ランクアップ
解体所でオークの手続きを済ませてからギルドに到向かう。
到着したギルドは、ピーク時間は過ぎていたが、まだまだ混雑している状態だが、さっさと並ぶことにする。
「やっぱり、ここに並ぶのか、律儀じゃの。」
「そうか? でも、そう言う物じゃね?」
「まぁ、そうじゃな。」
そんなことを話しながら待っていると、横から声を掛けられた。
「そこに居るのは、我が強敵ではないか。」
「あ、ナイチ様ちーっす。」
「そちらに居られる、麗しきご婦人は何方かな?」
「は、ハルよ、麗しきご婦人って、あたいのことか?
なかなか見る目が有る人じゃな。」
「えっと、この人は、ドワーフのビアンカさん。
で、こちらが、ナイチ=チ=スキー様、スキー准男爵家のご子息様だ。」
「ナイチ=チ=スキーです。貴方には気軽にナイチと呼んでいただければ、天にも昇る喜びです。」
「あ、あたいは、ビアンカだ、き、貴族様を呼び捨てなんて…せめてナイチ様と呼ぼせて下さい。」
「これから、何かと縁が有るかと思われます、どうぞ宜しくお願い申し上げます。」
「こっ、こちらこそ、宜しくたのんます。」
「それでは、ビアンカ嬢、またお会いするのを楽しみにしております。」
「あ、ああ、ありがとうなのじゃ。」
「では…」
そう言ってナイチ様が去って行った、ある意味、危険な人に目を付けられてしまったな。
「ハル、ハル、あたい、あんなこと言われたの初めてなのじゃ! 嬉しいのじゃ!」
「そうか、良かったな、そんなに嬉しいのだったら、ナイチ様に鞍替えでもするのか?」
「いや、それはありえんのじゃ、あたいはハルが良いと思ってる。
それに、カンなのじゃが、有奴は危険な気がする。」
「そっか、ありがとう…
確かに、ナイチ様は、ある意味ちょっと危険かもしれないな、害が有るかどうかは分からんが。」
下手すると、ビアンカ人形が生産されるのだろうか?
まだ実感はしてないが、自分の彼女となった女性が、他の男の性の対象になるのは嫌な気分になる。
今度会ったときに、それとなく注意しておくことにしよう。
そうこうしている内に、俺達の順番になった。
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、こんばんは。
討伐の処理をお願いします。」
「ハルさん、こんばんは。
今日もビアンカさんと一緒だったんですね。
丁度良かった、ビアンカさんには少し話がありますので、後で時間宜しいでしょうか?」
「そうか、分かったのじゃ。」
俺達は、カードとゴブリンの鼻、オークの証明書を提示した。
「では、処理しちゃいますね。
えーっと、ゴブリンが24匹、オークが4匹で解体済みなので、金貨8枚、銀貨8枚、銅貨8枚になります。
それとカードの方もお返しします。」
「凄いのじゃ! 1日でここまで稼げるとは…」
「ビアンカさん、様様だな。」
「何を言う、ハルが居なけりゃ、こんなに稼げなかったぞ?」
「じゃあ、お互いが頑張ってことで。」
「そうじゃな。」
「すいませんが、お話ししても良いでしょうか?」
あ、ナタリーさんが脹れている、可愛いな。
「すいません、どうぞ。」
「ビアンカさんは、オークを問題なく倒せることが分かりましたので、特例に従って銅クラスへのランクアップの条件を満たしました。
手続きを致しますので、少々お待ちください。」
「分かったのじゃ。」
ナタリーさんが奥の部屋に行ってしまった。
「オークを倒せるとランクアップするんだ、すげー!
俺が銅クラスに上がるのに凄く苦労したからな、羨ましい。」
「ふふん、どうじゃ。」
「まぁ、同じクラスの仲間として、これからも宜しくな。」
「宜しくなのじゃ。」
ナタリーさんが戻ってきた。
「こちらが、ビアンカさんの、新しいカードになります。
おめでとうございます、今日からビアンカさんは、銅ランクとなります。」
「ありがとうなのじゃ。」
「これからは下級冒険者として頑張ってくださいね。
でも、ハルさんと一緒ならすぐ銀級に上がりそうですけどね。」
「そうじゃな、ハルと一緒ならすぐじゃ、だから頑張るのじゃ。」
「それでは、ナタリーが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしています。」
窓口の対応が終わった所で、ナタリーさんが声を掛けてきた。
「ビアンカさん、ちょっとすいません。
ナタリーさんが、ちょいちょいと手招きをしている。
「なんじゃ?」
ナタリーさんと、ビアンカさんが内緒話をしている。
「今日…で……ですが、ビア…の………うか?」
「もちろん行くに決まってるのじゃ!」
「では……に……で………です。
では、宜しくお願いします。」
「分かったのじゃ。」
どうやら話は終わったらしい、時々、二人ともこっちを見ていたのが気になったが、内緒話を聞くのは野暮だし、知らないふりをしておく。
「ハルよ、帰るぞ。」
「おう。」
ナタリーさんは次の冒険者の対応に入ってしまった、忙しそうだな。
俺達はギルドを後にし、帰ることにした。
宿に到着し、PTを解散することにする
「じゃあ、あたいは部屋に戻る、また明日なのじゃ。」
「おう、またな。」
ビアンカさんと別れた俺は、氷を作り、飯を食うことにした。
ホールではマスターが客の相手をしている。
「あれ? 今日はナンシーちゃん居ないのか?」
「おう、帰ったか、今日はナンシーは休みだ。」
「そうか、忙しそうだな、手伝ってやろうか?」
「まぁ、客に頼むのもアレなんだが、たまには良いだろう。
悪いが、頼む。」
「おうよ。」
俺はウェイターとして手伝うことにしたら、さっそく常連の客から声を掛けられた。
「なんだ、金が無くて手伝いでもしてんのか?」
「ナンシーちゃんが居ないから代理の手伝いだ、金には困ってはいないぞ?」
「そうかそうか、若いうちは苦労した方が良いぞ?
エール2つと、からあげとサラダを頼む。」
「話を聞けよって、はいよ、マスター! エール2つとから揚げ1、サラダ1。」
「おう。」
「坊主、こっちはエールと牛ステーキ定食だ。」
「はいよ、マスター牛ステーキ定食とエール追加。」
「おう、エール2つ、サラダだ持って行ってくれ。」
「おまたせしました、エールとサラダです。からあげは少々お待ちください。」
「来た来た、まずは乾杯だ、カンパーイ!」
「兄ちゃん、こっちもエール3とウィンナーセット2、サラダ2だ。」
「はいよ、マスター、エール3、ウィンナーセット2、サラダ2追加。」
「おう、からあげ上がり、エール1だ。」
・・・・
「終わった~」
「お疲れ、エールでも飲むか?」
「いや、いい、飯食うから出してくれるか?」
「おう、待ってろ。」
「しかし、ナンシーちゃんは、毎日こんなことやってるんだよな、凄いよな。」
「ああ、物凄く助かっているぞ、ほら飯だ。」
「おう、来た来た。
でも、前はマスター1人だったんだろ?
よく対応出来たよな。」
「前はそれほど忙しくは無かったぞ?
夜は10人も来れば良い方だったな。
こんなに忙しくなったのは、冷たいエールが原因だ。」
「もしかして、悪いことしちゃったか?」
「何を言ってる、料理人は料理を作ってこそだ、御蔭で毎日楽しいぞ?」
「そっか、それなら良かった。」
「それにしても、坊主が来てからと言うもの、色々と有ったな…」
「何、黄昏ているんだよ、爺くさいな。」
「これでも、色々と感謝してるって話だよ。」
「へーへー、そうでっか。」
夕食を食べた俺は部屋に戻ることにする。
戻ってきてから気が付いたが、ビアンカさんは夕食を食べに来なかったな、きっと疲れて寝てしまったんだろう。
さて、特にやることも無いし、俺もそれなりに疲れたし、寝ることにするか。
おやすみなさい…ぐぅ。
ナイチ様は胸が無ければ子供でも対象なのだろうか…