一応報告に行ってみる
「お久しぶりでげすね、魔王様、今日も素晴らしいお耳とシッポが最高です。
え? あっしが魔王様のお耳と、シッポのお手入れをさせて頂いても宜しいんでげすか? はい!喜んで!!
ここか? ここがええんのか? くぅ~~~たまらん!!
どんな猫でも腰砕けにしてしまう、このフィンガーテクニックが役に立つ日が来るとは…」
ガバッ!
「…シッポは? あれ? 何だっけ?」
よく覚えていないのだが、アインシュタインの相対性理論についての矛盾と考察について、話し合っていたような気がする
おはようございます
今日は引き続き、レシピ本の解読だ、移動する必要も無いし、楽な仕事である
では、優雅に朝飯を食べに行くとするか
「これ、キース君、朝食を用意してくれたまえ」
「ははっ、お坊ちゃま、只今お持ち致します。
暫し、お待ち下さい」
あれ? いつものマスターはこんなこと言わないよな?
「お坊ちゃま、本日の朝食で御座います。
パンに、コーンスープ、サラダにミルクです。
ごゆっくりお楽しみして下さいませ」
「ま、マスター?」
「何でございましょう。お坊ちゃま」
「ごめん、俺が悪かった、勘弁して~」
「ふん、いつもの坊主の意趣返しだ。
少しはやられた方の気持ちも分かったか?」
「分かったけど、辞めるかどうかは別」
マスターはため息をついている
「ま、それが坊主らしいと言うか、何と言うか…」
なんかマスターは悟りを開いたような顔をしている…
仏教に鞍替えでもするのだろうか?
それはさておき、俺は朝食を食べながらマスターに聞いた
「それで、今日は昨日の続きをすれば良いのか?」
「そのつもりだ。ただ、こっちも宿の仕事があるし、10の鐘が鳴ったらここに来るで良いか?」
「いいぞ、なら一度ギルドへ行って、途中経過の報告してくるわ」
「わかった、まぁ、少しくらいなら遅れても良いぞ」
「了解~」
何かマスターが「途中経過って言う必要有ったか?」とかブツブツ言っているが、義務では無いが出来れば必要と言われているんだから、仕方ないじゃないか
俺は朝食を食べて、日課の氷を作ってから、ギルドへ向かった
・・・・
早朝のギルドはやっぱり混雑していた
時間にもまだ余裕は有るし、鉄鉱石の運搬も良いが、次の仕事の候補として、色々探しておくのも良いかもしれない
早速掲示板を確認することにする
最近この紛争地帯に入るのが平気になってきた自分が怖い…
今回見つけた依頼はこれだ
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【配達依頼】
目的 :荷物をカルデの街の冒険者ギルドまで運搬
期限 :2日
成功報酬:(銀貨2枚)
依頼失敗:荷物の紛失、期限の超過
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前は王都のだったが、これは隣町だ、まぁ、隣と言っても馬車で1日は掛かるみたいだが
往復で2日くらいなら、見分を広める意味でも、こういった依頼を受けても良いかもしれない
今回は別の仕事をしなくてはならないため、受けることが出来ない
おそらく別の人が受けてしまうのだろう、非常に残念である
と、そんなことを考えている内に、一人の冒険者がその依頼を取って持って行ってしまった
あれ? 今の人はどこかで見た記憶が…
あぁ! ナタリーさんファンクラブの人か、確か037番だっけかな? 名前は忘れた…って言うか、聞いたっけ? まあいいか
そろそろ空き始めたので列に並ぶことにする
俺の前に並んでいるのは、先ほど依頼を取った037番の人だ、もちろんナタリーさんの列だ、当然か
すると、後ろに並んだ人のことが気になったのか、声を掛けてきた
「君は、確かクリスト団長と話をしていた人だったね」
「え? クリストさんって騎士団とかそういった何かの団長さん何ですか?」
「そうか、君はまだ入会していなかったのか、クリスト団長は、ナタリーファンクラブの団長様さ」
「あ、そっちのなんですね…」
「君は、いつもナタリー嬢の所に並んでいるよね、会員にならないのかい?」
「そういった物は、特に考えていません。
並んでいるのは、最初に対応してもらったのがナタリーさんで、後は何となく…でしょうか?」
「そうか、まぁ、強制するものでもないし、構わないけどな。
一つ聞きたいことが有るんだが、最近、ナタリー嬢の表情が豊かになった原因が。君って噂が流れているけれど、どうなんだい?」
「そうなんですか? でも、どうなんでしょうね? たまたまだと思いますよ?
あ。順番が来たみたいですよ」
「そうかな? たまたまなのだろうか…
まあいいか、じゃあ俺は受付してくるか。
そうそう、忘れるところだった、僕の名前はアーサーだ」
「俺はハルです」
「ハル君、君も頑張れよ」
「はい、アーサーさんも、頑張ってください」
そう言ってアーサーさんは、ナタリーさんの所に向かっていった
何か名前もそうだが、態度もカッコいいな、何か品ってのも有るよな
某物語にもなっている、伝説を作った王とかだったりして…まさかな…
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、おはようございます。
一応、途中経過の報告です」
「ハル様、おはようございます。
報告ですね、詳細をお願いします」
「はい、現状5分の1が終わった所です。
なので、後4日、または5日ほどで終わると思います」
「そうですか、分かりました」
「それで、報告は毎日来た方が、良いでしょうか?」
「いえ、もともと義務では無いので、毎日来る必要はありません。
ですが、たまにで良いので、報告してくれると助かると言うか、何と言うか…ごにょごにょ」
照れた表情の上目使いで、お願いされてしまった…
いや、これ報告に来ない訳には行かないでしょ! 破壊力が凄すぎる!
「わかりました。時間が有れば報告に来ますね」
「はい、お待ちしています。
それでは、ナタリーが対応致しました。
ハル様、頑張ってください♪」
俺は報告も済んだので、ギルドを後にするのだった
ギルドを出た直後に何か歓声みたいな声が上がったが、何か有ったのだろうか
『君子危うきに近寄らず』って言葉も有るし、用事も済んだからさっさと帰ることにする
上目使いでのお願いは卑怯だと思います。