商人との出会い
ギルドに到着した
すでにピークも過ぎた時間なので、それなりに空いている
さっそく並ぶことにする
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、こんばんは。
清掃依頼が済んだので、報告に来ました」
「ハルさん、こんばんは、そして、お帰りなさい♪
予定より早かったので、ビックリしちゃいました」
「当初はその予定だったのですが、前回より、より効率よく清掃出来るようになったので、早く終わらすことが出来ました」
「そうだったんですね、それでは依頼の処理をしちゃいますね。
依頼表とカードの提示をお願いします」
俺は、依頼表とカードをナタリーさんに渡す
「はい、問題なく終了したことを確認しました。
カードをお返しします。そして、こちらが報酬になります。お受け取り下さい」
「はい、ありがとうございます」
俺はカードと報酬を受け取り、財布にしまった
ふと、思い出したことが有ったので、聞いてみることにする
「そうだ、ナタリーさん、火薬って知ってますか?」
「かやく…ですか? 聞いたことは無いですね、どう言った物なのでしょうか?」
「あー、いや、知らないなら良いんです、大したものでは無いですから」
火薬を知らないってことは、おそらくこの世界には無いのだろう、鑑定にも表示されなかったしな
それに、火薬の有効性と危険性を知られると、厄介なことになるかもしれないし、今の所は秘密にしておこう
まぁ、作り方なんぞ知らんから、どうしようもないってのが正解か
「じゃあ、そろそろ行きますね」
「あ、ハルさん、アイリから言付けが有ります。
4日後に狩りに行きませんか? との事です。
(小声で)その日が大丈夫なら、私も行っても良いですか?」
4日後は特に予定は無いから問題なさそうだな、つーか、俺って、いつも予定立てて行動してないな(汗)
いつも思うが、上目使いのナタリーさんはズルイ、もともと断るつもりは全く無いけど、これを見て断れる自信は全く無い(笑)
「はい、大丈夫です。
後の件も、喜んで」
「はい、ありがとうございます」
そうだ、待ち合わせ場所を変えないと、また、クリストさんみたいなことになりそうだ
周りに聞こえない様にナタリーさんに近づき、小声で相談することにする
「待ち合わせ場所ってどうします?」
「朝、宿に向かうでも良いでしょうか?」
「わかりました。待ってますね」
「それでは、ナタリーが承りました。
またのご利用をお待ちしております」
ナタリーさんが胸元で、俺にだけ見える様に小さく手を振ってくれている
女の子のこういう仕草って凄く可愛いと思う
俺は気分良く、ギルドを後にし、宿へと帰ることにした
宿に到着した、もう日も暮れてずいぶん時間が経っているのもあり、食堂は酔っ払いだらけで賑やかだ
まずは氷を先に作ってから、空いてるテーブルを探すが、空いてないな、適当に空いてる席に座るとするか
一人で食事をしている商人らしき人の所に行き、声を掛けた
「すいません、もし宜しければ、相席しても良いでしょうか?」
「ははっ、この混雑ですからね、どうぞ」
「ありがとうございます」
「まぁ、こうして一緒に食事をするのも、何かの縁でしょう」
「そうかもしれませんね、そうだ、1杯奢りますから、何か面白い話とかって無いですか?
俺はこの街しか知らないので、外がどんな感じなのか興味あるんですよ」
「それはそれは、では、お言葉に甘えるとしましょうか」
「ナンシーちゃん、エール2つお願い、後、夕食も」
「はいは~い、ちょっとだけ待っててください~」
何か凄く忙しそうだ
「急がなくて良いから、気を付けてな~」
「は~い、ごめんなさい~」
「はははっ、ちょっと時間かかりそうですね。
あ、俺は、この街で冒険者をやってるハルと言います」
「これはご丁寧に、私は、旅の商人でアランと申します」
「アランさんは、どちらから来られたのですか?」
「私はロモニアの街から来まして、王都へ向かう予定です。
ここは途中で寄った感じになりますね」
「ロモニアの街ってどんな所なんですか?」
「ロモニアの街は、カイトウ王国で一番の小麦の生産が多い街でして、とても大きな畑が広がっている所です」
「ほぉ~、なら収穫時期とかに行くと、黄金の草原…いや、大海が見られるのでしょうね」
「黄金の大海とは、良い例えですね、ハルさんは詩人にでもなった方が良いかもしれませんね」
「いえ、単なる冒険者で十分ですよ、それにたまたま思いついただけですから」
そんな話をしていると、ナンシーちゃんがエールと夕食を持ってきた
「お待たせいたしました、エール2杯と、夕食です。ごゆっくりどうぞ~」
「ありがとね~
じゃあ、アランさん、こちらをどうぞ」
「ありがとうございます、それでは、新たな出会いに感謝して」
「新たな出会いに感謝して」
「「乾杯~」」
ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ…ぷはあぁぁ~~旨い!
「いや~、ここのエールって冷えていて美味しいですよね、ここに来て初めて飲みましたよ」
「ここ以外では無いんですか?」
「もしかすると、どこかの貴族や王族なら似た様なことをやっているかもしれませんが、私たちが入るような所では見たことも、聞いたこともないですね。
おそらく似た様なことをするには、専属の魔法使いを雇うか、物を冷やす魔道具などが無いと出来ないでしょうから、値段も高くなると思います。
それなのに、ここは値段もそれほど高くは無い、何か特別な冷やす手段が有るのでしょうね、いや、正直羨ましい限りです」
「もし、アランさんが同じことをするとした場合、エール1杯の値段は幾らくらいになりますか?」
「そうですね、魔法使いを雇うことが出来たとして、どのくらい冷やせるのかにもよりますが、おそらく銀貨1枚が妥当では無いでしょうか?」
「え? そんなに高くなるんですか?
でも、ここって1杯が鉄貨4枚ですよね? そんなに変わる物なのですか?」
「これでも安めに見積もったつもりだったんですがね、おそらく注文を受けてから冷やさないと、暖かくなってしまいますよね?
なら、注文が来てから冷やす必要が出てきます、おそらく魔法使いも10杯ほどが限度でしょうし、そうすると希少価値が出ますので、おそらくはそのくらいかと。
もし、魔道具を使うってことになると、金貨1枚は必要になると思われますよ?
なので、ここのお店が、その値段で出せるのが不思議でしょうがないんですよね」
氷室って考えが思いつかないんだろうな、教えるのは簡単だが、教える義理もないし、マスターが困るのも宜しくないので秘密にしておくことにする
「そうなんですね、なら、今日は安いエールで楽しまないと損しちゃいますね」
「はははっ、そうですね、商人が損してはいけませんね、楽しみましょう」
「アランさん、もう一杯行きますか?
面白い話でもあれば、奢りますよ?」
「いやはや、ハルさんは商売も上手と思われますね、商人は情報が命なのですが、思わず口が軽くなってしまいます。
そうですね、最近入手した話をしてあげましょうか」
「ナンシーちゃん、エール2杯追加ね~」
「は~い、直ぐにお持ちします~」
「実はここだけの話なのですが、王都のオークションに『命の木の実』が出展されたのですが、ご存知ですか?」
「はい、冒険者ギルドでも噂になっていたので、そのくらいは」
「昨日、出品されて落札されました。幾らで落札されたか、ご存知ですか?」
「いえ、さすがにそこまでは知りませんが、白金貨100枚くらいでしょうか?」
「確かに20年ほど前に出品された時はそのくらいでしたね、なかなかいい所を突いてますね。
だけど、今回のは4つの国での競争になりまして、なんと白金貨150枚で落札されたんですよ、凄いですよね」
「おぉ! スゲー!!
そんな大金なんて想像も出来ないわ」
「(小声で)そして、ここからが本題なのですが、出品者がこの街の人らしいとの噂があるんですよ」
ゴードンさん、バレてるみたいだけど、大丈夫かな?
まぁ、ゴードンさんもやり手の商人みたいだし、きっと大丈夫だろう
それより、持ってきたのが俺ってのがバレる方がマズイ気もする…
「よく、そんな情報を仕入れることができましたね」
「まぁ、それなりに伝手がありますから、これくらいは。
さすがに、入手した人までは分かりませんでしたけれどね。
是非とも、入手方法を聞いてみたかったですよ」
セーフ、だが相手は商人だし、正確に言わない可能性もあるし、話半分に聞いておくことにする
「それにしても、白金貨150枚かぁ、羨ましいと思うのもありますが、持ってるってのも怖いですよね、強盗に襲われたりとか」
「でも、それに命を掛けられるのが、商人と言う生き物ですよ」
「そう言うもんなんですね」
ナンシーちゃんがエールを持ってきた
「お待たせいたしました、エール2杯です。ごゆっくりどうぞ~」
「いや~、貴重な話を聞かせてもらいました、ありがとうございます」
「いえ、私も話していて楽しかったので、こうしてお酒もおごってもらいましたしね。
では、これを頂いた後は、そろそろお暇させてもらいましょうか」
そう言って、アランさんがエールを飲み干した
「それでは、ハルさん、また機会がありましたら、お会いしましょう」
「はい、アランさんも、お元気で、商売が上手く行くことを祈っておきます。
そして、商売の神であるプーン神様の導きがありますように」
きっと空をとべるはずだお(笑)
「ありがとうございます。それではまた」
そう言って、アランさんは自分の部屋に戻って行った
さすがは商人だったな、話し方も上手いし、色々な知識を持っていて、聞いていて楽しかった
また会える時を楽しみにしておこう
夕食を食べ、俺も部屋に戻ることにした
ようやく今日で清掃依頼も終わったし、久々にエールを2杯も飲んだので、少し眠いから、さっさと寝ることにする
おやすみなさい…ぐぅ
ゴードンさん今度おごってください(笑)