ビアンカさんと狩りに行くことになった
ピロリロリローン、ピロリロリン♪
「らっしゃいませー」
またかよ、そんなに俺を苦しめたいのか?
ん? あいつ等は悪の秘密結社の構成員! あいつら~って、アイツらが買い物しているのってビールじゃね?
しかもバラで買っている、ってーことは…
リュックは背負ってない、財布も持って無い、ポケットには500円が1枚、よし!
おビール様! 今、ハルがお迎えにお伺いします~!!
お酒コーナーはどこじゃああぁぁぁ~~~!!
在った! おビール様はっと…売り切れ? はぁ!?
いや、売っては居るよ? 缶パックのビールならな、でも、バラが無い。
だか、ここはバラ売りをしている、パックをばらして売っても問題ないハズだ。
「すいませ~ん、缶ビール、1本だけ買うって出来ませんか?」
「今、テンチョー居ないんで、俺じゃ決められないっす、さーせん。」
「大丈夫だって、セットよりバラの方が単価高くなるし、店長も喜ぶって。
それに、1本500円で良いし、お釣りは君にあげるからさ~」
「いえ、それ犯罪っすから、俺は良いっす!」
「ええ~い、この分らず屋が!」
すると外から声が聞こえてきた。
いや、歌か? 手拍子もあるし。
「キー♪ キー♪」
「キキキー♪」
あいつら、コンビニ前で酒盛り始めやがった。
ああ、ラ〇ー、ラ〇ー様、何故こんな試練を俺に与えるのでしょうか?
くそっ、旨そうに飲みやがって。
ガバッ!
「お前ら死にやがれ~!! ってあれ? また夢か…はぁ。」
やばい、そろそろ俺の精神が持たなくなってきている、怒る気力も沸かない…
いいかげんにこの地獄から解放されたい…
おはようございます…
とりあえず下に行こう、今日は先に氷を作ってしまおう。
地下に降りて氷を作る、ははっ、エール君、君は羨ましいな、今日も頑張りたまえよ
次に食堂へ向かう。
「マスター、飯。」
「お、おう。」
席に着き、朝食を待つことにする。
すると声をかけられた。
「おう、ハルじゃないか、朝飯か?」
「おはようございます。」
「なんじゃ、元気がないじゃないか。」
「ちょっとここの所、連続して夢見が悪くてな、ちょっと参ってる。」
「どんな夢なんじゃ?」
「大した夢じゃないから、気にしないでくれ、気づかいしてくれて悪いな。」
「そうか、言いたくなったら言うが良い。」
マスターが朝食を持ってきた。
「ほら、朝飯だ、食って元気だせ。」
「さんきゅー」
「マスター、あたいも朝食を頼む。」
「少々お待ちください。」
マスターはキッチンへ入って行った。
いつもぶっきらぼうなマスターが敬語を使うとは、変な感じだな。
まあいいや、今日の朝飯は、ホットサンドにサラダに、コーンスープだ。
パクリ…うん、旨い、なんかピリリと辛み成分が入っていて、前に食ったのと少し違うな。
「なぁ、ハルよ、今日のお主の予定は何じゃ?」
「特に考えてないなぁ、とりあえずギルド行って、面白そうな依頼が有れば受けて、無ければ森で狩りかな。」
「なら、あたいと森に行かねーか?」
「そうだなー、予定も無いし、いいぞ。」
「よし、決まりじゃ!」
「お待たせしました、朝食です。
ごゆっくりどうぞ。」
「来た来た、さっさと食べて、狩りに行くぞ。」
ビアンカさんがむしゃむしゃと食べ始めた。
「おお、ここの飯は旨いのぉ。」
「マスターの師匠が、俺の同郷だしな、当たり前だ。」
「なんじゃと!? なら、ハルの故郷は、こんなにも旨いものが溢れているのか?」
「そうだな、料理については変態的な国かもしれんな。」
「ほほぉ~、なら酒も旨いんじゃろうな…ってどうした?」
「酒、ビール…おビール様…はぁ…」
「ビール? 何かはよくわからんが、ハルが落ち込んでいる原因ってのは、そのビールってやつか。」
「ぶっちゃけるとそうだ、折角飲めると思った所で、飲めないってのが続いてな、もうテンションダダ下がりだ」
「そのビールってのは旨いのか?」
「昨日の、ビアンカさんの言葉からすると、俺の命の養分だな、飲み過ぎは駄目なのは同じだけどな。」
「ほほぅ~、そこまで言うのなら、ぜひとも飲んでみたいの。」
「今、マスターが探してくれているんだが、どうだろうな。」
「見つかったら、あたいにも分けてくれよ? 約束じゃぞ?」
「見つかったらな。」
「楽しみなのじゃ!
さて、食べ終わったことだし、行こうかの。」
「おう、俺はこのまま出れるぞ。」
「あたいは、ちょっと装備しなくちゃならない、外で待っててくれ。」
そーいや、重戦士の恰好だったっけな。
それなりに時間が掛かるかもしれないが、こればっかりは仕方ないな。
とりあえず宿の外で待つことにする。
・・・・
「待たせたの。」
「そーでもなかった。」
時間にして15分くらいだ。
「よくそんなに早い時間で装備できたな。」
「構造を知っているならば、それほど苦労はしないし、そんなもんだ。」
「俺、この鎧を着るだけでも5分ほどかかるんだが…」
「精進するこったな。」
「へいへい、じゃあ行くか。」
俺達は街の外までやってきた、森まではまだ距離が有るので、聞いてみる。
「なぁ、その盾とかってかなり大きいが、よく持てるよな。」
「そうでもないぞ? 持ってみるか?」
「ホントか? 軽いなら俺も持ってみても良いかもな。」
ビアンカさんから盾を受け取る…ガシャン!
俺はそのまま盾を落としてしまった。
「嘘つき! めちゃくちゃ重いじゃねーか!」
「ハルよ、お主のSTRってどのくらいあるんじゃ?」
「ん? 確か9だったかな?」
「ひ弱じゃの、それじゃこの盾は持てないわな。」
「くっ…言い返せないのが悔しい…」
「ちなみに、あたいは27だ、ハルの3倍じゃな。
この盾は、少なく見ても18は無いと持てないから、ハルには無理みたいじゃな。
すまんかった、そんなに力が無いとは思わんかった。」
「どーせ俺は非力だよ、けっ…」
「やさぐれてるのぉ、人には向き不向きってあるし、ハルにはハルの得意分野があるじゃろうに。」
「どーだか、結構いっぱいいっぱいだぞ?」
「オークを一人で狩れるヤツが、何を言ってるんだが…」
そんな話をしている内に、森に到着した。
「これから森に入ることになるんだが、ビアンカさんはオークが出たらどうする?」
「一人で倒すのは無理じゃが、2匹までなら耐えるだけなら問題ない、ハルが倒してくれるんじゃろ?」
「ふむ、3匹ならどうするか相談してから考えるとするか、よし、じゃあ2匹までなら倒す方向で。」
「了解じゃ、頼んだぞ?」
「おう、任せろ。」
俺達は森を進むことにする。
暫く進むと、反応が3つ、ゴブリンだろう。
「敵の反応を見つけた、数は3、ゴブリンかな? どうする?」
「ゴブリンなら苦労しないじゃろ、倒していこう。」
「了解、でも、最初は奇襲で行くぞ?」
「その辺はまかせる、あたいはハルに着いていくだけじゃ。」
風下から近付き、敵が見えるところまで来た、ゴブリンだ。
すると、ビアンカさんが盾を構えて飛び出した。
「え? マジ?」
こちらに気が付いたゴブリンが、ビアンカさんに向かって攻撃を仕掛けていく。
俺は、このまま近づいても大丈夫なのか? 正面切って戦ったことなんか無いぞ?
でも、このまま見ている訳にもいかない、隠密を発動して後ろから切りつけることにする。
ビアンカさんは防御に集中しているためか、結構余裕そうだが、のんびりするつもりもない。
一番左のゴブリンに近づき、後ろから首を切りつける。
「ギャー!」
残った2匹が、1匹が倒されたことにびっくりして、動きが止まった。
すかさず、ビアンカさんが真ん中のゴブリンを倒す。
右のゴブリンが再び攻撃しようとしたので、俺はそのまま後ろから倒す。
特に苦労も無く倒すことが出来た。
「ビアンカさん、急に飛び出したら、危ないじゃないですか。」
「何、ゴブリン程度の攻撃なら、何匹集まっても問題無いぞ?
あたいに攻撃が集中していたから、楽じゃったろ?
今回は、ハルの動きを知りたかったもの有ったから、防御に徹してみたが、倒そうと思えば、あたい一人でも全部倒せたぞ?」
確かに、鎧に棍棒が当たっていたが、物ともしていなかったな。
でも、俺的に勝手に動かれると、どうして良いのか分からなくなるから勘弁して欲しい。
「そうかもしれないけどさ…まあいいか、ゴブリンは任せるわ。
倒せるなら倒しちゃって良いぞ、俺はこっそり後ろからでしか倒せないから、余裕が有ったら倒すことにするわ。
でも、オーク相手に同じことするなら、PTは解消させてもうからな!」
「う、わ、分かったのじゃ、気を付けることにする。」
ゴブリンの討伐証明を取り、次の獲物を探すことにした。
ビアンカさんは意外と脳筋!?