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プロローグ1 異世界転生部日本支部長へ昇進です!

「低位女神日与子(ヒヨコ)を異世界転生部日本支部長に任命する」


 ここは天界。神達の世界。

 ヒヨコは、昇進辞令を受けて喜びを噛み締めていた。


「これで、やっと私も管理職……!」


 ヒヨコの出世は遅かった。

 同期は皆、とうの昔に管理職へ昇進しており、ヒヨコとの差は開くばかりだった。


「ヒヨコ、まずは昇進おめでとう。長かったけれど、よく頑張りましたね。今日はあなたの次の仕事についてのお話よ」


 本に囲まれた立派な執務室でヒヨコに話しかけるのは、学生時代から憧れている先輩女神のオウルだった。

 オウルは天界学校を首席で卒業しており、卒業後もあらゆる部署で噂になる程に優秀だ。

 今は中位女神として秘書室長を務めており、高位の神達によって構成される役員会を補佐している。


「あなたが配属される異世界転生部は、つい先日の役員会で新設が決まった部署です。……あぁ、紅茶ね。ありがとう。あなた達はもう下がりなさい」


 紅茶とお菓子が運ばれて来ると、オウルは部下の天使達を下がらせた。


「さて……ヒヨコ、扉に鍵を」

「はい先輩」


 ヒヨコが慣れた手つきで扉に鍵を閉めると、オウルは眼鏡を外して大きな溜め息をついた。


「ヒヨコ、改めて昇進おめでとう。でも、今こっちはかなり大変よ。あなたも、ラッキーだったのかアンラッキーだったのか……まずはこの地獄を抜けないと分からないわね」

「先輩、異世界転生部とはどんな部署なのですか? 地獄って、一体何があったんですか」

「順に説明していくから、よく聞きなさい。あんのクソ役員共の思い付きなんだけれど……」


 ヒヨコ以外誰も聞いていないことを良いことに、オウルはデスクに肘を付くと役員会への不満を話し始めた。

 学生時代から、オウルはヒヨコと二人きりの時だけは愚痴をこぼすことがある。


「まずね、何なのかしら、あのジジイ共。お互いに『ブーたん』だとか『よっしー』だとか呼び合って。議事録書いてるこっちの身にもなりなさいって……『ゼっちゃん』だとか『オデ兄』だとか意味不明よ! 頼みの綱の女性陣は『アマティ殿~』とか呼ばれてのほほんとしているし!」

「だ……だいぶ大変なんですね……」


 ヒヨコは、どの役職でも仕事は大変なんだなと思った。


「それで、役員会で出た話がね……」


 オウルは恨めしそうな顔をしながら、役員会での出来事を語った。



 ~女神オウルの回想 ツッコミ入り~


「あ~最近、下界ウォッチングもマンネリやなぁ~」


 よっしー、会議が始まると同時に、天井を仰ぐな。

 あと、いきなり脱線させんな。


「ん~、今確認しておるが、確かにどこも似たような発展ばっかりしておるな。また新しい世界作るかの?」


 オデ兄、タブレットで世界一覧を見るのは良いが、お前は仕事を増やすような発言をするな!


「オデ兄さん、そう言ってこないだ量産した結果が今ですわよ。増え過ぎて、私は最近1話切りが多くなってしまいましたわ」


 アマティ、オデ兄に釘を刺したのはグッジョブだ。

 でも10年を1話と略すのを止めような。


「アマティ殿、同意ですぞ。拙者、今期は見ている世界が20本を超えておりますが、なかなかヒット作に恵まれないでござる」


 ゼっちゃん、世界をしっかり見守ってくれるのは良いが今世紀を今期と言ったり、世界を本で数えるのを止めろ。

 というかこいつらは世界をアニメか何かだと勘違いしているのか?


「ちょっと、ゼっちゃんそれ見過ぎwww」


 はい、議事録に「www」と草を生やさないといけない私の気持ちになれ。

 お前はもっとまともな喋り方をしろブーたん。


「ワシ、見切れんで録画しとった世界、気付いたら滅んどった……」


 オデ兄、お前は録画で満足せずにちゃんと見守りの仕事しろ。

 何億年放置したら滅びるんだよ。


「あるある過ぎるwww」


 ブーたん、お前もか。


「お……待て待て! 今名案が浮かんだで!……セルフ天啓や!」


 よっしー、頼むから役員会の度に全然良くない名案を自信あり気に披露しようとするのはやめてくれ。


「「お??」」


 全員、頼むから期待するな。軌道修正をしてくれ……


「全然違う文化の世界で育った人間を別の世界に送り込んだら、何か面白い展開起きるんじゃね?」


 よっしー!! 頼む、もう止めてくれー!


「「!! 神 !!」」


 同調するなー! 仕事するのこっちだぞクソ役員共!


「送るのは、途中で帰りたいとか言わないように、若くして不幸な事故とかで死んだ奴が良いと思いますぞ!」


 ゼっちゃん、それを全世界線から見付けて来るのは誰の仕事かな?


「転生か! それなら帰りたくても帰れんな! HAHAHA!」


 ブーたん、イラつくから急にアメリカ人みたいになるな。


「なんか、モチベ高く行って貰った方が面白いことをしてくれそうやなぁ。あ、せや、チートスキル授けたろ!」


 よっしー! やめろぉー、やめてくれぇー! 認可するチートスキルの一覧表とか作るのどれだけ面倒だと思っとんじゃー!


「「イイネ!」」


 良くない、全然良くない!

 頼むからヨクナイネ! ボタンも置いてくれ!


「という訳で諸君、新部署の立ち上げと運営よろしくぅ!」


 オウルは考えることをやめた。



「ということがあったのよ……」

「た……大変だぁ……」


 オウルは話し終えると、ぐったりとデスクに突っ伏した。


「という訳だからね、ヒヨコ、あなたもこれから忙しくなるわよ……今回は実験的なプロジェクトだから、地球で候補者を集めてナナイロへ転生させるルートだけだけど……役員共のノリ次第でもっと大変になるかも……」


 ひぃっ! とヒヨコは顔を強張らせた。

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