ビアンカさんの戦闘
さて、森に着いたので早速、索敵と隠密を発動させ、森へと入って行く。
早速1匹の反応を見つけた、オークかな?
風向きは問題無しと、このまま近づくことにする。
そろそろ見える頃なので気を付けて進む…オークだ!
幸いなことに、向こうを向いてお食事中みたいだ、チャンス!
この前の失敗を踏まえて、石による投擲でやってみよう。
駄目だった場合は、前回と同じ方法だ、きっと大丈夫だろう。
スリングショットを回し始める、まだ気づいてないな…今だ!
ドカッ!
「ブモッ!」
見事命中、やっぱり1回では倒せないか、なら続けてもう1つ。
スリングショットにセットし、遠心力を稼ぐ間にオークは立ち上がり、こっちを向いた。
ふらついていて、上手く歩けないみたいだ。
十分に勢いが付いたので、投げる!
ガンッ!
棍棒を盾に防がれてしまった。
くそっ、やっぱり正面からだと防がれるか、ならば!
俺は左手に集中して、オークへと走り出す。
オークは近づいてきた俺を迎撃するために、棍棒を振り上げた!
その瞬間に合わせ、高温高圧洗浄をオークへと発射!!
「ブモモモモッ!」
突然の高温による顔面攻撃で、オークはパニックを起こし、棍棒を振り回している。
危なくて近づけない、どうすっかな…
そうこうしている内に、高温高圧洗浄は止まってしまった。
再度発射するかと思ったのだが、どうも様子が変だ、そのまま棍棒を振りまくっている。
よくよくオークを確認すると、顔が火傷でケロイド状になっており、かつ腫れあがっている。
目が見えなくなっているのに加え、鼻にもお湯が入って匂いもダメになっているみたいだ。
こちらを認識する方法が無いとは言え、近づくのは危険だ。
俺は後ろに回り、スリングショットをセット、回し始める。
勢いが付いたので、相変わらず暴れているが、隙だらけの頭を目掛けて発射する!
ドカッ!
見事命中! オークはそのまま前のめりで倒れた。
「やったか!?」
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【オーク】
年齢:8
状態:普通
LV:12
HP:0/47
MP:1/1
STR:ー
VIT:ー
AGI:ー
INT:ー
DEX:ー
LUK:ー
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無事倒せたみたいだ。
とりあえず解体は後回しにすることにして、アイテムボックスに収納してこの場を離れることにする
索敵を行いつつ、先ほどの戦闘について考えてみる。
今回のことで1匹なら倒せることが分かった、最悪正面からの戦闘になったとしても、高温高圧洗浄で視覚と嗅覚を奪ってしまえば、後はこっちのものだ。
2匹だったとしても、両手で発射できる今なら対応は可能だろう。
3匹だったら? 1匹を穴5で落とせば、すぐには出てこれないだろうから、その間に2匹を処理すれば行けそうだな。
ただ、どうしようもない場合以外は、戦わずに逃げる方向で考えておこう。
ふと、前回のオークのことを思い出してみる。
前回のオークが棍棒を振り回さなかったのは、不意打ちによるパニック状態で戦闘が頭に無かったからだろう。
今回みたいに、戦闘中で、敵がいると分かっている状態だと、身を守るためにも、あんな感じになるんだろう。
もしかするとパイルバンカーを使うための条件って、拳闘家みたいに避けて殴ることが出来ないと、厳しいのかもしれない。
やっぱり立ち回りと言うか、避けるための講習は受けるべきだろうな。
その後はゴブリングループを4つ、12匹ほど倒した。
そろそろ良い時間だな、解体もしなくちゃいけないし、戻るとするか。
戻る最中に2つの反応を見つけた、ゴブリンかな?
どうせ帰り道だ、狩っていくことにする。
風向きを気にしつつ、隠密で近づくと、戦っている音が聞えた、どうやら戦闘中らしい。
森で他の人が戦闘しているのは見かけたことが無かったので、興味本位で見学して行くことにする。
ただ、横殴りはマナー違反のため、あくまで見学だけだ。
見えるところまで近づき、戦闘の様子が分かるようになる。
戦っているのはオークと大盾使いの重戦士みたいだ。
それにしても大きな盾だな、体がすっぽりと隠れるほど大きい。
それにオークもやたらとデカイ、重戦士の3倍は有るんじゃないか?
大丈夫だろうか…
戦闘はこんな感じである。
オークの攻撃を大盾で防ぎ、斧で攻撃をするが、速度が無いためオークも棍棒で防ぐ、多少削れては居るが、折れる程ではない。
またオークの攻撃を大盾で防いだ、それの繰り返しである、結構泥仕合だ。
しかしスゲーな、あんなに重そうな鎧や盾、そして斧なのに動けるなんて…
しかも、あんなにデカイオークの攻撃も、難なく防いでいるし、俺には無理な戦い方だ…ってあれ?
さっきまで、やたらとデカイオークかと思ったが、よくよく見ると、それほどデカくはない? 普通か?
と言うことは重戦士の方が小さいのか、あの大きさ、どこかで見たことが有るような記憶が…何処だっけ?
失礼になるかもしれないが、鑑定を掛けてみる。
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名前:ビアンカ
年齢:19
状態:普通
LV:7
HP:18/41
MP:1/1
STR:27
VIT:25
AGI:6
INT:9
DEX:23
LUK:6
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って、ビアンカさんかよ、しかもそれなりにHPが減っている、これってヤバイんじゃないのか?
いきなり声を掛けるとで、ビックリして攻撃を食らうのも困るし、怒られる覚悟で助太刀することにしよう。
オークの取り分を全部渡して、一生懸命謝れば、きっと許してくれるだろう…許してくれるよね?
俺はオークの背後に回り、スリングショットでオークの頭を狙う、万が一外れたとしても、背の高さが違うため、ビアンカさんには当たらないだろう。
十分な勢いが付いたので、スリングショットを発射する。
ドカッ!
「ブモッ!」
見事に命中した、それによる痛みでオークの動きも止まった。
ビアンカさんは、ビックリしたが、その隙を見逃さずに、斧による一撃をオークへと加えた。
「ブモオオオォォォ…」
断末魔をあげて、オークは倒れた。
ビアンカさんは肩で息をしているが、突然オークが攻撃されたんだ、警戒を解かずに盾を構えている
なので、俺から声を掛けることにした。
「ビアンカさんですよね? 俺です、ハルです。
何か危なそうだったので、怒られる覚悟で横殴りさせてもらいました。
オークの素材は全部渡しますので、許してくれると助かります。」
俺の声を聞いて、ビアンカさんは警戒を解いてくれた。
「ハルだったのか、良かった…
正直ダメかと思ってた所じゃったから、助かった。」
「本来は声を掛けるべきだったのでしょうが、声を掛けることでピンチになったら嫌だったので、黙って介入しました。
ごめんなさい!!」
「何で謝る必要が有る、あたいはハルが助けてくれなかったら、今頃オークの苗床になっておったぞ?
まさか、こんな浅い所でオークに出会うとは思わんかった、こっちこそ、ありがとう。」
「とりあえず移動しませんか?
いつ次の敵が来るか分かりませんから。」
「そうじゃな、じゃが、このオークどうしようか、全部は運べないしな。
仕方がない、一番高い部位だけ持って行くとするか。
すまんが、手伝ってくれるか?」
仕方ないとは言え勿体ないな、どうすっかな~
ビアンカさんは気に入ってるし、多分口も軽くは無いだろう、ええい! ままよ?
「ビアンカさん、内緒にしてもらいたいことが有るんですが、良いですか?
内緒にしてくれるなら、俺が全部運びますよ?」
「なんじゃ、いい方法でも有るのか、なら任せる。
あたいは口は堅い方じゃ、言いふらすことはせんよ。」
よし、言質も取った。
俺はオークへ近づき、アイテムボックスに収納する。
「なっ、消えた!?」
「俺のスキルです。
説明は後でしますから、ほら、移動するぞ。」
「あ、ああ、分かった。」
俺は索敵をしつつ、移動しながらビアンカさんにアイテムボックスを説明する。
「ほぉ~便利な物があるんじゃな。
ええのぉ~、あたいも欲しいのぉ~」
「俺も貰った物なので、習得方法なんか知りませんよ。」
「スキルが手に入らないんだったら、スキルを持ってて、優しくて、カッコ良くて、一緒にPTを組んでくれるって人はおらんかのぉ?」
チラッ、チラッっとこっちを見ている。
何だろう? 何処かで見たことがあるような、無いような…デジャブか?
「ま、まぁ、タイミングが合った時でなら、はい。」
「よし、決まりじゃな。」
「あ、でも、俺、PTを組んでいる人が居るんですよ、その人と行くときは、了解得られたらで良いですよね?」
「そうじゃったか、そればかりは相手もいる話じゃし、仕方ないじゃろうな。」
俺達は、無事に森から出ることが出来た。
「何とか無事に帰ることが出来るみたいじゃな、本当にありがとう。」
「気にすんな、危ないときはお互い様だ、それで、オークだけど解体はどうする?」
「さすがにあんなに大きなオークは解体出来ん、そのままギルドに出すわ。」
「俺は解体するから、一緒にやろうか?」
「なんと、ならお願いするかの。」
「了解~」
俺はまず1匹を取り出し、解体を行う。
前回、やり方も覚えたし、そんなに苦労しないだろう。
サクサクと解体を行う、40分ほどで解体を済ませる。
「変わったやり方じゃが、随分と手際が良いのぉ、それに魔法も使って行うとはな。」
「まーね、それで肝臓とかモツとかはどうする?」
「モツは使い道が無いから要らん、肝臓は、酒のつまみで食ったら旨いだろうな。
後で出して貰っても良いか?」
「おう、分かった、マスターに調理して貰おう。
じゃあ、俺の分も解体しちゃうか。」
もう1匹を取り出し、解体を始める。
「なんと、ハルは1人でオークを倒せるのか、凄いの。」
「まービアンカさんみたいに、正面切って戦うことはしないけどな。」
「それでも、凄い、あたいは、まだ無理だからな。」
「ま、誉め言葉として受け取っとく。」
俺は2匹目もサクサクと解体していく。
「終わったぞ。」
「ご苦労さん、それじゃ帰るとするかの。」
俺たちは帰ることにした。
ちっちゃい体に巨大武器、ロマンだよね




