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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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蛮行

「ちっ、娘はテレパシストか、助けを呼ばれると面倒だな。始末するか」

 マオという男に普通の人間の感情は欠落していた。

 まるで食事でもするかのような気軽な口ぶりで次の犯行を口にした。

《畜生、刀に魂を封印されていなければ、こんな奴ら!》

「マオ兄貴、娘はすごい上玉ですぜ、俺がジャミングで黙らせます」

 パクという男は人道主義の見地から言ったのではなかった。

 その証拠に下卑た欲望を口元に浮かべていた。

「そうか」

 マオの返事とともに今度は年配の女性の背中から赤いものが飛び散った。

 マオは何の逡巡もなく、大地に転がる小石を念動力で銃弾のように加速して女性を撃った。

 テレパシーを操り、人の心を読めるはずのパクがマオを恐れる理由は恐らくこれなのだろう。

 人を殺すことに一切の逡巡をしないこの男が相手では、考えを読んで回避する余裕はない。

「母さ……」

 母親の異変に気付いた少女は母親の様子を確認することもできず、頭を押さえてうずくまった。

 パクが少女に『思念波』を断続的にぶつけていた。

 パクが先ほど発言したジャミングというのがこれだった。

 『思念波』を不規則に相手にたたきつけるテレパシスト特有の攻撃方法だ。

 『思念波』で精神を攻撃されたため、少女は精神を集中することができず、能力を発揮することができなくなった。

 先ほどの強力な『思念波』から考えれば、テレパシストとしての格は彼女の方がパクよりもずっと上のはずだった。

 先に『思念波』による攻撃を仕掛けていれば、沈黙させられたのは、パクやマオの方だっただろう。

「やっぱり、マーズ連邦の奴らはダメだな。能力の使い方がまるで分かってねえ」

《こいつら!》

 俺は激しい怒りを感じたが、どうすることもできなかった。

 俺の能力は『障壁』を自分の周囲に形成するというものであり、マオのように念動力で小石を銃弾に変えることも、発火能力で周囲を焼き尽くすようなこともできなかった。


 二人の犯罪者は悠々と馬を走らせ、頭を押さえて苦しむ少女に近づいた。

 そして馬を降りると、血まみれの遺体の衣服や地面に放り出された荷物を乱暴にまさぐり、金目の物を物色し始めた。

「なっ、何を……」

 両膝をついてうずくまっていた少女はよろよろと立ち上がり、父親の亡骸にとりついていたマオに近寄ったが、マオは少女をろくに見ることもなく手の甲で彼女を殴り倒した。

「ちっ、しけてやがんな。この程度の金貨じゃ、二〇日分の生活費にもなりゃしねえ。パク、そっちはどうだ?」

「ダメです。兄貴、ババアの方は金目の物を持っちゃいません」


《畜生、俺はこんなクズどもとこれからも行動を共にするのか!》

 俺は暗澹たる気持ちになったが、二人の犯罪者の宴には続きがあった。


「仕方ねえ、足りない分は娘に楽しませてもらおう」

 マオは死んだ男から奪った金貨を懐にしまい込むと、殴り倒した少女に歩み寄った。

《こいつ……》

 マオに殴り倒され、パクのジャミングで苦しむ少女は赤い大地にその身を横たえ、端正な顔に苦悶の表情を浮かべていた。

 マオは、そんな彼女の外套の襟をつかむと乱暴に左右に引っぱった。

 外套のボタンが弾け飛び、外套の下に着ていたクリーム色のセーターと赤いチェックのスカートが顕わになった。

 マオは倒れている少女に覆いかぶさりチェックのスカートをたくし上げると、彼女の細く白い太ももの間に自分の膝を滑り込ませた。

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