初めての依頼
やってきましたアルデの街周辺の野原です
え? ギルドからここまでの話も、イベントも無いのかって?
でもさ、装備は揃ってるし、野営までする気もないから野営の準備も必要ないし、
そりゃね、こちらとしてもギルドで絡まれたとか、街中でスリに会って退治したとか言いたいよ?
ギルドから門までまっすぐ歩いてそのままここまで来たんだもん、何も説明も無いじゃんか
んじゃ気を取り直して散策開始~!!
結構まばらだけど薬草生えてるわ、だが葉っぱが無い…
他の冒険者が取って行ったのか…まぁ、街の近場だもん仕方ないか
・・・・
小一時間ほど歩いたら、ちらほらと薬草が生っているのが見えた
「やっと見つけたよ、意外に薬草を集めるのも大変だな」
せっせと薬草を集めることにした
夕方近くになり、ようやく100束集められた
「思った以上にこれ大変だな、こんだけ大変な思いして銀貨1枚かよ…
薬草メインでやるにはちょっとキツイな、さすがに片手間でやる依頼なだけあるわ。
でも、宿代は何とか稼げたし、初日としては悪くない。
日が暮れるとグラスウルフが出るというし、さっさと帰ろう」
何事も無く街まで帰ってきた俺は、門番にギルドカードを提示して入った
今回は身分証明を持っているため、お金を取られることは無かった
ギルドへ向かう途中の道で、出店から流れてくる匂いが腹減った体には凶悪すぎる…
宿で夕食を頼んでるし、あそこの飯は旨かったし我慢することにしてギルドへ急いだ
冒険者ギルドの中は、依頼を終えた人で一杯で、窓口は長蛇の列だった
うげ~と思ったが、とっとと終わらせて飯が食べたい俺は、ナタリーさんの窓口でもある列の最後に並ぶのだった
「次の方どうぞ~」
お、やっと順番が来た
「薬草採取の依頼です、お願いします」
採取した薬草100束をカウンターへ提出した
ナタリーさんは、なんとなく驚いた顔をしたが、すぐ元に戻った
「確認させてもらいます…薬草100束、状態も特に問題は有りません。
こちらが報酬の銀貨1枚になります。それとも、銅貨10枚の方が良いですか?」
「銀貨で大丈夫です。ありがとうございます」
俺は報酬の銀貨を受け取り、カウンターを後にした
「次の方どうぞ~」
ナタリーさんは、次の冒険者の対応に移るのだった
うん、取りつく島もないって感じだな
仕方が無いので、ギルドを出ようとした所で、声を掛けられた
「おう、坊主ちょっと良いか?」
オノと言うか戦斧を背負ったった厳つい野郎が、声を掛けてきた
来た、来たよ、ギルドの定番イベントのイチャモン付けが!
英雄街道の第1歩のイベントがこれから始まる!!
「な、何でしょうか?」
すると、男は優しい顔になり、肩に手を置いてきた
「ナタリーに嫌われてるみたいだが、元気出せ!
何なら相談にも乗るぞ?」
あるぇ~?何で慰められてるん?
イベントは?ここは訓練場とかで戦闘フラグでしょ?
ここでイチャモン付けたら俺が悪者だ
「だ、大丈夫です、あ、ありがとうございます」
「それにしても何やって嫌われたんだ?」
「それが昨日冒険者登録をして対応してくれたのがナタリーさんだったのですが、それだけで良くわからないんです」
「ん~それだけじゃ嫌われる要素は無いと思うんだがなぁ…変な目で見てたんじゃねーのか?」
ぎくっ
「や、やだなぁ、そんな訳ないじゃないですが、確かにビックリしたので少しは見てしまいましたが」
「そうか、あれは見るなという方が無理だわな。
俺は銀ランクのクリストだ、困ったことが有ったらいつでも相談に来な」
「はい、困ったときは宜しくお願いします」
クリストさんはそう言って離れていった
なんだよ、すげーいい人じゃん、いちゃもんイベントとか言ってすいませんでした
ギルドでやることも無いし宿に帰るとするか
・・・・
『薔薇の宿屋』に到着したが、なかなか入る勇気が無い
今朝の説明でキースさんが居るはずなのだが、今一つ信用ならない、もしかしたら朝晩で入れ替わるかもしれないからだ
恐る恐る入ると…なんかにぎやかな声が聞えた
「おう、帰ったか」
忙しそうなマスターが声を掛けてきた、よかったぁ~ジェニファーさんじゃなかったよ
どうやらにぎやかなのは食堂が満席だったせいだ、昨日と大違いじゃん
「忙しそうですね」
「あぁ、これは普段の状態だ、昨日がアレなだけだ」
「ははは」
渇いた笑いしか出なかった
「飯食うか?」
「とりあえず着替えてから来ます」
「おう、じゃあ鍵を渡しておく」
鍵を受け取った俺は一度部屋に戻ることにした
ちゃっちゃと着替え、俺は食堂へやってきた
空いている席に座ると、すぐに食事が運ばれてきた
「追加料金になるが、何か飲むか?」
「じゃあ、生中で」
「なまちゅう?」
「あ、じゃないビールで」
「ビールって何だ」
しまったこっちの世界にはビールは無いのか…
んー異世界定番の飲み物と言えばエールが有ったな
「エールって有ります?」
「エールなら有るぞ、ちょっと待ってろ」
食事を置いたマスターは、エールを取りにキッチンへ戻った
置かれた料理は、何かの鳥のソテーと野菜のスープ、そしてパンだ
ふと、昨日の恐怖が蘇ったところでマスターがエールを持ってきた
「エール、鉄貨2枚だ」
俺はお金を払い、気になった事をマスターに聞いてみた
「マスター、パンのお替りってあの言葉が必要なのか?」
「…お替りだけでいい」
だよね、だよね、普通そうだよね、助かった~
俺の態度に納得したマスターはキッチンへ戻って行った
「さてと、いただきますか」
まずはビールじゃなかったエールをぐぃ~っと…
酸っぱい…しかも温い…おまけに炭酸ののど越しも無い…
不味くは無いんだが、物足りない
ビールのあの苦み、キンキンに冷えていて、炭酸のあの「くうぅぅ~~~!!」ってのど越しが恋しい…
ショックを受けた俺は淡々と食事を終え部屋に帰るのだった
食事はたぶんそれなりに美味しかったと思うけどね…
くうぅぅ~~~冷えたビールが旨いぜ!!(鬼)