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【駄女神×ドSなJK】ブロガー女神の残念異世界生活  作者: 棚丘えりん
【外伝】変態匂いフェチ百合ガンナー・リリィの少しだけハードボイルドなお話
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魔弾砲手『ハチクマ』のリリィ 第4話

 装甲蜂が街の入り口を通過した。

 と、その瞬間、建物の陰が光ると同時に、転がされていた酒樽が爆発した。

 装甲蜂の大群は一瞬で吹き飛んだ仲間達に驚いたのか、進撃を止める。


「距離30セット……風補正2……発射!」


 建物の陰がまた光る。


「豪快魔弾・ハナビ」


 ヒューという音と共に魔弾が飛来すると、装甲蜂の群れの中で爆発する。

 飛散した火の粉が、さらに周囲に転がされていた酒樽に引火し、そこら中で大爆発が起きる。

 花火のように火の粉が爆散し、羽を焼かれた装甲蜂達が次々と地に墜ちる。


「あと半分と少し……どうでありますか、至上最も高価な爆弾の威力は」


 次のポイントへ移動しつつ、リリィはにやりと笑う。

 決して余裕は無いが、作戦通り、酒樽を利用した爆発で半分近くの敵を仕留められた。

 仲間を焼かれ、怒り狂った装甲蜂達はリリィを追って飛んで来る。


「流石に速いでありますね。でも、群れで飛ぶなら……ここならどうです?」


 リリィは、石造りの建物に挟まれた路地へ飛び込む。

 装甲蜂もすかさず飛び込むが、その瞬間路地の中から光と煙が溢れる。


「超槍魔弾・クロガネ」


 閉所に誘い込まれた装甲蜂は、超高速で撃ち出された砲弾によって貫通される。


「3匹撃破、リロード! もういっちょう!」


 ボウッ! という砲撃音と共に、砲身から見えない砲弾が撃ち出された。


「疾風魔弾・ハヤブサ」


 その魔弾は、空気の塊を撃ち出す物だった。

 薄い羽を折られた装甲蜂が路地の外に弾き飛ばされる。

 何事かと集まって来た他の装甲蜂が集まって来たところで、次弾を装填していたリリィの八式が火を噴く。


「豪快魔弾・ハナビ」


 発射された砲弾は大きく爆発し、集まっていた装甲蜂達を一瞬で焼き殺す。

 しかし装甲蜂達も学習したのか、それ以上、路地へ近寄ろうとはしなかった。

 リリィは路地での戦闘に見切りをつけ、次のポイントへ移動することにした。


「よし、あと10匹!」


 路地から反対側へ走りながら、砲身にセットされた鏡を利用しつつ背後から迫る敵の数を確認する。

 広場へ駆け込むと、噴水を挟んで反対側へ回るように走った。

 飛来する装甲蜂が広場へ到着した瞬間、噴水を根元から撃ち抜く。

 圧力の調整が利かなくなった噴水は、巨大な間欠泉のように爆発し、水飛沫を広場中にばら撒いた。


「その薄い羽、水に濡れれば飛べないでありますよね」


 先頭にいた装甲蜂5匹の羽が濡れ、よたよたと地に墜ちる。

 飛来する装甲蜂から逃げるように走りながら、通りすがりに地に墜ちた装甲蜂の身体を撃ち抜いていく。

 壊れた噴水を挟んでぐるぐると回りながらトドメを刺すと、残り5匹となった装甲蜂を睨み付ける。

 準備してきたギミックは使い果たした。ここからは、小細工無しの正面戦闘となりそうだった。


「仲間を撃ち抜かれ、悔しいでありますか? 悲しいでありますか? 怒っているでありますか? 私は、怒っているでありますよ。ハニヤ殿の、ミードの街の皆さんの努力の結晶を、簡単に壊そうとするあなた達に」


 言葉も通じない装甲蜂だが、リリィの気迫がそうさせたのだろうか、じりりと対峙したまま、リリィの言葉を聞くかのように睨み合う。


「魔王軍だろうが、魔物だろうが、例え神だったとしても、人が命をかけて育てたものを……彼らの宝を、横から掠め取るようなことは、世の理が、弱肉強食が、どんな理不尽が許そうとも、この私が許さないであります」


 そう言うと、リリィは装甲蜂に向かって駆けた。

 一瞬、虚を突かれたかのように動きが止まった装甲蜂だったが、我に返ったのか針で突き刺そうと反撃の姿勢を取る。

 リリィは自身に向かう針の先端を砲身で払うと、バランスを崩した装甲蜂に砲身を密着させる。


「零距離射撃……発射!」


 砲撃と共に、装甲蜂は10メートル程吹き飛ぶ。

 その胴体は焼け焦げ、半分程は消失していた。

 爆風で飛び散った装甲蜂の殻がリリィの肌を切り裂く。

 しかし、切り裂いた、それだけだ。リリィは止まらない。

 そして、これ程の威力の砲撃を行いながら、リリィは全く反動に弄ばれることはない。

 むしろ、反動を使い距離を取ると同時に高速で装填を行い、側面から迫っていたもう一匹の装甲蜂に砲口を向ける。

 しかし待ち構えていたかのように体当たりを受けると、リリィは大きく吹き飛ばされ、背後の壁に叩き付けられた。


「っぐ……ハァッ!」


 内蔵にダメージを受けたのか、リリィの口から血が吐き出される。

 しかしリリィは身体を叩き付けられながらも、砲口だけは装甲蜂に向けたままだった。


「お返し……であります」


 ドゥン! と音を立てて撃ち抜く。

 血を吐きふらつきながらも、リリィは立ち上がる。

 残り三匹となった装甲蜂が、装填前に仕留めると言わんばかりに同時に攻撃を仕掛けるが、リリィは装填していないまま引き金を引く。


「疾風魔弾・ハヤブサ」


 ハヤブサは他の砲撃のように魔弾を装填しない。

 あらかじめ砲身に蓄積されている魔力を使用し、瞬時に空砲を撃つのだ。

 その威力は方針横のダイヤルで調整が可能だが、最大にして撃てば移動の補助ともなるような威力である。


 ボウッという音と共に反動で距離を取ったリリィは、ダイヤルを最大に調整する。

 そして今度は地面に砲口を向けると、角度を少し調整した後にまた撃った。


「さぁ……決着をつけるでありますよ……」


 高く飛び上がったリリィは、屋根の上に着地する。

 リリィを追って装甲蜂が屋根の上まで飛翔した時、目の前には八式を構えたリリィと、光る砲口があった。


「あと……2匹……」


 先に上昇した仲間が撃ち抜かれたのを見て、やや距離を取る装甲蜂を睨み付けると、リリィは屋根を蹴って空へ飛び込んだ。

 急な肉弾戦に驚いた装甲蜂は、針で応戦すべきか、さらに距離を取るべきか一瞬判断が遅れた。

 遅れて構えた針はリリィの腿を突き刺すが勢いは止まらない。

 そして、既にリリィが砲身を振り下ろしていた。


バギッ


 鉄の塊で頭を殴られ、羽ばたきが止まる。

 共に落下する装甲蜂に向かって、リリィは砲口を向けた。


「すみませんが……心中するのなら……綺麗な女性と決めているのでありますよ」


 地上にぶつかる直前、砲口が光った。

 装甲蜂が石造りの地面にめり込むが、リリィは砲撃によって衝撃を打ち消して着地する。

 ごろりと受け身を取ってから、残った最後の装甲蜂へ砲口を向ける。


「さぁ……最後の一匹であります……」


 装甲蜂はリリィに勝てないと見るや、背を向けて逃げようとした。


「ここまでしておいて……それは虫が良すぎやしないでありますか? 逃がしは……しないのでありますよ……!」


 高速で距離を離そうとしていく装甲蜂に対して、リリィの突き刺された左足は血に濡れ、とても追撃できそうではない。

 リリィはハニヤのスカーフの匂いを嗅ぐと、スッと瞳の中の炎を鎮めた。


 いや、炎を鎮めたのではない。

 赤く激しく燃え盛る炎から、静かに燃える超高熱の青い炎へ、その性質が変化したのだ。


「フォーカス……オン」


 照準器の十字架の中に装甲蜂を収める。


「距離……100セット……風補正……3……発射」


 魔弾砲とは、本来狙撃用には作られていない。

 弓で対抗し切れない大型の敵に対し、近~中距離において物理攻撃をするというコンセプトの武器だ。

 ただでさえ予測の難しい風の影響、そして動く的を狙うということに加え、制御の難しい大きな反動、取り回しの難しい巨大な砲身がその理由である。

 しかし逆に言えば……これらの条件をクリア出来れば……狙撃が可能なのである。


 リリィはハニヤの匂いを嗅ぐことで、全神経をその一発に集中させた。

 通常、どんな熟練のガンナーですら不可能と言うであろう攻撃を、たった一発で成す為に。


 ぶわっ! と着弾点から砂埃が上がる。

 装甲蜂の姿は、見えない。

 リリィは、砂埃の中で揺らぐ影をじっと見つめる。



 砂埃が晴れると、そこには撃ち抜かれた最後の装甲蜂の死骸があった。


「ハニヤ殿……守ったでありますよ……」


 そう呟くと、リリィは満足げに倒れた。

 誰もいない、装甲蜂の死骸と激しい戦闘の痕だけが残った街を、リリィから流れ出る血が染めていった。

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