指名依頼は今日はお休み
目が覚めた、今日は何も夢を見なかったみたいだ
おはようございます
今日も引き続き、解読作業だ、頑張るぞ
「マスターはよ~」
「おう、来たか。
坊主、スマンが、今日の解読作業は、12の時間までで良いか?」
「別に構わんけど、何で?」
「助かる、ちょっと用事が出来てな、じゃあそれで頼む」
「あいよ、それじゃ朝飯食べるから用意してくれ」
「おう」
持ってきた朝食は、ホットサンドにサラダにミルクだ、むしゃむしゃと食べる
「ごっそーさん」
さて、氷を作ったし、しばらく暇だな、マスターがひと段落するまではどうするかな…
そ、そうだな、暇だし散歩でもしてくるかな
「き、昨日は途中で引き返しちゃったし、奥がどうなっているか調べる必要があるよな、うん」
俺は細い道を進む、例の家の前に着いた
なんとなく隠密を使いたい気分だ、そ、そうだ、俺は、恥ずかしがりなんだよな、うん
ついでにちょっと休憩したい気分だな、あーあ、疲れた疲れた
俺は隠密を発動し、家の物陰に隠れて休憩をすることにした
「父さん、この新しいお酒は何?
ああ!また生活費を勝手に使ってる!
生活もそれほど余裕ある訳じゃないのに、いい加減にしてよ!」
家の中からナンシーちゃんの声が聞こえる…
「今の父さんでも、出来る仕事は有るでしょ?
今日は仕事に行ってよ、お願いだから…」
俺は悪いとは思ったが、窓からそっと中を伺ってみる
そこには、立ったまま話をしてるナンシーちゃんの後ろ姿と、椅子に寄りかかって座っている男性がいた
男性は、泥酔とまでは行かないが、結構酔っぱらっているみたいだ、そして男性の右腕はひじから先が無いのが見えた
「私はそろそろ仕事に行かなくちゃいけない、お昼代はここに置いていくから…
それじゃ、行ってきます」
ナンシーちゃんは家を出て行った…
ナンシーちゃんが出て行ったことで静かになった所で男性がポツリとつぶやいた
「分かってはいるんだよ、でも、こんな腕で雇ってくるところなんか有るもんか…」
俺はそっと窓から離れた、周りを見ると、近くに果物屋が有ったので行ってみることにする
そこには恰幅のいいおばちゃんがいた
「いらっしゃい、初めて見る顔だね、何が欲しいのかい?」
「そうだな~そこにあるリンゴーンを、5、いや10個欲しいな」
「まいどあり~、1個鉄貨2枚だから、全部で銅貨2枚だね」
俺は財布からお金を取り出し払った
「最近、この近くの宿に住み始めたんだけどさ、この辺りで何か変わったこととか、面白い話とかって有る?」
「そうだね、最近だと…」
そしたら噂話やお喋りが大好きみたいだったみたいで、次から次へとよくもまあ、出るわ出るわで
必要な物から、必要ないものまで沢山教えてくれた
「おばちゃん、ストップ、ストーップ!
もう十分話聞けたし、俺も仕事に行かなくちゃいけないから、話の続きはまだ今度ね」
「なんだい、まだ話したいことの1割も終わってないのに…」
「いや、十分だって、また来るから、それじゃね~」
そう言って俺は果物屋から逃げたのだった
大変な目にあったが、必要な情報は入ったので良しとする
分かった内容は、ナンシーちゃんのオヤジさんは。腕のいい大工職人だったらしい
1ヵ月前に、仕事中の事故で利き腕を無くしてしまい、それから酒浸りの生活をしているらしく、娘が可哀相だと言ってた
ちなみに奥さんは、ナンシーちゃんを生んですぐに亡くなったらしい
まぁ、これらのことが分かったから何だって話なんだけどね…
宿屋に戻るとマスターが声を掛けてきた
「何しけた面してんだか…ったく」
「いや、何でも無いぞ、さ、仕事、仕事っと」
「いや、今日は辞めだ、そんな雰囲気じゃこっちのやる気が出ないわ。
どうせナンシーの件が気になってるんだろ?
言ったこっちも悪いとは思っているし、仕方ないとは思う」
「すまん」
「もともと今日は用事が有ったし、かまわんよ。
少し頭でも冷やして来たらどうだ?」
「あぁ、そうするわ…」
俺は宿屋を出た、街中を歩きながら、色んなことを考えてみた
そして、とりあえず思いついたのはこんな感じになった
1、お金を投資と言うか寄付をする
2、片手でも出来る仕事を斡旋する
3、ナンシーちゃんを連れて逃げる
4、ナンシーちゃんと一緒になって、親と一緒に面倒をみる
5.親の腕を治す
まず、1番の寄付だが、ナンシーちゃんの性格上、受け取らないと思う
次の2番はおそらくナンシーちゃんが色々と探したりしていると思う、一応こちらも探す方向で候補として残す
3番は親思いっぽいし、無理だろうな
4番は俺が責任を取ると言うなら可能だろうけど、踏ん切りが付かない…
別にナンシーちゃんが嫌いとかって訳じゃなく、どちらかと言えば可愛いし、好きな方だとは思うけどね…
そもそも、ナンシーちゃんに好かれていると言う前提がないと成り立たないな、却下だ
最後の5番だが、日本に居るときはi〇S細胞とか、クローンとかの技術が発展すれば可能かもしれないが、ここは異世界だし、どっちにしろ不可能だ
でも、ファンタジー定番の部位欠損修復魔法とか薬とかなら有るんじゃないんだろうか? 師匠に聞けば何か分かるかもしれない、これも候補として残す
候補は2番か5番になるんだが、2番はナンシーちゃんが動いているだろう、なら俺は5番で当たってみることにする
師匠の家までやってきた
「師匠…」
「おや、ハルじゃないか、いつもの元気はどうしたんだい?」
「実は師匠に相談があるんだが」
「…なんじゃ、言ってみ」
「部位欠損を治す、薬か魔法って有るか?」
「私が上げたレシピ本は読んで無いのか?」
「読んだ、でも読めなかった。
マスターがレシピ本は暗号化されているって言ってたから、時間を見つけて解読しようとはしているけど」
「…すまん、忘れておったわ」
師匠は何か持ってきて渡してくれた…眼鏡?
「こいつを装備しないと読めないようにしておったんじゃった、すまんの」
「うぉい! マテやゴルァ!」
ツッコミ入れた俺は悪くないと思う、ジェニファーと言い、師匠と言い、何か抜けてるなぁ
「じゃが、ハルは調合のレベルが4じゃろ? それだと作れ無いぞ?」
「上級がレベル7とかと一緒か」
「そうじゃ、ちなみに私も作れん」
「え? 師匠でも作れないのか?」
「悔しいがな、薬の名前はエリクサーじゃ、この薬はな、死以外のあらゆるケガ、病気、部位欠損等すべてが治ると言われておる」
「ファンタジーキタコレ!」
「ふぁんたじー? 何じゃそれは」
「あ、いや、こっちの話です。それで?」
「まあいい、このエリクサーは神が作り方を教えてくれたと言われておるが、作るのにレベル10が必要なんじゃよ。
他にも神聖魔法のレベル10にも同じような魔法があるらしいが、使える人が世界に1人か2人居るかもしれんレベルらしいの」
「ちなみに師匠の調合レベルっていくつ何でしょうか?」
「私はレベル9じゃよ、死ぬまでに10まで上げたいとは思っているが、おそらく無理じゃろうな。
だが、ハルは創造神の加護を持っとるし、もしかしたら可能かもしれん、実際4まで上がった速度は早かったしな」
「…師匠にお願いがあります」
「何じゃ、言ってみろ」
「俺に薬を作らせてもらえないでしょうか?」
「スキル上げのためにか?」
「はい」
「いいじゃろう、ハルなら30年も頑張れば、もしかしたらレベル10に行くかもしれん、頑張るんじゃぞ」
「はいぃ?ちょっと待て、30年もかかるのか?」
「何を当たり前のことを、そんなに簡単にレベル10になんぞなれる訳無かろう?
朝から晩まで必死に作り続けていればじゃが、そこまでやるんだったら、可能だとは思うぞ?
私はそこまでは作っとらんから50年かかってもレベル10には行かなかったがな」
「し、師匠、さっきの件は、ちょっと考えさせてもらっても良いでしょうか?」
「なんじゃい、調合師に命を懸けるんじゃ無かったんじゃないのか?」
「一応冒険者なので…」
「まぁ、無理強いするつもりも無いから、よく考えると良い」
「わかりました。
とりあえず、今日はレベル上げのために、作らせてもらっても良いでしょうか?
ただ、手持ちが無いので、材料は師匠のを使わせて下さい。でも、完成したものは師匠の物で良いですから」
「ほう? 私は今日は何もしなくても大儲け出来るという話か、いいじゃろう。
なら、HPポーション改を100個、解毒ポーションを100個、解熱剤を100個作ってもらおうか」
「多くね? それに解毒ポーションと解熱剤は作り方知らんぞ?」
「レシピ本が読めるようになったじゃろうが、見ながら作れるようになるのも勉強じゃぞ?」
「へーい」
じゃあ作りなれたHPポーション改から作るか…
・・・・
「お、おわったぁ~」
「お疲れさん、飴ちゃんいるかい?」
「貰う~」
ぱくり…疲れた体にこの甘さがたまらん
「まぁ、中級レベル以降はなかなか上がりにくくなるし、今日の作ったのだけではレベルも上がらんだろう。
じゃが、日々の積み重ねが大事じゃ、頑張るんじゃぞ」
「ありがとうございました」
俺は師匠の家を後にすることにした
「今日は楽して大儲けじゃわい、イーヒッヒッヒッヒ~!」
扉の向こうから、何か聞こえた気がしたが、聞こえないふりをした
日はとっくに落ち、辺りはすっかり暗くなっていた
「帰るか…」
結局ナンシーちゃんの問題が解決する方法が見つからなかった
さすがに30年は待てないだろう、なら次の案として仕事を探すだな
ただ出来るってだけの仕事じゃなくて、やりがいが持てる仕事じゃないと続かないよな
もともと大工職人って言ってたし、そっち方面で探してみることにしよう
宿に着き、中に入ると相変わらずの賑やかさだ
「はいは~い、ただいまお持ちしま~す♪」
ナンシーちゃんが元気一杯に働いている
あの元気はお父さんを養うために頑張っているんだろうな
そのことを考えると、ホロリと涙が溢れそうだ
「あ、ハルさんじゃないですか~
おかえりなさ~い♪」
「た、ただいま」
何だ? 何かすごくテンションが高いような…
「聞いてください! お父さんが、今日から仕事に復帰したんですよ!
さすがに1ヵ月もグタグタしていたのはマズイと思ったらしく、必死に頑張ったみたいです
ハルさんにも色々と心配かけたみたいですが、もう大丈夫です♪」
「そ、そうなんだ、よ、良かったね」
「はい、ありがとうございました~」
なんか俺の空回りだけで終わったみたいだ、なんだかなぁ~
まぁ、ナンシーちゃんの不安が無くなっただけでも良しとするか
ほっと一安心した所で、すれ違いざまナンシーちゃんが小声で声を掛けてきた
「マスターから聞きましたが、私のために一生懸命頑張ってくれてたんですよね、嬉しかったです♪
前はハルさんが本気じゃなかったので一度諦めましたが、今度はハルさんを本気にさせてみるのも楽しいかもしれませんね」
「え?」
ナンシーちゃんは風のように去って行って、別の客の注文を受けていた
人間ドックの聴力検査で引っかかったことが無い俺は、決して都合が良いときだけの難聴系主人公では無いと自信を持って言える
と言うことは、これはそういう意味だろうか?
いや、ちょっと優しくされたからって勘違いで好きになって、告白したら笑われるって喪男特有のアレだな
(え~何? ちょっとキモイんですけどぉ~ 勘違いさせちゃう私って罪な女だよねぇ~ あはははっ)
うっ…昔の記憶と言うか、古傷が蘇った…うん、間違いないな、危ない所だった…
喪男は何処に行っても喪男だ、勘違いによる恥を、かくことが無くなった俺は、安心して夕食を食べることにする
「ナンシーちゃん、夕食ぷりーず」
「はいはい~すぐにお持ちしますね~」
俺は席に着き、夕食を待つことにする
「お待ちどうさま~
ナンシーの愛情たっぷり注いだ、特別メニューです♪」
「おーこりゃ旨そうだ」
「当然です、でも、それだけですか? …まあ今の所はそれで良しとしますか。
それではごゆっくりどうぞ~」
さて、今日の夕食は、パンとハンバーグに野菜スープだ
ハンバーグにケチャップでハートマークが描いてある、マスターキモイぞ? ジェニファーじゃ無いのに何やってるんだか…
まあ、ハンバーグには罪は無い、食べることにする
パクリ…うん、相変わらず旨いが、ケチャップ多めだから少しトマトの酸味が強いな、まあこれはこれで良いか
パンとスープも併せて食べる、あースープが旨い…
「ごっそーさん」
日常の氷を作ってから部屋に戻った
今日は薬を大量に作ったから疲れたな、もしかしたらスキル上がってるかな?
最近確認するのを忘れるのが多いな、もう少ししっかりしないとな
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名前:ハル
年齢:20
状態:普通
LV:2
HP:15/15
MP:30/30
STR:9
VIT:5
AGI:4
INT:17
DEX:22
LUK:3
スキル:投擲Lv4、言語理解、剣術Lv1、激おこぷんぷんLv5(new)、魔力操作Lv4、生活魔法Lv4、鑑定Lv3、隠密Lv4(new)、解体Lv3、調合Lv4、索敵Lv3、直感Lv1、アイテムボックス
称号:命100、ケモナーLv2、暗黒変態紳士、薬剤師、ショーボン創造神の加護、中二病
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なんで激おこぷんぷんのレベルが上がってるんだよ…あぁ、納豆の件か
でも、中級以上になると上がりにくくなるんじゃなかったのか? 発動する度にレベルが上がるのはある意味怖いな…
隠密も上がってる、これは素直に嬉しい、ゴブリンを後ろから倒したりとしていたからだろうか?
まぁ、より安全に繋がるものだし、喜んでおこう
それほど期待はしていなかったが、やっぱり調合は上がらなかったか、出来ればこれが上がって欲しかったんだが、仕方ないか地道に頑張るしかないか
いつか今回の件みたいに必要になることがあるかもしれない、上げておいても損は無いだろう、お金にもなるしな
今日はマスターの都合も有ったが、自分の都合で解読作業が進まなかったな
今現在の時点で約半分だし、あと3日は掛かりそうだ、明日一度報告するべきだろうな
よし、予定も決まったし寝るとするか
おやすみなさい…ぐぅ
主人公だからと言って、何でも解決できる訳ないじゃないですよね。
ちょっとネタと言うか思い付きでパラレルワールド的な小説書いて見ました。こちらは続けるかは不明ですが…