第18話 大怪鳥襲来です!
「スクランブル! スクランブル! 大怪鳥オーアイーター襲来! これは訓練ではありません! 繰り返します、これは訓練ではありません!」
緊急事態の鐘が鳴り、街中にミルクの声が響き渡る。
冒険者達は走って外壁へ向かっている。
「ミオ! ついに来ちゃったわよ! ねぇどうする!? どうすればいいの!?」
「とりあえず向かうぞ! ヤバそうだったら……その時はその時だ!」
街を出ると、冒険者達が集まっていた。
「ねぇちょっとあんた、今どんな状況なのよ」
「あぁヒヨコ髪の嬢ちゃん! 見ろよ、上だ。初めて見たが……あんなん勝てる訳がねぇ……」
モヒカンの冒険者に言われて空を見上げると、それはいた。
大怪鳥オーアイーター。
家よりも大きく、その影に覆われれば夜かと見紛う程に巨大。
今は上空を旋回し、これから襲う街を値踏みしているかのようだった。
「おいヒヨコ見ろ、リリィだ!」
大怪鳥を監視していた対策パーティが合流する。
「リリィ! 大丈夫か!」
「ミオ殿! 今はまだ戦闘は起きていませんが……しかしあの様子だと……じきに交戦せざるを得ないと思われるであります」
普段のリリィとは違い緊張感のある表情をしていることに気付き、ミオの表情も引き締まる。
「ジェルムの皆さん、初めまして。先程、ギルド中央本部より到着しました、キタマキと申します。これより私がこのクエストの指揮を執ることになりました。難しいクエストですが、どうぞよろしくお願いします」
対策パーティを従えて前に出た男が言った。
まだ若く、三十路前だろうか。背の高い爽やかな美男子で、茶色のジャケットを羽織っている。
冒険者と言われなければ、旅行中の貴族と勘違いしそうな恰好だ。
「あれは……『ホーリー』キタマキ!」
「なに『ホーリー』キタマキだって!? 魔王軍幹部の攻撃を幾度も退けたという、伝説の魔法使い……っ!」
「まさかこんな大物が応援に駆け付けてくれるとは! 『ハチクマ』だけでなく『ホーリー』までとは……こりゃあなんとかなりそうだ!」
キタマキは相当有名なようで、冒険者達の士気は一気に上昇する。
「皆さん、どうか油断しないでください。剣は届かず魔法も効かず、矢は羽ばたきで落とされる……そんな相手をするのは私も初めてですが、今回の作戦の主力『ハチクマ』リリィさんの魔弾砲で翼を狙い、地上へ撃ち落としてから総攻撃にて撃破を狙います」
キタマキは淡々と説明するが、彼とリリィの表情からも明らかに難しい作戦だと分かる。
「魔法攻撃は有効打となり得ません。ですので、魔法使いの方々は私と共に補助魔法にてサポートをお願いします。近接班の皆さんは遠距離班を守りつつ待機です。大怪鳥の弱点は頭上のトサカ、それ以外への攻撃では仕留めることができません。近接班の皆さんは大怪鳥が地上に降りた後、すみやかに脚を攻撃、転倒させトサカを狙ってください。以上、クエスト開始!」
キタマキの号令で全員が持ち場に着く。
ヒヨコとミオは作戦を簡単に確認した。
「つまり、魔法使いが補助しつつリリィが大怪鳥の翼を攻撃して飛べなくするのよね。で、大怪鳥が飛べなくなったら私達でボコボコにして転ばせて頭のトサカを攻撃! ということよね」
「そうだ。そう上手くはいかないだろうが……しかしこの作戦、半分以上はリリィにかかっていると言っても過言じゃないぞ……大丈夫だろうか……とにかくヒヨコ、お前は言われた通りにちゃんとやるんだぞ、先走るなよ!」
「分かってるわよ! 私だって大怪鳥の餌になんてなりたくないんだから!」
大怪鳥は街の上空を一周してから、キェェェ! 恐ろしい声で鳴いた。
「来ます! 総員、攻撃に備えてください!」
キタマキが叫ぶと同時に、大怪鳥が急降下をした。
大きく広げていた翼を閉じ、まるで弾丸のように向かって来る。
「えぇぇぇ! こんなの無理無理無理無理!」
狙いはヒヨコ達の第一班だった。
防御陣形を組んでいたが、冒険者達は悲鳴を上げ逃げ出す。
「ちょっと! 前衛無しじゃ私達どうすれば! ぎゃあああ!」
守られていた魔法使い達も悲鳴を上げ霧散する。
「皆さん落ち着いて陣形を立て直してください! 第二班以降は攻撃準備!」
しかし大怪鳥は止まらない。
高速で飛び回ることで陣形を崩し、魔法使い達に補助魔法を撃たせない。
「キタマキ殿! サポート無しではとても命中は無理であります!」
「リリィさん、チャンスは必ず来ます! なんとか動きを止めますからチャンスを逃さないようにお願いします!」
「了解であります!」
そうは言うが、主力の二人も焦りを隠せない。
キタマキもリリィも、これまで一人で多数の敵を倒した。という形で伝説を残してきたのだ。
そもそも強大な一体の魔物を相手にするという状況は稀で、経験のある冒険者は少ない。
ギルドとしても、少しでも戦力として期待できる人選をしたのだが、大怪鳥という災害級の魔物を相手にするには、人間側には明らかに経験が足りなかった。
百人を超える冒険者達を相手に、大怪鳥は無双状態だ。
まるで嘲笑うかのように上空へ戻り、キェェェ! と鳴いては急降下攻撃を繰り返している。
「ちょっとミオ、これほんとにヤバいわよ! 全然打つ手なしじゃない!」
攻撃を避けるように走りながらヒヨコが叫ぶ。
先程からの急降下攻撃で、徐々に戦力は損耗していっている。
ミルクが指揮するギルドの救護班がタンカで負傷した冒険者を運んでいるが、救護班にも焦りの色が伺える。
「きゃあああ!」
背後でチヤの悲鳴が聞こえた。
「チヤ!?」
振り向くと、救護班の手伝いをしていたチヤの方へ大怪鳥が向かっていた。
チヤが走ると、それを追うかのように大怪鳥が方向を変える。
「なんで狙われてるんだ!? 大怪鳥は鉱物を狙うから、武器を持った冒険者が先に狙われるはずなのに!」
「ミオ見て! チヤの首!」
チヤの首で、何かが小さくキラリと輝く。
「あんな小さなネックレスで!?」
「ミオ、チヤの首の石は高そうな翡翠だったわ!」
「目ざとい鳥が……くそ、行くぞヒヨコ!」
ヒヨコは巨大ひよこに変身し、ミオが跨る。
「チヤー! 掴まれぇー!」
ヒヨコに跨って走るミオは、チヤへ手を伸ばす。
それに気付いたチヤも手を伸ばすが、指先が触れ合うだけで腕を掴めなかった……
「なんてことにはさせない! アロン・〇ルファ!」
ミオの手とチヤの指が接着され、ぐいと引っ張られる。
間一髪で大怪鳥をかわすと、チヤをヒヨコの背へ引っ張り上げた。
「大丈夫か、チヤ」
「はい、なんとお礼を言ったら……」
「礼なんていいけどさ、その……指は?」
「実はグギィッという音がしましたので、回復魔法をかけて貰いたいですわ……」
半泣きのまま笑顔を浮かべたチヤを見て、ミオは胸を撫でおろした。
ミルクのもとへチヤを送り届けると、チヤはミルクへ駆け寄り抱き付いて泣いた。
「お二人ともありがとうございます。間一髪でしたね……それにしてもまさかヒヨコさんにそんなスキルがあったなんて……」
「そんなことより、ここは危険だ。もっと下がった方がいい」
「そうよ、こんな前線じゃ今みたいに襲われかねないわ」
ヒヨコとミオはミルクに言うが、ミルクは首を振る。
「街の為に、冒険者の皆さんが戦っているんです。私達だけ下がる訳にはいきません! 救護活動だけでもしないと……守りたいものを、あなた達を失ってしまいますから。大丈夫、もうご迷惑はおかけしません。それに、命をかけているのは、あなた達だけじゃない、私達だって同じつもりです! 剣で戦う力は無くても……一緒に別の力で戦います! それが、ジェルムのやり方ですから!」
救護班のメンバーも無言で頷く。
ヒヨコとミオは顔を見合わせると、言った。
「皆が命をかけて、それぞれの武器で戦ってくれてるんだ。いいさ、興が乗った! こっからは私達も本気、出さなきゃぁなぁ?」
「今のミオさんの顔、とっても悪役面だけれど……いいじゃない、女神のヒヨコ様に任せなさい!」
こんにちは。ブロガー女神のヒヨコです!
ついに来ちゃいましたね大怪鳥……まさかこんなに大きいなんて。
というか、戦っている全員が初見なんですよ。
皆さんは初見プレイで倒せたボスってどれくらいいますか?
私は天界学校にいた頃によく地球のゲームをしましたが、殆ど攻略本を読みながら十回くらいは挑戦していました!
……いえ、私がゲームが下手だとかそういう話じゃないんですよ。
それくらい難しいボス戦で、全員初見、しかも攻略本なんてものも無く、なんとなく弱点を噂で聞いている程度。
そんな状況でですよ、初見ノーミス撃破とかできると思います?
……はい、無理ゲーですね。
でも、ここで戦わないと、勝たないと、私達の街が無くなっちゃうんですよ!
大怪鳥オーアイーターはその名の通り、鉱石を食べてしまう魔物ですから。
街中ボロボロにされてしまいます。
しかも噂によれば、人間の骨も好物なんだとか……。
だから、私も本気を出しますよ。
もう一度……帰ってらあぬん全マシ超盛らん魔を食べる為に……
以上、決意の女神ヒヨコでした!




