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第3話 ギルドに登録します!

 光のトンネルを抜けると、そこは小さな教会だった。

 定期的に人が来ているようで、古いが綺麗に掃除されている。

 祭壇には優しそうな目をした女神像が飾られており、ミオが思わず隣と見比べた。


「えぐっ……えぐっ……もうやだぁ……」


 無様に泣いている女神がいた。


「いつまで泣いてんの。もう異世界来ちゃったんだし、いい加減覚悟決めなよ」

「あんたねぇ! 私、今あんたのせいで泣いてるんですけど! 慰めて! ねぇ、せめて慰めてよ!」

「はい? 誰のせいだって?」


 ヒヨコの表情が一瞬で硬直する。

 先程の事がトラウマになっているようだ。


「な……なんでもありません! 私の自業自得です。ミオ……さん」

「よろしい。とにかく外に出よ。まずは冒険者ギルド? に登録しなきゃいけないんでしょ」

「そーですそーです。確か、広場の前にギルドはあるはずです」


 ヒヨコは涙を拭うと立ち上がった。

 彼女はすぐ泣くが、立ち直りも早いのかもしれない。

 それが性格によるものなのか、頭が弱くて数秒前の感情すら記憶出来ないからなのかは分からない。


 外に出ると、中世風の街並みが広がっていた。

 人の往来は多く、それなりに賑わっている街のようだ。


「おー! 全くビルの無い街並みを見るのって、初めてかも」

「確かに。思ってたより綺麗な街ですね。実は私も下界って普段見てるだけなので、来るのは初めてなんですよ」

「魚屋……肉屋……服屋に、防具店! こういう店を見ると異世界って感じがするなぁ」


 広場なら街の真ん中だろうという予想でそれらしき方向へ向かっていくと、広場があった。

 噴水の周りには冒険者と思われる者達が集まっており、非常に活気がある。


「ミオさーん! ありましたよ冒険者ギルド!」


 冒険者ギルドは大きな石造りの建物だった。

 入ると天井が高いホールのようになっており、左手には受付嬢が立つ窓口が沢山並んでいる。

 右手には木のテーブルがいくつか置かれており、大きな窓から差す光が反射している。

 これまで多くの冒険者達がそのテーブルに、酒と、肉の脂、悔し涙や嬉し涙、もしかすると喧嘩で流れた血をこぼしてきたのだろう。

 汚れの染み込んだ、厚みのある立派なテーブル達はさながら歴戦の戦友のようだ。


「……いや、こぼしたらちゃんと毎日拭きなさいよ」

「ヒヨコ、こっちの窓口で登録受付するみたいだぞー」

「あ、はーい!」


 テーブルに向ってツッコミを入れていたヒヨコはミオのもとへ走って行く。


 窓口には綺麗な受付嬢のお姉さんがいた。

 やや垂れ目でおっとりとした顔に、制服の上からでも分かる巨乳。

 きつそうな胸元に付けられた名札には、ミルクと書かれていた。

 ヒヨコはミルク、ミオの上半身を自分と見比べる。


(乳牛女……負け。ドS女……勝ち。一勝一敗だから実質負けてないわね)


 くだらないことばかり考えているヒヨコを置いて、ミオとミルクは話を進めていた。


「本日は冒険者登録ということでよろしいですか?」

「はい、私達二人分お願いします」

「ではまず、ステータス測定を行いましょう」


 そう言うと、ミルクは手帳を差し出した。


「これは冒険者手帳です。あなたのステータスや習得済みのスキル、魔物の討伐履歴にクエストの履歴……冒険のあらゆる情報が記録されていきます。再発行は有料ですので、大切になさってくださいね」


 魔法具なので再発行はお高いですよ~。と忠告される。


「では、こちらの冒険者手帳に手を置いてください。あなたの情報を手帳に登録します」


 ミルクに二冊の手帳を渡されたミオは、ヒヨコの頭を叩く。


「おいヒヨコ、ぼさっとしてるなよ。これお前の手帳だぞ」

「あ、うんごめん。私勝っちゃって」

「何言ってんだお前? ほら手帳」

「ありがと」


 頭大丈夫かこいつ? という表情でヒヨコを見てから、ミオは手帳を渡す。


「では、どうぞ」


 二人が手帳に手をかざすと、光と共に小さな魔法陣が展開され、サラサラと文字が書かれるような音がした。

 光は収まると、ミルクは手帳を開くように言った。


「ミオさんのステータスは……いいですね。全体的に非常に優秀です」

「本当ですか? やった!」

「魔力が低めなので、魔法使い等の魔力を多く消費するクラスは難しいかもしれませんが、魔法剣士等の補助的に魔法を扱うクラスなら大丈夫でしょう! 物理系でも様々なクラスが選択出来ますし、こちらのパンフレットを見てじっくり選んでみてくださいね」


 ミオは嬉しそうにパンフレットを受け取り、ステータスと見比べながらパラパラと見ている。


「ヒヨコさんは……凄い! 魔力の保有量が測定不能になっています。私、測定不能なんて初めて見ましたよ!」


 ヒヨコのステータスを見たミルクは、驚愕の声を上げた。

 なんだなんだと周りの冒険者達も集まってくる。


「なんだヒヨコ、お前凄かったのか」

「当然でしょ! なんて言ったって私、めが……天才なんだから! 私を散々雑に扱ったことを後悔しなさい!」

「嬢ちゃん凄いな! 俺も測定不能なんて初めて見たよ」

「存在したんだな、測定不能って」

「ギルド屈指の英傑でもそんなの見たこと無いぜ」


 皆がヒヨコを囲んでわいわいと盛り上がっている。

 ヒヨコは胸を張り、誇らしい気持ちになった。


「魔力以外のステータスは……筋力、普通。俊敏、普通。器用さ、少し低いですが大した問題ではありませんね。運、これも低くても大丈夫です。体力も回復で何とでもなり……あ……」


 急に黙ったミルクに、どうしたんだと皆が注目する。


「知能……最低クラスです。魔力を最大限に活かすには知能が必須なのですが……これだと、初級魔法しか覚えられません」


 心底残念そうな、そして哀れむような目で申し訳無さそうにミルクは告げた。


「あっ……そうか……」


 周囲の冒険者達も哀れみの目を向けて来る。


「ちょっと! ちょっとやめなさい! その目で私を見るのをやめなさいよ!」

「ヒヨコ、落ち込むなよ。全体的に低ステータス、唯一の長所の魔力が活かせなくても、きっとなんとかなるさ。肉盾とか、囮とか。人は諦めない限り無限の可能性があるって偉い人も言ってたぞ。まぁ、私は絶対お前とパーティ組みたくないけどな。産廃女神」

「さっ産廃……きゅぴぇぇ……」

「おっおい大丈夫か嬢ちゃん!!」


 目の前が真っ暗になった。

 死にかけの蛙のような声を出すと、気を失って倒れた。





 どうも皆さん、ブロガー女神のヒヨコです。

 

 私、異世界って嫌だ嫌だって言いながら、まぁ少しは、1ミリくらいは期待もしてたんですよ。

 だって私、腐っても女神ですよ?

 人間社会に入ったら、強いに決まってるじゃないですか。

 他の冒険者達に尊敬されて、街でもヒーローで、そういうのも悪くないかって思ってたんです。


 でもね、そんなに甘くなかったですね。

 私、一応女神ですから死んだりはしません。状態異常耐性も高いです。

 もちろん魔力も最強! 女神なので。

 これは女神共通の事なんですけど、私個人のステータスも結構高いんじゃないかって、思ってたんですよ。

 前衛から後衛まで何でも選べますよ! 是非うちのクラスに! みたいな勧誘始まるんじゃないかって。

 パーティとかも皆が誘ってくれて、逆オーディションみたいな。


 でもね、やっぱりそんなに甘くなかったですよ。

 なんだかんだでパーティ組んでくれるだろう、だって一緒に異世界転生した仲間だもん。って思ってたミオさんに、私がなんて言われたか覚えてます?


 産廃


 もうね、目の前真っ暗ですよ。

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