ギルド内で
無事にアルデの街まで帰ってきた俺たちは、ギルドまでやってきた。
丁度ピーク時間だったため、混雑している。
「この時間だから仕方ないですが、混んでますね、どうしましょうか?」
「ハルさん、アイリ、ちょっと手伝ってきても良いでしょうか?」
同僚の大変な姿をみたナタリーさんは我慢が出来なくなったらしい。
今日は休みだって言うのに、ナタリーさんらしい、優しいな。
「待ってますから、頑張ってきてくださいね。」
「はい、行ってきます。」
そう言ってナタリーさんは仕事に入って行った。
「リリア、エミリー、助っ人に入りますね。」
「ああ、ナタリー、来てくれてありがと~」
「ナタリー、助かります。」
「ふふふっ、頑張りましょうね。」
突然助っ人に入ったナタリーさんは、着替える暇も無かったので冒険者の恰好だ。
いつもと違った格好にギルド内はザワつき、雪崩のようにナタリーさんの列に我先にと並ぶのだった。
「うおおおおおっ! 俺が先だ!」
「馬鹿言え、俺が先に並んだんだよ。」
「ナタリーさん、その恰好可愛いっすね、今度冒険一緒に行きましょうよ。」
「あ、ずりーぞ、俺、俺と行きましょうよ。」
「ふざけんな、てめー」
なんかナンパも入ってるみたいだが、PT組んでいるのは俺だ、遠慮してくれとは言えない軟弱な俺を許してくれ…(涙)
ナタリーさん、が、頑張って…
・・・・
ピーク時間も終わり、ギルド内も落ち着いてきたので、俺も並ぶことにする。
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、お疲れ様です。」
「ナタリー大変だったねぇ~」
「ハルさん、アイリ、ごめんなさい。」
「謝る必要は無いですよ、仲間を放っておけない優しいナタリーさんは好きですよ。」
「す、好き、ハルさんが、好き……きゅう。」
一瞬で真っ赤になってのぼせたみたいになって、目を回してしまった。
「ハル君、今のナタリーにそれを言ったらダメだって。」
「すいません、失言だったみたいです。」
「もちろん、私にも何か言ってくれるんだよね?」
「あ、えーっと、あ、後でで宜しいでしょうか?」
「言質もらいっ♪」
うっ…仕方ないか。
それはそうと、ナタリーさんを何とかしないとな。
「もしも~し、ナタリーさん、おーい。」
顔の前で手を振ってみた。
「…はっ、すいません、幸せな夢を見ていました…ってハルさん!?
あれ? さっきの夢じゃ無かったの? え? え?」
「すいません、処理をお願いできますか?」
とりあえず誤魔化すためにも、依頼を済ませてしまおう。
「あ、はい、えーっと、ホーンラビットが7匹、解体済なので、銅貨8枚と鉄か4枚になります。
後、カードの提示をお願いします。」
「今日は、ナタリーさんの初討伐記念ですから、討伐料とギルドポイントはナタリーさんに差し上げます。
アイリさんが狩った分は、アイリさんに渡してください。」
「あ、私も要らないわ、今日はナタリーに上げるわ。」
「そ、そんな、悪いです。」
「記念なので、取っておいてください。
次からはみんなで分けましょうね。」
「…はい、ありがとうございます。」
「さて、報告も終わったことだし解散としましょうか。」
「そうね、これから打ち上げでも行く?」
「すいません、今日、マスターが風邪ひいてダウンしているみたいだし、気になるから帰ることにします。
今度、埋め合わせしますから、打ち上げに行きましょう。」
「そういう理由なら仕方ないね、了解~」
「私も、仕事手伝いますので、今日はごめんなさい。」
「じゃあ、今日はお疲れ様でした。」
「「お疲れ様です~」」
俺はアイリさんと一緒にギルドを後にした。
「それじゃ、またね~」
アイリさんが去ろうとした所で、ふと思い出す
「あ、アイリさん、ちょっと待って!」
「ん~? どうしたの?」
「これ、渡すの忘れてました。」
俺はアイテムボックスより、箱を取り出し、アイリさんへと渡した。
「え? 何々? プレゼント? ありがと~、でも、どうせなら、さっき言えなかった言葉を掛けてから貰いたいな~、ダメ?」
うっ…アイリさんの上目遣いのお願いは、ナタリーさんに匹敵するほどの破壊力がある。
「わ、分かりました。
えっと、いつも元気で、周りを明るくさせてくれて、お姉さんぶってるけど、可愛い所があるアイリさんは、す、す、好き、ですよ?」
「なんか、ナタリーと違う、差別だ~」
「すいません、意識すると、照れてしまって…」
「ふ~ん、じゃあいいよ、で、開けても良い?」
「ええ、どうぞ。」
「うわ~可愛い~♪ これって何ていう花?」
「デイシーです。花言葉に『無邪気』って有りまして、アイリさんに似合うかと思って買っちゃいました。」
「嬉しい~ ありがと~
ねーねー、これってお姉さんだけ?」
「いえ、不公平は良くないと思いましたので、ナンシーさんにも渡しました。」
「あれ? ナタリーには?」
「ナタリーさんには前に渡しているので、今回は贈ってません。」
「もしかして、ここ最近になって見かけるようになった、ナタリーが付けているカットレアのブローチって…」
「自分が送ったものです。」
「ほぉ~、へぇ~、ハル君って、実は本命がナタリーなのかな? かな?」
「贈った時は、色々迷惑掛けてたお詫びで贈っただけで、本命とか考えてませんでした。」
「今は?」
「あー、えーっと、そのー、な、内緒です。」
「えー、じゃあ、もしかして私?」
「な、内緒です。」
「ナタリー?」
「ノーコメントで。」
「ナンシー?」
「黙秘権を主張します。」
「ぶーぶー」
「…アイリさんはモチロンのこと、ナタリーさんも、ナンシーちゃんも、今の俺にとって大事な人です。
だから、正直どうして良いのか良く分らないんです…こんな答えですいません。」
「えへへっ、私も大事な人なんだ、嬉しいな♪
うん、わかった、今はそれで良いよ~」
アイリさんが、ブローチを胸に付けている。
「どう? 似合う?」
「アイリさんのイメージにピッタリです。よく似合いますよ。」
「ハル君、素敵なプレゼントをありがと~、すっごく嬉しい♪」
「じゃあ、マスターも気になるし、そろそろ帰ります。」
「うん、また今度一緒に行こうね~」
「はい、楽しみにしてます。
それではまた。」
「まったね~」
俺は宿へ帰ることにした。
宿屋に到着し、中に入るとシーンとしている。
いつも酒に酔って賑やかなのが静かなので、寂しい気持ちになるな。
とりあえずマスターの部屋にでも行ってみるか。
コンコン……ガチャ
「なんだ、坊主か。」
「体の調子はどうだ?」
「まだ少しダルイが、明日にはきっと治ると思う。」
「そうか、ならこいつでも飲んでおけ。」
俺はアイテムボックスから精力剤を出した、多分効くよな?
「何だこれは?」
「貴族様が飲んでる薬らしいぞ? (一部が)元気になるらしい。」
「そうか、すまんな。」
「あと、こいつもやるわ。」
アイテムボックスより、リンゴーン10個を取り出した。
「俺の故郷では、1日1個のリンゴーンを食べると風邪を引かないと言われていてな、迷信かもしれんが食っとけ。」
「すまんな。」
「どうする、リンゴーン剥いてやろうか?」
「いや、剥くくらいなら出来る、ありがたく食べさせてもらおう。」
「そうか、じゃあ俺は行くぞ、お大事にな。」
「ああ、わざわざすまんな。」
俺は自分の部屋に戻ることにした。
しばらくすると…
「ふおおおおおっ! この(一部が)みなぎる力はなんだ!」
なんか聞えたが知らん、多分元気になったんだろう、一応用心のために鍵を確認し、寝ることにする
おやすみなさい…ぐぅ。
ここまで効き目が有るのなら、金貨1枚でも安いのかもしれない…