ドワーフ
そろそろ夕刻にもなる時間に、1人の客がやってきた。
小学生高学年くらいの可愛い女の子だ、迷子かな?
「宿泊をお願いしたいんだが。」
「え? お嬢ちゃん一人? お父さんか、お母さん一緒じゃないの?」
俺が質問すると、女の子は下を向いてプルプル震え出した。
迷子で心細かったんだな、うんうん、わかるわかる。
俺も子供の頃にお店で迷子になって泣きそうになった記憶が有ったから、良く分る。
きっと、この宿をはぐれた時の待ち合わせにしていたんだろうな。
「じゃあ、親とここで待ち合…」
「あたいは、れっきとした大人じゃー!!」
「うおおっ、ビックリした。
え? 大人? どう見ても10歳前後にしか見えないけど?」
「貴様、ドワーフを見た事無いのか?」
「え? ドワーフ?」
「そうじゃ!」
女の子を確認してみる、凹凸の無いスレンダーな体と、130cmくらいの身長、童顔で可愛らしい、何処をどう見てもロリっ子だ。
「何処をどう見ても、ちっちゃい女の子にしか見えないんだけど?」
「きいいい~~~!!
なら、これを見るのじゃ!」
女の子が冒険者カードを提示した、この子冒険者なんだ。
冒険者はステータスを簡単に見せてはいけないんじゃなかったのか?
俺は、カードを受け取り、ステータスを確認する。
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名前:ビアンカ
年齢:19
状態:普通
LV:7
HP:41
MP:1
STR:27
VIT:25
AGI:6
INT:9
DEX:23
LUK:6
スキル:斧術Lv3、盾術Lv3、解体Lv2、鍛冶Lv1
称号:
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ふむ、名前はビアンカさんね、歳は19か。
「は? 19歳!? マジで?」
「だから大人だと言ったじゃろうが。」
「すんませんでした~!!」
この世界では16歳から大人とみなされるため、19歳は立派な大人なので、間違ってはいない。
「分かればいい、その反応を見ると、本当にドワーフを見たことが無いみたいじゃの。」
「はい、初めて見ましたし、知りませんでした。
お客様には、ご迷惑をお掛けしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。」
「いや、そこまで謝らんでもいい、実際、知らなかったみたいだしな。
それに、もし、子供だったのなら、あの対応も間違いでもない、もうええよ。」
「ありがとうございます。
それで、宿泊を希望とのことですが、お食事は如何いたしましょうか?」
「そうじゃな、食事付きで頼む、後、質問なんじゃが。」
「何でしょうか?」
「噂で、ここのエールが旨いと聞いたのじゃが、本当じゃろうか?」
「そうですね、エール自体は同じだと思いますが、冷えているため、味は格別だと自信を持ってお勧め致します。」
「そうか! それは楽しみじゃ。」
「お客様は、宿泊食事付きなので、銅貨8枚になります。」
ビアンカさんは、財布から銀貨1枚を取り出した。
「こいつで頼む。」
「銀貨1枚お預かり致します。
お釣りの銅貨2枚と、こちらがお部屋の鍵になります。
お部屋は2階に上がりまして奥から2番目のお部屋となっております。」
「うむ。」
「お食事は、1階の食堂で取ることが出来ます。
夕食は7の鐘から10の鐘までの間、朝食は5の鐘から9の鐘の間となっておりますので、お気をつけ下さい。
食事以外で、エールや食べ物を追加で頼む場合は、テーブルにメニューが置いてありますので、給仕にお知らせ下さい。
料理を持ってきた際に、支払って頂く形になります。
何かご質問は有りますでしょうか?」
「大丈夫じゃ、それにしても、お主は凄いの。
最初は失礼なヤツと思ったが、一度理解すれば丁寧にキチンと対応してくれる。
あたいはこんな見た目だ、同族ならまだしも、人族でそんな対応してくれる人は、なかなかおらんぞ?」
「お褒めに預かり、光栄にて御座います。」
「うむ、暫く世話になる、宜しくな。」
「こちらこそ宜しくお願いします。」
「お主は…ええと、済まぬが名前を教えてくれないか?」
「私はハルと申します。」
「ハルね、覚えたぞ、それじゃな。」
ビアンカさんは部屋に向かっていった。
ふぅ、あぶなかった…
客相手に適当に対応して怒らせたらマスターに殺される所だったぜ(汗)。
しかし、この世界のドワーフは合法ロリのパターンだったんだな、一部のマニアには大人気に違いない。
もう一つのパターンの女性でも髭ずらで樽体型の方じゃなかったのは、見た目的にも良かったかもしれない。
とりあえず俺がロリコンで無くて良かった、御蔭で冷静に対応することができた。
もし、見た目も大人でボンキュボンの女性だったら、焦ってしまい、キチンと対応出来なかったと思う。
さて、仕事の続きをしますか…
・・・・
夕刻になり、ナンシーちゃんがやってきた。
「こんばんは~ってハルさんじゃないですか、こんな所でどうしたんですか?」
「マスターが(一部)大変なことになったので、手伝いになった。」
「えぇっ! マスター風邪を拗らせたとかで死にそうなんですか!?」
「いや? (一部が)凄く元気だぞ?」
「はい? でも、大変なんですよね?」
「ああ、(一部が)大変だ。」
「でも、元気と。」
「うん、(一部が)元気だ。」
「良く分りませんが、会えばわかりますか。」
そう言ってナンシーちゃんはキッチンへ入って行った。
「あ、ナンシーちゃん行っちゃだめだ! って行っちゃった…俺、しーらね。」
「マスター、ナンシーで……きゃあああぁぁぁぁ~~~~!!」
「間に合わなかったか…ナンシーちゃんゴメン!」
俺の手伝いはナンシーちゃんが来るまでだ、ほとぼりが冷めるまで退散することにする。
逃げる様に宿屋を出たが、何して時間を潰そうかな…
そーいや、ナタリーさんに、今日は休みって言ってなかったな、また拗ねられるのも困るし、報告してくるとしよう。
・・・・
ギルドに到着した、すでにピーク時は過ぎているので空いている。
早速、ナタリーさんの所に並ぶことにする。
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、こんばんは。」
「ハルさん、こんばんは。
今日はどうしましたか?」
「今日は、マスターが病み上がりだったので、1日中手伝ってました。
昨日の時点では休む予定じゃなかったので、連絡出来なかったので、今言いに来ました。
遅れてしまい申し訳ありません。」
「いえ、わざわざ報告して頂き、ありがとうございます。
それで、マスターさんは大丈夫なんでしょうか?」
「はい、(一部が)大変なことになってますが、(特に一部が)元気になってますので、大丈夫です。」
「は、はぁ、良く分りませんが、元気になられたのなら良かったです。」
「明日は狩りに行こうと思ってますので、夕刻辺りに来ますね。」
「はい、お待ちしてます。
それでは、ナタリーが承りました。
また明日♪」
よし、報告も済んだし、帰るとするか。
いい加減、ほとぼりも冷めた頃だろうと思う、きっと、おそらく…
そう期待して俺は帰るのだった。
この子は出すか出さないかで迷っていたし、出したとしても、もっと後の予定でした。
今回、タイミングが良かったと言うか、勝手に出てきてしまった(汗)




