謎の生き物
うし、今日もゴブリン退治を頑張りますか
でも、昨日は結局2匹しか狩れなかったんだよなぁ…
やっぱり森の中に入らないと見つけられないんだろうか?
もし、森の中に入って、ゴブリンに会った場合、同じパターンで対応できるだろうか?
まぁ、やってみるしかないんだけどね
まずは周辺を散策、見つけられないなら、少しだけ森に入ってみる、このパターンで行ってみよう
森に到着したので、森に沿って移動する
結構すぐに索敵に反応、隠れてから集中して索敵すると、どうやら1匹だけみたいだ
ゴブリンかホーンラビットか、それとも別の生き物か、索敵では何かが居るのは分かるんだが、何の種類が居るのかまでは分からない、レベルが上がれば違うのだろうか?
とりあえず1匹だけなら確認後、問題なさそうなら森の中での戦闘を試してみるのも良いかもしれないな
隠密を発動し、音を立てずにゆっくり隠れながら近づく…
目視できる距離まで来たので、一度止まってもう一度詳細に索敵を行う、先ほどと同じ1匹だけみたいだ
位置を変えながら様子を伺ってみると、居たのはゴブリンだった、しかもお食事中
さてどうするか?
1、スリングショットで後ろから狙う
2.穴に落として倒す
3、近づいて後ろからブスリ
4.こっちを認識させ、1対1の戦闘を行ってみる
…1だな、外したら2に移行、それも失敗したら、仕方がないから4番かな
俺はゆっくりと気を付けながら後ろに回る、距離は10m問題ない距離だ
スリングショットを取り出し、勢いを付けて発射!…命中!
すぐに近寄り、首を刎ねる、ハメ技パターン入りました、無事に討伐成功~
やっぱり安全策は必要だよな、うん
討伐証明を取り、死体は放置することにする
穴を掘って捨てても良いが、1匹だけだし、森の動物やらが処分してくれるだろう
さて、次の獲物を探すとするか…
今は草原から森に入って15mくらいの位置だ、このまま何も対策をせずに奥に行くと、迷う自信がある
なので、今回は森の外が見える10mくらいの距離に沿って探索することにしよう
やはり森に入ると探索に引っ掛かりやすい気がする、先ほどから10分くらいしか経って無いにも関わらず、探知に引っ掛かったからだ
今度は2匹みたいだ、とりあえず近づいてみることにする
ん? 俺が向かう方向と逆の方向に移動して行ってしまった、しかも早いってことは走って逃げた?
どうやら俺の存在がバレたらしい、隠密は発動していたんだけどなぁ…たまたま?
いや、タイミング的にはバレたと考えた方がしっくりくる、と言うことは、向こうにもこちらを知る何らかの方法があったんだろう
問題は逃げたのが何かになるんだが、速さとかから考えてもゴブリンじゃなさそうだ
このまま進むべきか? もしかしたら頭の良い魔物が、誘い出している可能性も考えられなくも無い
俺は臆病者と呼ばれても構わないので、戻ることにした
10分ほど戻ると、また索敵に引っ掛かった、今度は3匹だ
さすがに3匹は無理だ、このまま森を出る方向にして逃げることにしようと考えた所で、その3匹が逃げて行った
「あれ? また逃げた?」
なんか不気味な感じだな、これは何かが起こる前に、帰った方が良いだろう
俺は森の出口に向かって移動をしようと思った所で、ふと気が付いた
さっきゴブリンを倒したのってこの辺りだよな? と言うか、さっきの3匹が居た場所ってゴブリンの死体の場所じゃね?
とりあえず索敵範囲には何も居ないため、ゴブリンの死体を確認しに行くことにした
殺人現場に到着した
まずは被害者に対し、祈りを捧げる…
「被害者の状況を教えてくれ」
「はっ! 被害者に死亡原因は、頭部への打撃、そして首への一撃が致命傷となったみたいです。
首への一撃を行った凶器はまだ見つかっていませんが、頭部への打撃につきましては、おそらくそちらに落ちている物だと思います。
ただ、現場に放置されたご遺体に対し、その後に何者がが襲った形跡があります」
「そうか、それで死亡推定時間は?」
「詳細に付きましては鑑識に回さないと分かりませんが、死後硬直の状態から判断しますと、死亡してから1時間以内かと」
「まだ、事件が起こったばかりか…犯人はこの近くにいる、怪しい人物を見かけたら、任意同行を行え」
「はっ!」
…と、まぁ、刑事ドラマごっこはここまでにしておいて、さっき放置したゴブリンだが、半分食われていた
どうやら何かしらの動物に食べられたんだと思う
近づいたら逃げるってことは、臆病と言うよりは用心深い生き物なんだろう
ただ、襲われないって保証も無いし、森の中の探索は止めておいた方が良いかもしれない
まだ成果はゴブリン1匹だが、お金に困ってないし、森の外での索敵、薬草集めに変更することにする
森の外に出て、薬草を集めつつ、ホーンラビットを1匹狩っただけで、時間も遅くなったので帰ることにした
薬草はそれなりに取れたが、ゴブリン1匹、ホーンラビット1匹が、今日の結果だった
そろそろ草原ではあまり稼げなくなってきたな、しばらく間を空けないと絶滅してしまうかもしれない…
ギルドに到着した。まだピーク前であったにも係わらず、結構混雑していた
並んでも良いが、今日の森の事が気になったので、人が減るまで資料室で調べてみることにした
お、丁度良さそうな本が有った、「森の魔物について」か、どれどれ?
・・・・
森に生息している魔物は主にゴブリンとオークらしい、もっと奥に行くとオーガが出るらしいが、それなりに奥に行かないと会わないらしいので、多分大丈夫だろう
他には森の掃除屋と呼ばれる魔物が居るらしい、通常は昆虫等を食べているみたいだが、森で死んだ動物や、魔物が居た場合は、それらを食べて綺麗にするらしい、骨まで食べるみたいなので驚きだ
たいてい2~3匹のグループで行動しているが、見かけることは無いとのこと、どうやら索敵が得意らしく、近づくと逃げてしまうんだとさ
どういった生き物なのか、色々と調べた人も居たみたいだが、どうやっても見つからなかったそうだ
例え死んだとしても仲間内で食べてしまうために、落ちていることも無く、どんな魔物なのかは不明とのこと
「ふむ、索敵に引っ掛かったのはコイツっぽいな。
森を綺麗にしてくれるってことは、要らない死体は放置でも問題なさそうだ。
しかし、隠密で行動していたにもかかわらず、逃げて行ったのは驚いたな。
どんな生き物だったんだろうか? いつかは見てみたいものだ」
本を棚に戻し、そろそろ窓口に行こうかと思ったら、ふと、ある本の背表紙が目に入った『ピッチ一世物語 第2章』、こ、これは!?
本棚からその本を取り出し、読んでみることにする
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ケルベロスを眷属にしたピッチ一世は、オーガを倒すべき旅を続けるのだった
「おい、主よ!」
「何だ?ケルベロスよ…ん? 主?」
「ああ、我は主の眷属となったのだ、だから主と呼ばせてもらおう。
それで何だが、眷属には名前が必要だ、何か付けてはもらえないだろうか?」
「そうだな…では、『イヌ』…はどうだろうか?」
「中々良い名だ、我をこれからイヌと呼ぶが良い」
「わかった、イヌよ、宜しくな」
「ああ、宜しく頼む」
しばらくイヌと一緒に旅をし、岩山の所までやってきた
「むっ!主よ避けろ!!」
ピッチ一世がその場から避けると、大きな岩がピッチ一世のいた所に落ちた
「なにやつ!」
「俺様の縄張りに入った愚か者め、生きてここから帰れると思うなよ?」
現れたのはキングエイプ、剛腕の死神と呼ばれる大きな人型の魔物だ
「イヌは左、俺は右から行く」
「まかせろ!」
イヌとピッチ一世対キングエイプは三日三晩の死闘を繰り広げた
「お前ら、中々やるじゃねーか、気に入ったぜ!
お前らとだったら、楽しい戦いが出来そうだ、眷属になってやるから連れってくれや。
ついでに、飯も食わしてくれると助かる。腹減っちまったんでな」
ピッチ一世は老夫婦から頂いたキュピダンプリングを取り出し、キングエイプへ与えた
「いいだろう、我はお前と共にあることを誓おう」
「これで契約成立だな、なぁ主よ、そいつは、主が名前つけたんだろ?
俺にも付けてくれよ、なぁ、いいだろ?」
「そうだな…お前は『サル』だ、どうだ?」
「おう、俺は、これからサルだ、宜しくな」
新たな仲間、サルを従えたピッチ一世は、イヌと共に、オーガの国に向け旅立つのだった
第二章 完
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「…面白かったな、キングエイプとの戦闘には、つい手汗を握る戦いだった」
やっぱり作者名は書いていなかったな
しかし、イヌ、サルと来たんだ、第三章はキジなんだろうな
早く続きが読みたいと思った
さてと、そろそろ窓口も空いてきただろう
俺は窓口に向かうことにした
「次の方どうぞ~」
「ナタリーさん、こんばんは、買取をお願いします」
「ハル様、こんばんは。
買取ですね、ホーンラビットが1匹で解体済み、ゴブリンが1匹なので銅貨2枚と鉄貨2枚になります」
「ありがとうございます」
俺は財布にしまうフリをしてアイテムボックスに収納した
やっぱり便利だなこれ
「何か調べ物でも有ったんでしょうか?」
ナタリーさんが聞いてきた
「今日、森で変な気配を感じまして、それについて調べてました」
「変な気配ですか? それってどんなのでしょうか?」
「実際見たわけじゃないから、どんなのかと言われると説明できないのですが、近寄ると逃げる魔物でしたね。
もしかしたら誘い込まれていて、罠に掛けられてしまうのかもと思いましたので、調べてみたんですよ」
「ああ、あの魔物ですね、ギルドとしても目撃情報が有ればいいのですが、全くの不明な生き物なんですよね。
一体どんな生き物なんでしょうね。きっと可愛いのではと思っているのですが…
とりあえず危険な生き物では無いみたいですよ?」
可愛いのだろうか? 個人的には、死体を漁る動物と言うことで、ハイエナのイメージが有るから微妙な感じな気がする
「それではナタリーが対応しました。
またのご利用をお待ちしております」
俺はギルドを後にし、宿へ帰ることにした
謎の生き物「俺、俺だよ、わかるかなぁ、わかんねぇだろうなぁ~(笑)」