、作れる薬に関しては十分な実力は持ってると思っとる。
それに私のレシピも渡している、レベルが上がれば作れる薬も増えて行くだろうよ。
実際、この前、お主に渡した薬は、ハルが作ったものじゃぞ? 効果は違ったかの?」
「いや、問題なかったな、そうか、君が作ったのか。」
「え? いや、なんの話だ? ポーションの話か?」
「私が良く作っている薬は何じゃったかの?」
「あー、アレね、確かに作ったわ、作れるようにはなったけど、俺、冒険者だぞ?
いつ街を出て行くかも分からんし、ここにはたまにしか来ないし、専門に作るほどの時間的余裕も無いぞ?」
「何、冒険者なら、指名依頼って手が有るし、それなら他の街に居たとしてもギルドを通せば良いだけの話だ、何処に居ても問題は無い。
それより、私も、随分年を取った、いつくたばってもおかしくない、その時は、後はハルに任せるよ。」
「何悲しくなるようなこと言ってるんだよ、俺にはまだまだ師匠が必要なんだから、勝手にくたばる何て言わないでくれよ。
それに、若返りの薬を開発するんじゃなかったのか?」
「そんな薬は出来んと言ったハズじゃぞ?」
「くっ…なら、俺がいつか作ってやる、だからそれまで生きていろよ!」
「くっくっくっ、はなたれ小僧が、よう言ったわ、なら楽しみにしとるぞ?」
ずっといきさつを見ていたアサマ伯爵様だったが、話を割って入ってきた。
「ロッテ殿、感動の話の途中ですまんが、私もそろそろ時間でな、すまんが、物を手に入れて戻りたいのだが。」
「そいつは悪いことをしたのぉ、ほれ、こいつがそうじゃ、持って行くが良い。」
「確かに、では、これが報酬だ、次も頼む。」
「わかった、また来るが良い。」
アサマ伯爵様は帰って行った。
「さてと、客も帰ったことだし、さっそくハルに薬でも作ってもらおうかの。
そのためにも、レベルを上げないといかんな、どれ…」
「さーってと、俺もそろそろ帰るとする…」
「逃げられると思っておるのかの?」
「ハイ…」
俺は必死に薬を作り続けるのであった。
・・・・
「お、終わった~」
「ご苦労様、飴ちゃん要るか?」
「最近、コレが楽しみの一つになってる気がするな、あー美味し。」
「ハルよ、随分調合が上手になってるじゃないか、レベルは幾つになったんじゃ?」
「ん? 確かレベル5だったかな?」
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名前:ハル
年齢:20
状態:普通
LV:3
HP:18/18
MP:40/40
STR:9
VIT:5
AGI:6
INT:20
DEX:25
LUK:3
スキル:投擲Lv4、言語理解、剣術Lv1、激おこぷんぷんLv5、魔力操作Lv5、生活魔法Lv5、鑑定Lv3、隠密Lv4、解体Lv4、調合Lv6(new)、索敵Lv4、直感Lv1、アイテムボックス、恐怖耐性Lv1
称号:命100、ケモナーLv2、暗黒変態紳士、薬剤師、ショーボン創造神の加護、中二病
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「あれ? 6に上がってる。」
「やっぱりの、5じゃったら終わらん量じゃったからの。」
「やっぱりって、あれ終わらん量だったのかよ、随分多いとは思ってはいたが…
必死に作っていたせいか、レベルが上がったことに気が付かなかったよ。」
「それにしても、調合のレベルが上がるのが早いの、やっぱり創造神の加護の影響が有るからじゃろうか?
まぁ、普通の調合師の10倍以上の量を作らせているのも有るがの、イーッヒッヒッヒッー!」
そんなにこき使っていたのか…
まぁ、こっちとしてもレベルが上がったし、文句も無い…無いよな?
「まあいいや、俺はそろそろ帰るぞ。」
「また来るがいい。」
「ああ、またな。」
俺は師匠の店を後にした。
辺りはすっかりと真っ暗になっている。
「さて、帰るか。」
・・・・
宿に到着した、先に氷を作り、食堂へ向かう。
時間が遅いせいか、満員で酔っ払いだらけだ…ん?
真ん中のテーブルが何か騒がしいな…って、あれはビアンカさんと、常連の人だ、何をやってるんだ?
「くそっ、負けてたまるか…うっぷ…」
「あたいに勝負なんか、10年早いんじゃよ、どうだ? 降参か?」
「ま、まだだ、ナンシーちゃん、2杯追加だ。」
「まだ飲むんですか? もう限界だと思うんですけど?
まぁ、こっちは商売だから、注文するなら持ってきますけれど…」
どうやら飲み勝負をしているみたいだ。
周りで見物している人に聞いてみることにした。
「な、なぁ、これってどういう状況なんだ?」
「ん? ああ、あの男が、一番ここのエールが飲めると自慢していた所に、あのお嬢ちゃんが勝負を挑んだのが切っ掛けだな。
で、勝った方が奢るってことになって、それからは、あんな感じだな。」
ビアンカさん、何やってるんだよ。
「ちなみに何杯目なんですか?」
「12杯目かな? さっき頼んだのが13杯目だな。」
「ある意味、2人とも凄えな。」
「全くだ、お、追加が来たみたいだぞ。」
ナンシーちゃんが、エールを持ってきたみたいだ。
「はい、追加のエールです。
後、マスターが持って行けって、はい、ど~ぞ。」
ナンシーちゃんが、持ってきた桶を置いた。
そうだよな、まき散らされると掃除やら色々大変だし、納得だ。
「いくぞ! 乾杯~!」
ごくごくごく…
「うっ…¢£%#&□△◆■!?」
(しばらくお待ちください)
「どうやら、あたいの勝ちみたいだな。」
「・・・・」
返事がない、ただのしかばねのようだ…って、そうじゃない!
急性アルコール中毒とかって大丈夫なのか?
異世界だから無いのかもしれないが、万が一も考えられる。
ビアンカさんが関わっている人が死ぬのも嫌だし、対応するか。
「ナンシーちゃん、毛布持ってきて。」
「ハルさん!? は、はい、待っててください!」
ナンシーちゃんが毛布を持ってくる間に、この男の対応をしておくことにする。
専門家じゃないから詳しくは無いんだけどな、とりあえず胃に残っていた物は全部吐いたみたいだ。
意識が無いから水が飲めないのは仕方が無いとして、呼吸は安定しているので問題なさそうだ、いびきもしていない。
ズボンの紐をほどいて緩めてから、横にして追加で吐いた時に喉に詰まらせないようにしておく。
「毛布を持ってきました。」
「ありがとう。」
毛布を男に掛けて、低体温症を防いでと、最低限の対応はこれで終わりだ。
本来なら、点滴して、カテーテルを入れて、アルコールを抜くんだろうけど、この世界にそんな物は無いしな。
今の所落ち着いているみたいだし、大丈夫だろう。
「とりあえず、様子見だな。」
「ハルさん、お疲れ様です。」
「ナンシーちゃん、毛布ありがとうな。
こういうことって、結構有るのか?」
「えっと、酔っぱらって酔いつぶれる人や、厠で吐く人は居ますけれど、吐いて意識が無くなった人は無かったです。」
「そうか、この症状って、俺の国では、急性アルコール中毒って言って、最悪死ぬ場合が有るんだ、ここの人たちも同じかどうかは分からない。
でも、見た感じ、おそらく大丈夫だと思うんだけど、少し様子を見ていて欲しい、もし起きることが有ったら水を飲ませてやってくれ。」
「わ、わかりました。」
で、もう一人の問題児は…っと。
かなり酔っぱらってはいるが、酔いつぶれるほどではないみたいだ、さすがはドワーフと言った所か、だけど…
「ビアンカさん、何やっているんですか?」
「おう、ハルじゃないか、へへ~ん、今、飲み比べで勝った所じゃぞ、凄いじゃろう!」
「全然凄くありません、勝ったからって何なんですか? もし負けていたらどうするんですか?」
「負けたら、飲み代払って終わりじゃ。」
「そうでしょうか? もし、酔いつぶれて意識を失ったことを良いことに、部屋に連れ込まれてイタズラされていた可能性だって有ったかもしれないんですよ?」
「そ、それは…い、いや、あたいが人間に酒で負ける訳が無いのじゃ。」
「相手がズルをしていたら?」
「うっ…ず、ズルなんか出来る訳が。」
「出来ますよ?」
「う、嘘じゃ!」
「方法は教えませんが、出来ます。
やったら、俺が確実に勝てますよ? だって飲まないんだから。
ビアンカさんが酒に強いと言っても、限度は有りますよね?」
「そ、それはそうじゃが…」
「で、俺が何を言いたいかってことは、もし、ビアンカさんが負けて、部屋に連れ込まれて、イタズラされたとします。
それを知った時の俺の気持ちってどうなんでしょうかね? もしかしたらビアンカさんは殺される可能性だって有ったかもしれないんですよ?」
「あっ…」
「それに、前に言いましたよね? 人にとって酒は、ほどほどなら良いけど、飲み過ぎると体を壊すって。
そこの人だって、もしかすると死ぬかもしれないんですよ?」
「そうじゃった、ど、どうすれば…」
「俺も専門家じゃないので分かりません、ただ、今の所大丈夫そうですが、しばらく様子見しないといけませんけどね。」
「そうか、良かったのじゃ。」
「別に酒を飲むなとは言いませんが、そんな勝負みたいな飲み方はしないで下さい。
だいたい、酒に対しても失礼です。酒は楽しく、美味しく頂くのが礼儀です。
許容範囲内で飲んでくださいね。良いですね?」
「わ、わかったのじゃ。」
「それだけですか?」
「し、心配かけてすまなかった、ご、ごめんなさいなのじゃ~!」
「よしよし、この話はこれで終わりな。」
「うええぇぇぇ~~~~ん!」
これって、はたから見ると、小さい子をイジメて泣かせているとしか見えなそうだ、仕方がない、この場を離れるとするか。
「ナンシーちゃん、ごめん、後、任せても良いか?」
「仕方ないですね~、この人は目が覚めたら水を飲ませれば良いんですよね?」
「ああ、それで頼む。」
「分かりました、行ってらっしゃい。」
「ゴメン。」
ビアンカさんを連れて、食堂を出ることにした。
「よ、兄ちゃん、カッコ良かったぞ!」
「俺も酒はほどほどにするわ」
「私も、今日はこれで終わりにしよ~っと。」
「ちっ、俺のビアンカさんに手を出しやがって、ク〇野郎が!」
ちょっと、最後の人!
もし、アイツが相手だったら、卑怯な手を使われたんじゃなかろうか…危なかったかもしれない…
何とか部屋に戻って来れたが、ビアンカさんも一緒つーか、袖を摘んでグシグシと泣いている。
どーしよう、これ。
「ビアンカさん? そろそろ放して頂けると助かるのですが…」
ビアンカさんがイヤイヤしている、そんな~
でも、一応泣き止んではくれたみたいだ。
「ハル…あのな、今夜は一緒に寝てくれないか?」
「はぁ? いきなり何を。」
「さっきのハルの話を聞いて、もし知らない男にイタズラされていたらと考えたら、一人で寝るのが怖くなってしまったのじゃ…
ハルと一緒なら、きっと怖くないのじゃ。」
「ちょっとまて、俺がイタズラするって可能性だって有んじゃねーのか?」
「ハルなら良いのじゃ、それに恋人なんじゃろ?
ハルは私を助けてくれた、真剣に怒ってもくれた、大人としても見てくれた、あたいの心の中はハルで一杯なのじゃ。
他の男なんかは絶対嫌なのじゃ、だから気にすることは無いのじゃ。」
据え膳食わぬは男の恥って言うが、俺の心の準備は全く出来ていない、童〇舐めるな! つーかさっきから心臓がバックンバックン言ってる。
でも、今のビアンカさんを、一人で部屋に帰すのもなぁ…
「い、一緒に寝るだけだかんな?」
「ありがとうなのじゃ。」
「一応帰ってきてから、着替えて無いし、体も拭いてないから、向こうを向いてくれると助かる。」
「わ、わかったのじゃ。」
急いで体を拭いて、着替えを行う。
「もう、いいぞ。」
ビアンカさんがこっちを向いた、何故か顔が真っ赤である。
「どうした?」
「あ、あたいは、男の人とこういった経験が無いんじゃ、緊張しているだけじゃ。」
「そ、そうか、それで、ビアンカさんは、着替えとかはどうするんだ?」
「あたいは、夕食前に着替えと、湯あみは済ませている、このままでも大丈夫じゃ。」
「そっか、じゃ、じゃあ寝るか。」
「う、うむ。」
俺がまずベットに横になるとビアンカさんが入ってきた。
「し、失礼しますのじゃ…」
「お、おう。」
ビアンカさんが、背中に引っ付く感じで寄り添ってきた。
「暖かいのじゃ…」
俺は今、背中に対し全ての神経を集中している。
胸の感触は残念ながら無いが、女の子特有のやわらかさと、若干酒の臭いも含まれているが、甘いにおいが鼻腔をくすぐっている。
ムクムクと、俺の息子が急速に成長を続けている、俺はロ〇コンじゃなかったんだが、くっ、これが若さと言う名の過ちか…
つーかビアンカさんの見た目はともかく、大人の女性であると理解してからは、子供としては、見れなくなってんだよね。
このままだとヤバイ、バレるのも有るが、理性が持たなくなる可能性もある、収まれ、収まるんだ~
「スー…スー…」
すると、後ろから静かな寝息が聞こえてきた、ビアンカさんは、どうやら寝たみたいだ。
た、助かった…のか? 正直残念な気持ちも無くも無いが、これで良いんだろうと思う。
緊張から解放されえて安心したためか、眠くなってきた。
ビアンカさんも寝ているので、俺も寝ることにする。
おやすみなさい…ぐぅ…
「…ヘタレ…」
夢の中で、何か言われたような、言われてないような、心地よい声がきこえたような気がする…
お酒をアイテムボックスにしまうんですね。わかります。