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【駄女神×ドSなJK】ブロガー女神の残念異世界生活  作者: 棚丘えりん
【外伝】変態匂いフェチ百合ガンナー・リリィの少しだけハードボイルドなお話
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魔弾砲手『ハチクマ』のリリィ 第5話

「閣下、送り込んだ装甲蜂が……全滅しました」


 立派な椅子に座り、肘掛けにもたれかかりながら酒を飲んでいるスピアに執事が告げた。


「ほぅ……運が良いものだな。一体、どんな強豪パーティがいたのだ?」


 自身が送り込んだ装甲蜂が全滅したと聞いても、全く動じない。

 やはりスピアにとっては、これもまた一つの退屈しのぎだったということだろうか。


「こちらに、遠隔通信魔法で報告させていた戦闘の記録が」


 そう言うと、執事は魔法具の鏡を差し出す。

 スピアが受け取ると、鏡の中に映像が流れた。

 どうやら、装甲蜂の視点からの記録のようだ。


「ほぅ……腕の良いガンナーがいたようだ。それに、機転も利く。しかし、おい、他の冒険者が映っておらんぞ」

「それが、どうやら街に残っていたのはその少女一人だったようでして」


 なんだと? とスピアも驚いた顔をする。

 グラスを置くと、少し考えるような顔をしてから言った。


「すぐにミードへ向かう。ついて参れ」


 スピアがそう言うと、従者達がバルコニーの窓を開ける。

 別の従者が恭しく外套を差し出すと、するりと腕を通し、バルコニーに出た。

 バサリ。と大きな羽を背中から生やすと、スピアと執事は勢いよく空へ飛び出した。



 ミードは静けさに包まれており、生き物の気配は全て消えていた。

 ただ、壊れた噴水から溢れる水の音だけが響き渡る。


「閣下、あちらから血の匂いが」


 二人が血の匂いを辿って行くと、血だまりの中にリリィが倒れていた。

 ヒュー、ヒュー。と微かに聞こえる呼吸音から、かろうじて生きていることが分かる。

 しかし、大量の血を流し、内蔵もぐちゃぐちゃになってしまったのだろう、その命はもう長くないと容易に想像できる。


「おやおや。死にかけじゃないか。うちの子達を全滅させたとは言え、流石に無傷では済まないか」

「いかがされますか? トドメならば私が」


 執事が腕をリリィの首に向ける。

 その腕からは、鋭利な刃が生えていた。


「いや、やめておけ。これ程の大馬鹿者は、そうそう出会えるものではないからな」

「では、どうするので?」


 スピアはリリィの傷口に触れると、指先からどろりとした液体を出した。

 傷口に塗られた液体は、シュー……という音を立て、傷口を焼いていく。

 リリィは苦しそうに呻くが、意識は失ったままだ。


「これで傷口は塞いだ。あとは内臓と血か」


 そう言うと、スピアはリリィの首に爪を突き刺す。

 彼女の爪は非常に鋭利で、管の機能も持っている。

 スピアの爪が真っ赤に染まり、リリィへ血が注がれていく。


「閣下! この人間に血を注ぐのですか!」

「なんだ、私の血を預けるに相応しい者が他にいるか? さて、これくらいで大丈夫だろう。あとは私の血に含まれた魔力が、自然治癒力を活性化させる。目立つように狼煙を上げておけ。討伐を知った人間共が回収に来るだろう」


 スピアはリリィの冒険者手帳を確認すると、愉快そうに笑った。


「リリィか。これからが楽しみだな……せっかく助けてやったのだ、また、楽しませておくれよ?」


 そう言うと、スピアはまたバサリと羽を広げ、空へ飛び立った。

 

 スピアと執事が居城へ飛び立ってしばらくした後、ギルドに緊急編成されたスクランブルパーティはミードへ向かっていた。


「おい、狼煙が上がっているぞ!」

「って事は、嬢ちゃんは生きてるのか!?」

「人質に取られているという可能性もあるぞ……総員、警戒を怠るな!」


 冒険者達が街に入ると、戦いで崩れた広場と大量の装甲蜂の死骸が目に入って来た。


「すげぇ……これ、全部あの嬢ちゃんがやったのか」

「あぁ、一体何十匹倒したんだ」

「おい! 嬢ちゃん見つけたぞ! まだ息はある!」


 回復魔法が三人がかりでかけられる。


「どうしたんだ? 不思議そうな顔をして」

「……何故だか分からんが、治療の痕跡がある。それに、流した血に比べて容体も酷くない……」

「ほんとかよ!? でもとにかく生きてて良かったよ。おい! 本部に連絡だ!」


 しばらくして、避難していた人々もミードに戻って来た。

 誰もが、街に残された巨大な装甲蜂の死骸の山を見て言葉を失った。

 そして、そこであった壮絶な戦いを想像するのだ。


 今回の事件を受け、ミードには小さいが冒険者ギルドの派出所が設置された。

 隣町にある本部と連携しつつ、スピアの再来に備える為だ。

 しかしもう一つ、人々がギルドに頼み込んだ理由があった。

 もう二度と、誰か一人が命を賭さずとも良いようにと、誰もが願ったからだ。

 派出所の設置には多くの予算が必要とされたが、住民や当時いた冒険者、噂を聞いた近隣の人々から大幅に上回る寄付が集められた。


 ミードは、今この時だけでなく、未来すらも守られたのだ。

 たった一人の、命を賭した冒険者によって。

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