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第4話 やっぱりこのJKはドSでした。

 あぁ、あったかくて柔らかくて……安心するなぁ。

 まるで生クリームのお風呂みたい。入ったこと無いけど。

 もう、このまま溶けちゃいそう……

 

 ……ん? なんだか本当に溶けそ……


「……って、なんだこるぇぇぇ!」


 がばっ! とヒヨコは身体を起こす。

 顔にぼたぼたと謎の液体が垂れて来る。


「おーヒヨコ起きたか。急に倒れるから、脳の回路でもショートしたのかと思って心配してたぞ」

「誰が8bitよ! じゃなくて! なにこれ! なんか頭についてるぅぅぅ!」


「あー、ベンチにそのまま寝かせるのも悪いと思ってさ。そしたら冒険者のおっさんが枕にって貸してくれたんだよ。大事なペットだって言ってたから、お前それ傷付けるなよー」


 ヒヨコは頭に手を伸ばし、枕と言われたそれを取る。

 きゅぽっという音と共に抜けると、大量の謎の液体が漏れ出た。


「なにこれぇ……びちょびちょなんですけど。っていうかねちょねちょして気持ち悪いんですけど!」

「なにってお前、食虫植物と粘液だろ」


 食虫植物と粘液。なるほど。

 それは気持ち悪くて当然だ。仕方無い。


「じゃないんですけど! なに勝手に納得したみたいなナレーション入れてんのよ! 大体なんで食虫植物を枕にするのよ! ツッコミきれないんですけど!」


 キィーッ! と叫びながら発狂したヒヨコが、粘液で濡れた髪を振り乱しながら暴れる。


「おいおい、人様のペットを振り回すなよ。それにお前も気持ち良さそうに寝てたじゃないか。頭が少しふやけるだけっておっさんも言ってたし、いちいちリアクションがオーバーなんだよお前」


(倒れた人の……いえ、女神の頭に食虫植物くっ付けた挙句粘液まみれにして、なんでそんなに平然としてるのよ! 私、なんでこの子のことを自分より女神みたいなんて思ったんだろう……嫉妬するなんてありえない、ドSの悪魔じゃないの!)


「あの、ミオ……さん? 一つ聞いてもいいですか?」

「何だよ。あ、汚いからそれ以上寄るなよ」

「酷いっ! じゃなくて、いや酷いのは事実だけど! あんた、転生前はあんなに完璧人間みたいなウザいキャラだったのに、なんで私の扱いだけこんなに雑なのよ!」

「いやー、私も前の人生では頑張って綺麗に生きたからさ。今度は我慢せず、自分の為に生きようって決めてたんだよね。だから転生希望出した訳」

「つまり……これが、あんたの素?」

「そゆこと」

「うわぁぁぁぁん」


 突然ヒヨコが泣き出す。

 うわ面倒くせぇ……という表情で、それでも一応心配した素振りを見せようと肩に手を伸ばしたミオは手を引っ込めた。


「……大丈夫か?」

「今! 手引っ込めたでしょ! 私の肩、粘液で濡れてるからって! もうやだよぉぉぉ帰りたいよぉぉぉ! 私これからずっと、ドSにいじめられ続けて生きるんだ……あれ? でもそれって天界学校の頃と同じなような……」

「うるせぇーな、いちいちピィピィ泣き叫ぶなよ。お前の泣き芸もそろそろ飽きてんだよこっちは。分かったらさっさと髪洗って来いよ。シャワーは冒険者特典で無料らしいからさ」


 ヒヨコは悲しそうに立ち上がると、とぼとぼとシャワー室へ向かっていった。


「まったく、せっかく転生したのにお供があれじゃあなぁ。選択ミスったかなぁ。……あれ? そういえばあいつ、着替えどころか荷物って一切持ってなかったよな……ま、いっか」


 その頃、シャワーを浴び、粘液も涙も流したヒヨコは気付いた。


「私……着替え、ない」





 こんにちは。ヒヨコです。ご存知ブロガー女神やってます。


 私ね、ミオさんに産廃って言われてショックのあまり気絶しちゃったんですよ。

 だってね、女神ですよ? 私。

 普通、産廃とか一生言われるはず無いじゃないですか。

 免疫とか無かったんですよ。そういうのに。


 でですよ、そうは言っても流石にミオさんも気を失ってる私のことを捨てて行くような人ではないと思っていたんです。

 実際、隣にずっと居てくれたそうなんですが……これ、心配してたとかそういうのじゃないんですよね。

 後で他の人から聞いたんですけど、私が食虫植物に徐々に飲み込まれていくのを楽しそうに眺めていたそうです。

 ……私、気絶して目覚める時って、膝枕の柔らかさとぬくもりに驚いて飛び起きる。ってパターンのテンプレが起きると思ってたんですよ。

 別に期待していたとかじゃないんですけどね、全然そういうのじゃないんですけどね、まさか食虫植物の柔らかさとぬくもりで起きるとは思っていなかったですね……食虫植物なこと以外は正解だったんですけどね……。


 私、ミオさんのこと、まだ良い人だと思ってたんですよ。

 だって、死に際に、自分を殺した人と、自分が庇った人、両方に気遣いしてるんですよ?

 その事実だけで、少し安心していた自分がいたんです。


 でもね、これ、逆パターンなやつでした。

 ミオさん、根っからのドSです。

 しかも、転生前の18年間分の反動が今、私に向かって来てます。

 ……どうなるんでしょうね? 私のこれからって。


 以上、異世界特派員のブロガー女神ヒヨコでした。


 ……私、本当にどうなっちゃうんでしょうか!?

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