オークとの戦闘は
それから4グループのゴブリンと遭遇して、あっという間に倒してしまった。
圧倒的な戦闘をみて、俺の狩りってなんなんだろうと落ち込みもしたが、何とか頑張った。
今までの成果は、ビアンカさんが10匹、俺が5匹だ。
多分多少こちらに譲ってくれたんだろうな。
それでも近づいて切りつけるのに躊躇してしまったため、この結果である。
こうなるんだったら、短槍でも買っておくんだったと後悔したが、後の祭りである。
「それにしても、よくもまぁ、ぽんぽんと見つけられるもんじゃな、昨日とは全然効率が違うぞ?」
「まぁ、俺のスタイルが索敵、隠密、強襲だしな、いかに見つからずに敵を倒すことをしていたから、索敵が得意になった。」
「なるほどの、あたいも索敵は覚えたいと思ってはいるんじゃが、どうしても覚えられなくてな、どうも相性が悪いみたいなんじゃ。」
「う~ん、俺も攻撃系のスキルが覚えられないから、それと似たようなもんか、でもレベル1なら誰でも取れるらしいし、持っていても良いかもな、なんなら教えるぞ?」
「教えて欲しいのじゃ。」
「じゃあ、自分を中心に、周りの音とか気配を感じる様に意識を広げてみると良いぞ?
今は、俺が居るし、目を瞑るともっと感じやすくなるし、やってみると良い。」
「ほう、どれどれ。」
ビアンカさんが目を瞑り、集中している。
虫の声、鳥の鳴き声、風が草を撫でる音が聞える。
お、遠くでゴブリンらしい反応が有ったが、こちらに来る感じじゃないので、放っておく。
今は、ビアンカさんのスキル習得を優先させたい。
「俺が、ビアンカさんの周りを動くので、感じてみてくれ、最初は音を出しながら動くぞ。」
俺は足音を立てながら、移動してみる。
たまに音を立てずに移動してから、また音を立てて移動するを繰り返す。
「どうだ? 何か掴めそうか?」
「難しいの、全然分からん。」
「じゃあ、今度は音を立てずに移動して、ビアンカさんにタッチするぞ、タッチされたら攻撃されたと思えば、より必死になって集中するだろうしな。」
「よし、来い!」
俺は音を立てずに移動し、肩を叩いて、また離れるを繰り返す。
時には頭、足、腕と場所を変えて叩く。
しばらく繰り返していると、何となく反応されているんじゃないのかなって感覚が有った。
「もしかして感覚掴めたか?」
「もう少しで掴めそうな感じなんじゃが…」
なんとなくもう少しってのは分かるんだが、決定的なのが足りないんだろうな。
そうだ! 悪戯心が沸いたので実行してみることにする。
俺はビアンカさんの後ろに回り、より集中して音を立てない様に近づいていく、そしてビアンカさんのお尻に向けて手を伸ばす。
気分は痴漢だ、ここは日本じゃない、きっと捕まることも無いだろう。
そ~っと手を伸ばす…あと少し…
「そこだ!!」
ガシッ!
ビアンカさんが俺の手首を捕まえた。
「ふっふ~、どうじゃ!」
「お、お見事。」
チッ…俺は心の中で舌打ちをした。
「よ、よく分かりましたね。」
「いやな、ぞわぞわ~って感覚が有って、これかな? と思ったら捕まえることが出来たのじゃ。
ほら、見事にスキルを習得できたみだいじゃぞ!」
「それは、おめでとうございます。」
どうやら下心が決定的になったみたいだ。
もっと早くに触っておくべきだった…くそっ!
「とりあえず、索敵は使えば使うほど、レベルが上がるみたいですので、頑張れ。」
「世話になったの。」
「気にすんな、じゃあ狩りの続きでもしようか。
実は、さっきゴブリンらしき反応が有ったんだが、ビアンカさんのスキル習得を優先させてもらった。
どうせ、こちらに来る気配も無かったしな。」
「そうなのか、全然気が付かなかったぞ?」
「まぁ、俺の索敵範囲がレベルが高いから広いだけだからな、レベルが上がれば分かるようになるぞ?」
「うむ、頑張るとしようぞ。」
俺達は引き続き、狩りを行うことにする。
すると、1匹の反応を見つけた。
「居た、1匹なのでオークだと思う。どうする?」
「もちろん狩るに決まってる。」
「分かった、先ほどの約束は忘れて無いよな?」
「うっ、わ、わかっとる。」
「じゃあ、着いて来てくれ。」
俺は風下から反応に向かって近づいていく、見つけた、オークだ。
「オークだな、それじゃどうやって倒すか。」
「1匹なら、あたいが防御して、ハルが後ろから倒すでいいんじゃないか?」
「この前の会った時のパターンか、それが確実だな、わかった、それで行くか。
俺は隠密で隠れるから、ビアンカさんは普通に戦っていてくれ。」
「了解じゃ。」
ビアンカさんが、音を立ててオークへと向かっていく。
俺は隠密をしつつ、オークの背後へと回る。
ビアンカさんとオークの戦闘が始まった、オークはビアンカさんに集中しているので、こちらには気が付いていない。
スリングショットに石をセットし、勢いを付けて発射する。
ドカッ!
見事に命中、動きが止まったので、すかさずビアンカさんが斧で切り掛かる。
胸を切り裂かれたオークは、そのまま倒れた。
「さすがじゃの、盾を構えて立ってるだけの簡単な仕事じゃったわい。」
「いやいや、ビアンカさんが、引き付けてくれている御蔭だからこその戦法だぞ?
正直、オーク相手でここまで楽とは思わんかったわ。」
「この調子なら、2匹でも余裕そうじゃの。」
「なら、もし出会った場合は、試してみますかね。
まあ、2匹なら、上手く対応すれば、逃げられるだろうしな。」
「そうなのか? なら安心じゃな。」
オークをアイテムボックスに収納し、次の獲物を探すことにする。
その後は、オークを3匹、ゴブリンが3グループに遭遇し、倒すことが出来た。
「いや~ここまで楽に狩れるとはのぉ、今日の酒は格別になりそうじゃ。」
「俺もここまでとは思わんかったよ、解体せにゃならんから、終わりで良いか?」
「そうじゃな、もう十分じゃ。」
「よし、森を出るぞ。」
俺達は森を出た。
「んじゃ、解体しちゃうぞ、4匹分だからそれなりに時間掛かるし、その辺に居るなら、狩りしてても良いぞ?」
「いや、解体をしっかりと覚えたいから、見てるぞ。」
「まあいいけど、参考になるかは知らんぞ?」
俺はアイテムボックスからオークを取り出し、解体していくのだった。
・・・・
「終わった~」
「お疲れじゃな、ほれ。」
ビアンカさんが水筒を渡してくれたので、水を飲む…ん? こいつは…
「水かと思ったら酒じゃねーか!!」
「あははははっ、どうじゃ、旨いじゃろう。」
「酔っぱらって動けなくなったらどうするんだよ!
しかも、よくよく考えれば間接キスじゃねーか!」
「あっ!」
ビアンカさんが忘れてたって顔をした後に、みるみる真っ赤になってしまった。
それを見た俺も、今更だけど恥ずかしくなってきた(汗)
「ま、まぁ、気を使ってくれたんだろうし、ありがとな。」
「い、いえ、こちらこそ…」
言葉遣いが変わってしまうほど、動揺しているみたいだ。
「そろそろ日も暮れたことだし、帰ろうぜ。」
「そ、そうじゃな。」
俺達はアルデの街に向かって帰ることにした。
やっぱりタンクが居ると狩りは楽っぽいです。