ネコミミの女の子
ふらふらと商業区域を歩いていると、後ろから声を掛けられた
「あれ? お兄さん?」
俺のことをお兄さんて呼ぶ人って居たっけか?
とりあえず振り向くと、そこにはネコミミの女の子が居た
何処かで見たことが有るような気がするんだが、何処だっけかな?
こんなにも可愛いネコミミを忘れるハズが無いのに…
「えっと、ごめん、誰だっけ?」
「えーっ、私のこと忘れちゃったんですかぁ?
旅の途中で、盗賊に襲われ、生き別れになってた、あなたの妻じゃないですか~」
何! 俺は結婚していたのか!?
なんてこった…こんなに可愛い子を、しかも妻だった子を忘れていたなんて、最低だな
今からでも良い、責任を取るべきだな、うん
「ご、ごめん、俺、結婚してたなんて知らなかった…いや、忘れていた。
これからは、君のことを一生大事にするから、許してくれないか?」
「あ、えと、お兄さん?
冗談で言ったのに、真剣に返されると困るんですが…
ここは、そんな訳あるかー!って、ツッコミ入れるところでしたよ?」
「あれ? そうなの?」
そっか、結婚してなかったのか、安心したけど、ちょっと残念でもある
「そうですよ~、でも、本当に忘れているっぽいみたいですね。
ほら、七番街のどう〇つの〇で一緒に楽しんだじゃないですかぁ~」
そう言えば、俺の左側に座っていたのが、ネコミミの女の子だったな
思い出した、確かにこの子だったな、不覚である
「思い出した! そーだよ、何でこんなにも可愛い子を忘れてたんだ、マジゴメンな。
それにしても、俺のこと良く覚えてたね」
「だって、人族のお客様ってめったにお店には来ないですから、それにお兄さんは面白い人でしたから、覚えてました」
「なるほどね」
「それにしても、お兄さんって変わってますよね?」
「そうかな? そんなこと無いと思うけど」
「変わっていると思いますよ? 獣人族の女の子が居るお店に来たこともそうだし、冗談で言った妻ってことに対して、真剣に責任取るとか言ったり、私のことを可愛いと言ったり、変ですよ~」
「え? だってキミ可愛いじゃん、それに仮にも妻だって人に対して責任を取ることは、普通じゃないの?」
「それが変わってるんですよ、だって人族の方は、獣人族には興味持たないじゃないですか」
「あー、そう言えばそうだったっけ、忘れてたよ」
「あははっ、やっぱり変なの~」
「ちょっと確認で聞いてみたいんだけど、獣人族としては、人族との恋愛とかって気にしないんだっけ?」
「そうですね~、結婚しても子供が出来ないってのは少し悲しいですが、同族でも子供が出来ない人も居ますから、その辺を割り切るならば平気ですね~
ただ、人族側にその気が無いので、恋愛関係にはならないのが現状ですね」
「ほほぅ、なら俺にもチャンスがある訳だ」
「お兄さんは、カッコ良いですから、お店にいっぱい来てくれて、私を指名してくれるなら好きになっちゃうかもです」
うん、完全に営業スマイルだ
ふと、思い出したが、会社でもキャバクラに貢いでた同僚がいたな、給料の殆どを貢いでいたみたいだが、上手く行ったって話は最後まで聞かなかったな
俺は、お水系の女性に苦手意識を持っていたから付き合い以外では行かなかったが、もし通ってて、優しくされたり、甘えられたりしていたら同じことになっていたかもしれない…
「まぁ、機会が有ったら遊びに行くよ」
「絶対ですよ、待ってますからね~」
そう言ってネコミミの女の子は去って行った
しまった、名前聞いてなかったな、まぁ、縁が有ったら知ることも有るだろう
それにしても、お店でもそうだったが、別に猫獣人だからと言って、語尾に「にゃ」は付けないらしい、残念である
お店で頼んだら付けてくれるのだろうか? それなら行ってみても良いかもしれない(笑)
ネコミミの女の子と別れた俺は、引き続き街をぶらぶらとする
露店を見ていると、以前も見かけたブローチを売っている店が有った
折角なので覗いてみることにする
「いらっしゃい、ゆっくり見て行ってください」
相変わらずいいセンスの物が多いな
「あれ? お客さんって前にも買っていかれた方ですよね?」
「え? ええ」
「上手く行きましたか?」
「そうですね、喜んでくれました」
「そうでしたか~、いや売った側としては、嬉しいですね。
愛の告白にはもってこいの品でしたからね」
「ん? ちょっと待って、愛の告白?」
「あれ? 知らないで買って行ったんですか?
カットレアの花言葉って知ってます?
『あなたは美しい、魅力的、優美な貴婦人、魔力』ですよ?」
なんですとー
と言うことは、俺は知らずにナタリーさんに、あなたは美しくて綺麗だ、付き合って下さい! みたいな告白と同じことをした訳か
まぁ、実際、ナタリーさんは魅力的な女性だ、間違っては無いはずだ、問題は無いと思う
ふと、不公平って言うのも何だが、ナンシーちゃんとアイリさんにも買ってあげないとダメな様な気がする
「すいません、ブローチを2つほど選んで欲しいんですが、よく分からないので教えて欲しいんです」
「はい、どのようなのでしょうか?」
「そうですね、元気なのと、無邪気なのが良いですね」
店員の女性は少し考えて、何かを思いついたらしく、それを進めてきた
「でしたら、このメラソポジウムと、白のデイシーをお勧めしますね」
「どっちが、どっちなんですか?」
「おっと失礼、メラソポジウムが元気、デイシーが無邪気になりますね」
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【白いデイシーのブローチ】
品質:B
効果:魅力上昇
キク科の白いデイシーを模して作ったブローチ
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【メラソポジウムのブローチ】
品質:B
効果:魅力上昇
キク科のメラソポジウムを模して作ったブローチ
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「どちらもキク科なんですね」
「よくご存じで、もしかして花言葉も知ってました?」
「いえ、そちらは全然」
「そうですか、まぁきっと喜ぶと思いますよ」
「なら、その2つ下さい」
「まいどあり~、小箱はどうしますか?」
「相変わらず商売上手ですね、それも一緒に」
「まいどありがとうございます~♪
銀貨6枚と銅貨2枚になります~」
俺は財布からお金を取り出し、支払った
「またのご利用、お待ちしてます~」
さて、そろそろ良い時間だし、帰るとするか
・・・・
宿屋に到着した俺は、まずは氷を作りに行く
地下から出てきた所でナンシーちゃんに会った
「あ、ハルさん、こんばんんは~」
「ナンシーちゃん、丁度良かった、はいコレ」
「ありがとうございます~、綺麗な箱ですね、コレ何ですか?」
「いいから開けてみなよ」
パカッ
「可愛い~、メラソポジウムですね。
やっぱりハルさんは、私のことが好きだったんですね~」
「何でそうなる」
「だって、メラソポジウムの花言葉って『あなたはかわいい』じゃないですか」
「え? お店の人に聞いたら『元気』って…まぁ、実際ナンシーちゃんは可愛いとも思ってもいるけどさ」
ナンシーちゃんの反応が無くなったので見ると、顔を真っ赤にして口をパクパクしていた
「ど、どうしたの?」
「ハルさん、その不意打ちは卑怯ですよ…バカ…」
トテテテとナンシーちゃんは逃げる様に去って行った
「あ、えーっと、うん、ごめん」
ナンシーちゃんは行ってしまって居なかったので、聞こえないとは思うが、とりあえず謝っておく
でも、喜んでくれていたみたいだし、良しとしますか
その後、飯を頼んだりしたが、あうあうとしか答えてくれなくて、会話にならなかったのは残念だ
でも、しっかりと胸に、メラソポジウムのブローチを付けてくれていたので良しとする
夕食を食べ終えた俺は、部屋に戻り、明日のためにもさっさと寝ることにする
おやすみなさい…ぐぅ
ケモナーなのにケモミミがあまり出てこないのは何故!?