ビアンカさんと食事
宿に帰ってきたので中に入ると、いつもの賑やかさだ。
何時もの氷を作った後に空いている席に着き、夕食を頼むことにする。
怒ってないだろうか? 大丈夫だよね? 恐る恐る注文をしてみる。
「ナンシー様、夕食が欲しいのですが、お願いしても宜しいでしょうか?」
「ハルさん、知っていたのなら教えて欲しかったんですけど?」
ナンシーちゃん必殺ジト目だ、ありがたや~
どうやらそれほど怒ってないみたいだ、良かった~
「いや、教えたじゃん。」
「確かに言ってたかもしれませんが、肝心なことは言ってませんでしたよね?」
「そうだったかな?」
「そうです! おかげで思いっきり恥ずかしい思いをしちゃったじゃないですか~」
「そりゃ、悪かったな。
でも、恥ずかしかったのはマスターだと思うぞ?」
「そうかもしれませんが、ハ……じゃなくて…の……じゃ…じゃない。」
なんかナンシーちゃんがごにょごにょと言っているが、よく聞き取れないな。
「それより、飯お願いしたいんだけど、良いかな?」
「は、は~い、待っててくださいね。」
今日の夕食は何だろうな、そんなことを考えていると、声を掛けられた。
「おや、ハルじゃないか、休憩かい?」
「いや? 俺の手伝いは終わったから、普通に夕食待ちだけど?」
「なんじゃ、先ほどと言葉遣いが違うではないか、それに手伝いとは?」
「ここのマスターが、(一部)大変なことになったので、臨時の手伝いをしたんだよ。
さっきはお客様に対する対応だったが、今の俺は、あんたと同じ単なる宿泊客だ。」
「なるほどの、従業員では無かったんじゃな。
まぁ、今の話し方も嫌いではない、差別もしとらんみたいだしの。」
「俺としては、こっちが地だ。
良くは知らんのだが、ドワーフって差別されてるのか?」
「まぁ、見た目がこうだからな、舐められることが多いのは確かじゃよ。
そう言ったヤツは、後悔することになるけどな(ニヤリ)。」
「おお怖っ、お手柔らかに頼むわ。」
「お主が、初めの時みたいに、お嬢ちゃん扱いしてたら、そうだったかもしれんぞ?」
「はははっ、気を付けることにするさ。」
そこにナンシーちゃんが夕食を持ってきた。
「お待たせしました~、本日の夕食です~」
「おっ! 来た来た。」
「すまんが、あたいにも夕食をお願いできないか?」
「は~い、分かりました~
所で、ハルさん、こちらの方は?」
「この人はビアンカさんだ、今日受付しているときに知り合った。
こう見えてもドワーフで、ナンシーちゃんより年上だぞ?」
「え? ドワーフさんでしたか、てっきりハルさんが少女誘拐でもしてきたのかと…」
「ちょい待ち! 俺ってそんなイメージなの?」
「あはははっ、冗談ですよ~
それでじゃ夕食お持ちしますね、少々お待ちください。」
「すまんが、ついでにエールも頼む。」
「ナンシーちゃん、俺もエールね。」
「エール2つですね、わかりました~」
そう言って、ナンシーちゃんはキッチンへ入って行った。
「なんじゃ、給仕の子は、ハルのコレか?」
ビアンカさんが小指を立てている、オッサン臭い。
「大事な人には違いないですが、恋人ではありません。」
「ほぅ、ハッキリ言うではないか、あの子で駄目だと言うなら、本当にあたいみたいなのが好きなのか!?」
「誰がそんなこと言った! まぁ、確かにビアンカさんは可愛いとは思うぞ?
それに俺はナンシーちゃんが駄目とは言ってないし、色々と悩んでいる最中なんだ、適当なことを言わんでくれ。」
「か、かわ、可愛い、やっぱり…」
「勘違いしている所悪いが、見た目が可愛いってだけで、恋愛対象だとは言ってないからな?」
「何だ、つまらん…
それで? 何やら悩んでるんだったら、あたいに言ってみたら良いじゃないか、相談に乗るぞ?」
見た目少女に対し、真剣に悩み相談している大人か、なかなかシュールだな、なので
「いや、遠慮しておく」
「遠慮するな、これでも色々と経験豊富なんじゃぞ?」
「それは恋愛に対してもか?」
「…も、もちろんじゃ!」
今、間が有ったぞ?
「な、なんじゃ、その疑いの目は、あ、あたいは、お、大人なんだぞ?」
ならば、世界にも認められたHENTAI発祥の日本における闇を見せてやろうではないか。
「ほぅ、なら大人なんだったら、もちろん(ぴー)が(ぴー)で、(ぴー)を(ぴー)して(ぴー)なら(ぴー)ってことで(ぴー)(ぴー)なんだがどうだ?」
「な、な、な、なんて破廉恥な…じゃない、そ、そのくらい、なんじゃ、と、とう、当然じゃろ?」
「当然って、何が当然なんだ?」
「そ、そ、そのくらい、け、け、けい、経験してるんだぞ? ホントだぞ?」
「ほぉ…なら、これから試してやろう、どうだ?」
「い、い、い、いいじゃろう、受けてたってやる!」
ポン!
後ろから肩を叩かれたので振り向くと…そこには般若が居た。
「ひいっ! な、な、な、ナンシー…さ、ん?」
「ハルさん、何をやっているんですか? 他のお客様にもご迷惑ですよ?(にっこり)。」
ダラダラダラダラ(滝汗)
「ふざけて冗談を言ってました、申し訳有りませんでした~!!」
俺はジャンピングDOGEZAを実行する、見よ! この完璧なDOGEZAを
ナンシーちゃんはため息を付き、仕方ないな~って目でこちらを見た。
「ほどほどにしないと、その子に嫌われちゃいますよ?
はい、夕食とエールです。
ごゆっくりどうぞ~」
ナンシーちゃんは他の客の対応のために戻って行った。
「ふぅ、助かった~」
「お主も大変みたいじゃの。」
「いや? これはこれで結構楽しい生活してると思ってるけど?」
「そうか、それは、うらやましいの…」
「何しょぼくれてるんだよ、ビアンカさんも、これから一緒に楽しんだらいーじゃんか。」
「そうだな、楽しめたら良いな。」
「よし、なら乾杯しよーぜ!
俺たちの新しい出会いと、これからの楽しみを期待して、乾杯~!!」
「か、乾杯~!」
ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ…ぷはぁ~
「最高~!!」
「な、なんじゃ、これは?
エールって冷やすだけで、こんなにも旨くなるものなのか!?」
「だから言ったじゃん、自信を持ってお勧めするって。」
「確かに言っておったが、ここまでとは…
それに、これで、たったの鉄貨4枚じゃ、何かの冗談にしか思えんわ。」
「なら、騙されよーぜ! 騙されて楽しんだもんが勝者だ(笑)」
「そうじゃの、楽しまんと勿体ないな。
おーい、給仕の娘よ、エールをもう1杯頼む。」
「はいは~い、すぐにお持ちしま~す。」
「なんじゃ、ハルは頼まないのか?」
「俺? 俺は1杯だけで充分だからな、後は夕食を楽しむだけさ。」
「いつもは一人で飲んでいたから気にしていなかったが、一緒に飲むヤツが居ると楽しいって知ってしまうと、なんとも寂しい気分になるもんじゃな。」
ビアンカさんが落ち込んでいる。
「だー! わかった、わかった。
ただ、そんなに飲める方じゃないから、後1杯だけな?
おーい、ナンシーちゃん、俺にも1杯頼むわ~」
「頼むなら一緒に頼んで欲しかったです~
すぐにお持ちしますね~」
「なんか気を使わせてしまったみたいで悪かったの。」
「いや、気にすんな、今日はたまたま飲みたい気分だったしな。」
「そうか、ありがとう。」
「は~い、エール2杯追加分です。
では、ごゆっくり~」
「じゃあ、折角だ、もう一回行くぞ! 乾杯~」
「乾杯~」
ごく、ごく…ふぅ。
「やっぱり旨いの!」
「そうだろ? それに最近気温が上がってきたから、特に旨く感じるしな。」
さてと、乾杯も済んだことだし、夕食の方に移るとするか。
今日の夕食は、ピザとポテトフライと野菜スープだ。
朝がアレだったから、夜はどうなるかと思ったが、普通だった。
ぱくり…おっ! これは餅か? 何かは分からないが餅っぽい食感の何かが入ってる、旨い。
エールをゴクリ、ポテトをパクリ、エールをゴクリと最高だ。
しかも、目の前には、見た目少女とは言え、可愛い女の子が居ると飯も旨い!
「ハルは、旨そうに飯を食うのぉ~
見ているこっちまで楽しくなるわ、どれあたいも食うか…ほぉ! 旨いの!
ここに来る途中の出店で食べた時には、何処も同じ物だと思っていたが、ここは違うみたいじゃな。」
「ああ、ここのマスターは料理上手だ、だから、俺も此処を拠点にしているんだけどな。」
「なるほどの、値段も安く、飯も旨い、いい宿を見つけたもんじゃ。」
「ただし!」
「な、なんじゃ?」
「ここには10日に1度現れ、マスターに取り付く悪霊がいる。
それさえ我慢できれば、この宿は悪くないと思うぞ。」
「何じゃ、そんなに恐ろしいのが出るのが分かっているのなら、退治すれば良いのでは?」
「除霊に成功しそうだったが、失敗した、当分無理だと思う。」
多分、俺がここにいる限りはな…(汗)
「そうか、まぁ、こちらに不都合が無いなら、それでええ。
おーい、エールもう1つ追加~」
「は~い、ただいま~」
「飲むの早いな、さすがはドワーフって所か、しかし、何処にそんなに酒が入るんだ?」
「乙女の秘密じゃ。」
「秘密で済む問題じゃない気もするんだが…まあいっか。」
「は~い、エールお待たせしました~」
「おお! 来た来た。」
ビアンカさんはゴクゴクと一気に飲み干した。
エール1杯、約500mlくらいだよな、すでに1.5Lほど飲んでる計算になる。
だけど、腹が膨れている様子は無い、あの小さな体で何処に入るんだよ、質量保存の法則どうなっているんだ?
気にしても仕方が無いので、俺も2杯目を飲み干す、うん、お腹いっぱいだ。
「さてと、俺は食い終わったから、そろそろ部屋に戻るわ。」
「そ、そうか、残念だが、仕方ないか…
な、なぁ、時間が合ったときで構わないから、また一緒に食っても良いか?」
「ああ、いいぞ。」
「そっか、なら宜しくな。」
「おう、じゃあな。」
俺はビアンカさんと別れ、自分の部屋に戻ってきた。
今日はマスターのせいで(お前のせいじゃね?)仕事を押し付けられたが、そのおかげでビアンカさんと知り合うことが出来たので、許してやるとしよう(えらそう)。
明日は狩りをするので、さっさと寝ることにする。
おやすみなさい…ぐぅ。
見た目小学生にセクハラしている主人公…事案だな…




