今日のナタリーさん 54
私はナタリー
冒険者ギルドの受付嬢である。
朝、ナンシーさんがギルドにやってきました。
前も、このパターンが有りましたね、もしかすると、お誘いでしょうか?
「ナタリーさん、今日の夜、絶対来て欲しいのだけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ、飲み会でしょうか?」
「そうね、飲むのも良いかも、きっとお祝いになると思うしね。
アイリさんにも伝えて欲しいんだけど、良いかな?」
「多分、大丈夫だと思う。」
「今日は絶対来てと言ってね。」
「あ、はい、何か有ったのですか?」
ナンシーちゃんがむふ~っていい笑顔です。
「その時のお楽しみってことで。」
「わ、わかりました。後のお楽しみにしておきます。
そうだ! 忘れるところでした。
ナンシーさん、大変です! 恐らくですが、ライバルが増えたかもしれません!」
「ん? それってビアンカさんのこと? ドワーフの。」
「そうです、その人です!」
「…大丈夫!大丈夫!
あ、そうそう、そのビアンカさんにも参加するように言っておいてね~
じゃあ、7の時間に居酒屋『悪の秘密結社』に集合ってことで、よろしく~」
「あ、ナンシーさん、ちょっと~!!」
ナンシーさんの態度は何か隠している感じでした。
おそらく、ビアンカさんも参加するみたいですし、それに関係が有るっぽいですが、行ってしまったので確認できませんでした。
おそらく夜になると分かることなんだと思うのですが、なんかもやもやします。
・・・・
お昼頃にアイリがやってきた、掲示板を確認して、特に気になる依頼が無かったのか、そのままギルドを後に…って駄目です!
「アイリ~、ちょっと待って!」
「ん? ナタリーじゃん、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、何で今日に限って、声を掛けないのかなぁ…いいけどさ、アイリって、今晩空いてる?」
「何々? また集まるの?」
「うん、ナンシーさんが絶対って言ったけど、理由までは教えてくれなかった。」
「ふ~ん、良いよ~、この前と同じ所で良いのかな?」
「うん、そこに7の時間にだって。」
「了解~、じゃあ時間になったら、そこに行くね~」
ひらひらと手を振って、アイリはギルドを後にした。
ふぅ、あやうく伝えられない所だった、気にしていて良かった…ってビアンカさんのことを言いそびれてしまった。
まぁ、ナンシーさんも、その人の件での話もありそうだし、その時で良いかな。
・・・・
夕刻のピークが過ぎた辺りで彼がやってきた。
今日もビアンカさんと一緒みたいだ、私の列に並んだのを確認したので、必死で対応を行う。
ふと、ナイチ様が彼に声を掛けているのを見た、相変わらず彼と、ナイチ様が仲良さげに話しています。
いつもと違うのは、ビアンカさんに対して何か言って、それに対して照れているみたいだ。
さすがは貴族様です、女性の扱いが上手なんでしょうね。
そうこうしている内に、彼の順番になりました、頑張ります。
挨拶を済ませ、丁度良かったので、ビアンカさんにお話しが有ることを伝えた。
まずは討伐の処理を行います。
凄いです! 2人だけなのに、オークを4匹も討伐しています。
アイリみたいに魔法でってなら分からなくも無いですが、彼らは違います。
ビアンカさんのレベルは知りませんが、彼はレベル3です。
驚きしかありませんが、きっと彼なら、パターン化で安全に狩っているのでしょう。
さすがは彼です。
彼らは討伐の報酬を見て喜んでいます。
彼がビアンカさんを、ビアンカさんが彼を仲良く褒め合っています。
何だか仲間外れな感じがして、いえ実際一緒に狩りを行っていないので仲間外れですが、力になれない自分が悔しくも有り、ツマラナイです。
つい、声を掛けてしまいました。
前回もそうでしたが、今回の依頼の時点で、オークが倒せるのが分かったため、特例に則って手続きをしくては行けません。
流石に銀クラスにするには、ギルドの貢献度が無いため無理ですが、初心者扱いするのは、ギルドから見ても損失です。
そのために声を掛けさせて頂きました。
ビアンカさんのランクアップの処理を行い、すべての手続きを終了した後に、ビアンカさんに声を掛け、手招きをします。
「なんじゃ?」
「今日は、みんなで集まって飲むのですが、ビアンカさんの御話しもあるみたいですので、参加するように言われているのですが、大丈夫でしょうか?」
「もちろん行くに決まってるのじゃ!」
「では、7の時間に居酒屋『悪の秘密結社』で集合です。
では、宜しくお願いします。」
「分かったのじゃ。」
話が終わったので、彼とビアンカさんは帰って行きました。
ふぅ、アイリとビアンカさんの2人に伝えることが出来、参加もしてくれるみたいなので、良かったです。
後は私が遅れないように、お仕事頑張るとしましょう。
・・・・
仕事が終わったので、お店に向かう。
少し早めに着いたが、すでにアイリとナンシーさんは待っていた。
「は~い、ナタリーお疲れ~」
「ナタリーさん、お疲れ様でした。
ビアンカさんには伝えられましたか?」
「はい、そしたら来るって言ってました。」
「そう、良かった。」
「ねーねー、そのビアンカって誰?」
「最近、冒険者になった人なんだけど、ハルさんとオークを狩ってるみたいなこと以外は、良く知らないんですよね。」
「ふふふっ、そのビアンカさんについてのお話しが有るので、中に入ってからのお楽しみですよ~」
そんなことを話している内に、7の時間になりましたが、ビアンカさんはまだ来ていま…って来ました。
「すまんの、迷ってしまって少し遅れてしまった。」
「いえいえ~、大丈夫ですよ。
揃ったみたいなので、入りましょうか?」
「え? この子? 子供じゃなくて?」
「失礼な奴じゃのう、初見では仕方が無いがの。
あたいはビアンカで、ドワーフじゃ。」
「あ、ドワーフだったんだ、ふ~ん。」
「まぁまぁ、自己紹介は後からにして、ほら、入りましょ~」
ギイィィ~~
「キー!(いらっしゃいませ)
キキー!(お席に案内致します)」
店員に案内され、個室へと向かう。
「な、なぁ、この店大丈夫なのか?
物凄く怪しいぞ?」
「ここのお店は、これがコンセプトみたいなんですよ。
でも、部屋は個室になっていて、他の部屋に聞こえる心配も無いので、仲間内でお話しするにはもってこいの場所なんですよ。」
「なるほどの、内緒話には良いってことか。」
部屋に到着したので、注文をする。
「何を飲みますか~?」
「エールじゃ!」
「私はハッチミツ酒で。」
「あ、私もハッチミツ酒~」
「構成員よ、エールが1個、ハッチミツ酒を3個と、軽く摘めるものを持ってくるのだ! 行け!」
「キー!キキー!(ご注文受け溜まりました、少々お待ちください)」
「なんか凄い所じゃの。」
「お酒が来るまでに自己紹介でもしちゃいましょうか。
私は給仕をしているナンシーです。よろしく~」
「えっと、私は、ギルドの受付嬢をしている、ナタリーです。宜しくお願いします。」
「私はね~、ナタリーの幼馴染で、冒険者のアイリよ、宜しくね。」
「あたしは、さっきも言ったが、ドワーフでビアンカじゃ、宜しくの。」
自己紹介が済んだところで、お酒が運ばれてきた。
「キー(お待たせしました、ご注文の品です)」
「じゃあ、まずは乾杯しましょ~」
私達はグラスを受け取り、乾杯をする。
「これからの、私たちの幸せのために、乾杯~!」
「「「乾杯~!」」」
こくこく…美味しい。
「なんじゃこれは~! って普通のエールはこんなもんじゃったな。
最近、冷えたエールに慣れたせいか、不味く感じるの。」
「そうですね~、あそこのエールは私も美味しいと思います。」
「だけどさー、こっちはその御蔭で、仕事が大忙しなんだよね~」
「ホント、いつ行っても、あの宿の食堂って満員だよね~
だけど、あの冷えたエールって、多分、ハル君が原因じゃないのかな?」
「多分そうですね~、だって、ハルさんは、お酒を貯蔵している地下室に良く行きますから。」
「そうなんですか? でも、ハルさんは、生活魔法しか使えないって…
でも、ハルさんなら何か出来そうな気もします。うん。」
「ナタリーって妄信的な所が有るけど、事実だしね~
だいたい、私が使ってるブリザードの魔法とかって、ハル君に教えてもらったんだよ?」
「あたいは、ハルが魔法を使っている所を見た事無いのじゃが。」
「そうなんですか? それで4匹も狩ってくるなんて、さすがはハルさんです。」
「あたいが一緒に行動した結果からすると、ハルはスカウト能力しか使っとらんかったの。
もし、魔法を使ったらもっと簡単に狩れたんじゃろうな。」
「どうだろう? ハル君って生活魔法しか使えないからなぁ~
でも、その生活魔法で色々と出来ちゃうのが、ハル君の凄い所なんだよね~」
「ほぅ、今度狩りに行ったときにでも見せてもらおう。」
「ねーねー、ハル君の話をしているのも楽しくて良いんだけど、何か話が有ったから、集まったんじゃなかったの?」
「そうでした。すっかり忘れてました~」
「ビアンカさんも来ているのが、その話に係わってくるってのが分かるんですけれど。」
「えーっとですね、ズバリ言っちゃいますけれど、私達全員が、ハルさんの彼女になることが出来ました~!!」
「「本当ですか!?」」
「本当です、キッカケはビアンカさんの御蔭なのですが、ビアンカさん、あの話をしても良いでしょうか?」
「もちろん、かまわないのじゃ。」
「では、始まりは昨日の夜のことなんですが…」
ナンシーさんの話を聞いて、色々と納得出来るところが有りました、彼は言われてみると、そんな雰囲気をもっていました。
煮え切らない(失礼)所も有りましたが、そういう理由だったんですね。
まさか、国が違うことによる考え方が違かったとは思いもしませんでした。
以前、彼やマスターさんから聞いた話から、色々と疑問に思ってはいましたが、ようやく納得することが出来ました。
「でもさ、キチンとハル君から言って欲しいよね~」
「わ、私も言って欲しいです!」
「そうじゃの、努力するとしか言ってなかったし、キチンと言ってもらいたいの。」
「アイリ…」
「ナタリーそうだね。」
私達はお互いに頷きあって、彼に好きと言ってもらい、キチンと彼女にしてもらうう協定を結ぶことにしました。
「私も、了解はしてもらったけど、言われたわけじゃないからな~
今度、言ってもらおうっと♪」
ナンシーさんもやる気十分みたいです。
それからは、いかに彼を攻略するかで、楽しく時間が過ぎて行くのでした。
・・・・
「それじゃお疲れ様~」
「お疲れ様でした。」
「ナタリー、また今度、ハル君に予定聞いておいてよ、狩りに行こうよ。」
「あたいも行っても良いか?」
「いいよ~、ビアンカも一緒に行こ~」
「私が足を引っ張ってしまうので、申し訳ありませんが…」
「構わないのじゃ、将来、ハルと一緒に色んな所に行けるように、鍛えてやるぞ。」
「お手柔らかにお願いします。」
そうだね、彼と一緒に冒険したいんだったら、今のままの私じゃ駄目だ、もっと頑張らないと。
「やっぱり、私も冒険者に成るべきなのかなぁ…悩む…」
「冒険者は、向き不向きもありますから、無理をする必要は無いと思いますよ?
出来ることで、支えることも必要と思いますし。」
「そうだよね、うん、私は私で頑張ろう。」
私達は解散し、各自の家に帰って行った。
また明日は仕事だが、冒険者として本気で考えても良いのかもしれない。
でも、今はまだ受付嬢だ、ギルドの顔である、明日もまた頑張ろう。
ナタリーさん、おめでとうございます。