ジェニファーの秘密
コンコン
扉を叩く音が聞こえ、目が覚めた…どうやら待っている間に寝てしまったようだ
扉を開けると、マスターが居た
「待たせたな」
「いや、寝てたから待ってた覚えはないけどな」
「じゃあ、食堂で話するか」
俺たちは食堂へ行き、適当にテーブルに座る
「折角だ、一杯やりながら話をするか」
そう言ってマスターは、冷たいエールを2つ持ってきた
売り切れじゃなかったんか? いや、予備の分を用意してあったんだっけな
「そういや、マスターとこうして飲むのは初めてだな」
「そうだな、じゃあ、どこから話すかな…」
マスターが目を瞑り、考え込んでいる…そして目を開けたら雰囲気が変わっていた
「ハニー…」
「えっ? ジェニファーか!?」
「えぇ、私の事は、私が話すべきだと思うの、彼には悪いけれど…」
そして、ジェニファーがぽつりぽつりと語り出した
「私の本当の名前は「熊田 涼介」です、ジェニファーは源氏名になるわ」
「その名前って、やっぱり日本から来たんだな」
「そうよ、私は新宿二丁目で、おかまバーを経営していたわ。
当時は彼氏もいて、幸せだったわ…でも、痴情の縺れで刺されてしまってね、おそらく死んじゃったんだろうけれど、気が付いたらこの世界に居たわ」
「俺と一緒だ、俺も電車に引かれたら、この世界に居たし」
「そうなんだ、もしかすると死がこちらに来る条件なんでしょうね。
話を戻すけれど、私は彼氏のために一生懸命家事をしていたおかげで、料理も得意だったの。
だから料理を仕事として一生懸命頑張ったわ、世界中を回って色々と勉強もしたし、日本に居た時の料理も再現したりと、これでも結構有名だったのよ?
王様に呼ばれて料理を作ったこともあるんだから」
「確かに飯は旨かったから、その点は納得だな」
「50年ほど頑張ったんだけど、歳には勝てなくて死んじゃったんだ。
だけど、私には心残りが有ったの、料理を食べてくれる彼氏と、料理を引き継いでくれる弟子かな。
その心残りのために幽霊になって、それから300年ほど彷徨っていたいたんだよね。
まぁ、今は、弟子ならキースが出来たので、そっちは解決したけれどね、彼、なかなか上手でしょ?」
「あぁ、正直ジェニファーほどでは無いが、マスターの料理も旨いと思う。
しかし、300年ってずいぶん長く…そーいや、ジェニファーっていつ、この世界に来たんだ?」
「もちろん忘れたことは無かったわ、1992年の7月よ?」
「俺が来たのは2018年の6月…計算が合わないな」
「多分、地球との時間の流れが違うか、時間がズレたんでしょうね、良くは分からないけど…
それでね、もう一つの心残りのせいで、キースには随分迷惑かけちゃったけどね」
「もう一つって彼に料理をだろ? マスターが食べたんなら解決してるんじゃないのか?」
ジェニファーは左右に首を振った
「キースは彼氏じゃないわ…私が求めたのは生前に付き合っていた彼氏よ…」
そしてジェニファーはジーっとこっちを見た
「お、俺はその彼氏じゃないぞ?」
「分かってるわよ、でもね、ハニーは彼にソックリなのよ、見た目じゃなくて中身がだけど、そして、同郷の人間でもあるしね。
ご飯を美味しそうに食べてくれるハニーを見た時から、私は凄く幸せだった」
「何で俺が同郷って分かったんだ?」
「何でかな? 多分女のカン…かな?」
「お前はもともとおかまだったし、女じゃないだろ?」
「あはははっ、そういう言い方も彼ソックリ…思い出すわ。
そうねぇ~最初に会ったときからピピッっと感じたのは本当なんだけど…
和食を箸を上手に使って食べているってのも有るし、でも、確実に分かったのは「切り火」かな。
知ってる? この世界には「切り火」って言葉も行動も無いわよ?」
「なるほどな、それは盲点だったわ。
それで、何で急にこんな話をしたんだ?」
「…私には、もう時間が無いから…」
「時間が無い? 何でだ?」
「幽霊の存在理由って知ってる?」
「恨みつらみ、思い残しだっけ?」
「そうね、そしてその思い残しが無くなると?」
「成仏する…ってまさか?」
「そう、多分だけど、私は成仏すると思う」
「何で? 彼に料理食べてもらってないじゃないか」
「料理なら食べてもらったわ、ハニー、あなたよ」
「俺? 俺はお前の彼氏じゃないぞ?」
「私の心が満足しちゃったんだし、仕方ないかな?
…ねぇ、2つ程、お願いしても良いかな?」
「何だ? 聞くだけ聞いてやる」
「これを、キースに渡して?」
何も無い空間から本を取り出した
「空間魔法か!? やっぱりそういう魔法って有るんだ!」
「これはアイテムボックスのスキルよ? 私以外に持っている人を見たこと無いから、もしかすると私個人のスキルなのかもね。
キースは使うことが出来なかったみたいだから…」
「同じ異世界転生なのに、何で俺にはそういったチートをくれなかったんだ!! ガッテム!」
「…ハニー、手、出してくれる?」
「手? 何だ?」
俺が手を出すと、ジェニファーが握ってきた
すると、何か暖かいものが入ってきたのが分かった
「どうやら渡すことが出来たみたい、アイテムボックスの中身はハニーが好きにして良いわ」
「え? スキルって譲渡できるものなのか?」
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名前:ハル
年齢:20
状態:普通
LV:2
HP:15/15
MP:30/30
STR:9
VIT:5
AGI:4
INT:17
DEX:22
LUK:3
スキル:投擲Lv4、言語理解、剣術Lv1、激おこぷんぷんLv4、魔力操作Lv4、生活魔法Lv4、鑑定Lv3、隠密Lv2、解体Lv3、調合Lv4、索敵Lv3、直感Lv1、アイテムボックス(new)
称号:命100、ケモナーLv2、暗黒変態紳士、薬剤師、ショーボン創造神の加護、中二病
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「ホントにスキルが増えてる」
「多分、私が幽霊で、ハニーが異世界転生者だからだと思う、何となく出来そうな気がしたから…」
「最高の贈り物だ、サンキューな」
「うん、じゃあ、この本はレシピ本なんだけど、キースに渡しておいてね。
それで、あと一つのお願いなんだけど…ハニーの名前教えてくれる…かな?」
「俺の名前は「響 晴彦」だ、良い名前だろう?」
「うん、ありがとう…晴彦、最後にあなたに会えて良かった…
どうやら、そろそろ時間みたい…」
「なら、最後に俺からも一言、俺はお前の性格が嫌いでは無かった。
よく気が付くし、飯も旨かった、ジェニファーがケモミミ美少女だったなら、嫁にしても良いと思った」
「そっか、残念だったな…
なら、次に生まれてくるときは、絶対、ケモミミ美少女になってやるんだから…
それじゃね、晴彦…バイバイ…」
「ああ、今度会ったときは、ケモミミ美少女な。
だから、さよならは言わない、またな。
そして、最後だから言ってやる、パンのお代わりだ、ジェニファー愛してるぞ!」
「え~~~!! ほんとに? 凄く嬉しい!!」
「…おい、成仏するんじゃなかったのか?」
「幽霊の存在意義って何だっけ?」
「…思い残し」
「そ、愛するハニーを残してあの世何て行けないじゃない、ミャハ☆」
「お前なんか嫌いだ、顔も見たくない、さっさと成仏しろ!
第一、ケモミミ美少女になってから会うんじゃなかったのか?」
「ふふ~んだ、もう取り消しできませ~ん♪」
「なんてこった…」
軽はずみな事を言うべきじゃないってことを学んだ俺であった
「これからハニーと一緒に愛の生活が始まるのね! 楽し…」
12の鐘が鳴った
「…折角の居なくなるチャンスだったと言うのに、貴様と言うやつは~!!」
「マスター? は、話せば分かる、ギブ、ギブ~~!!」
何とかマスターを落ち着かせ、部屋に戻ってくることが出来た
何か疲れたのでさっさと寝ることにする、おやすみなさい…ぐぅ
当初のジェニファーは単なるマスターの趣m…げふんげふん、二重人格だった
次に考えたのは別の人物と1日だけ入れ替わるパターン
最後は同じ世界の転生者、このパターンですね。
書いている途中は成仏して居なくなるパターンだったんだけど、最後の最後になって消せなかった…
今後どうなるかは、神のみぞ知るですね。




