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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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突破

 いつ攻撃を受けるかわからないので、俺は『障壁』の能力を全開にした。

 そのため、カレンはテレパシーでヴォガードの悪行を周囲に伝えることができなかった。

《いいのか、カトー中尉はお前の嘘を信じてるぞ》

 嘘というのは、カレンがケント・クラウチの生まれ変わりだと宣言したことを指している。

 はっきりとした形ではなかったが《ごめんなさい》、そんな感情が伝わってきた。

 しかし、一番罪深いのは俺だ。自分の復讐のためにカレンを利用し、レイジを巻き込んだ。

《ところで勝算はあるのか? 悪いが俺には何のアイディアもないぞ》

 我ながらひどい人間だと思う。いやもう人間ではないか……

《ありません》

《まさか、死ぬ気か?》

 警備網を突破したとしてもヴォガードは俺と同等の『障壁』の能力を駆使することができる。

 持久戦に持ち込まれたら、すでに能力を全開にしている俺の方が圧倒的に不利だった。

《でも、何とか説得します》

《説得?》

《はい》

 俺は自分の聴覚を疑った。

《ヴォガードは説得など受け付けるタマじゃないぞ》

《わかってます》

《じゃあ、なんだ?》

《説得するのは、マジックアイテムの皆さん方です。あなたのような》

 この娘は、どこまでもまっすぐなんだなと俺は感慨に浸った。

 その瞬間、マスケット銃による一斉射撃を受けた。

 黒色火薬の煙で周囲が白くかすんだ。

 『障壁』の能力のお陰でカレンには傷一つつかなかった。

 警備兵たちは抜刀してカレンに迫った。

 マスケット銃は単発式の先込め銃なので、連続射撃は行えない。

《殺さないでください》

《めんどくさいな》

 カレンは斬りかかってきた相手の刀を粉々に砕き『障壁』で強化された拳で相手を殴った。

 相手はブロックしたが、ブロックした腕の骨が砕けた。

 たった半年程度の訓練しか受けておらず格闘者としては未熟だったが、『障壁』の能力で強化された突きや蹴りは異常な威力を発揮した。

 戦場であれば、突きや蹴りを刃物に変えるところだが、《殺さないでください》と意思表示したカレンの気持ちを汲んでそれはやめておいた。

 数分の戦闘の後、カレンの行く手を阻む兵士は建物の外にはいなくなった。

《『障壁』を解いてください》

《気をつけろよ》

 俺はカレンのやろうとしていることがなんとなくわかった。

 カレンのやろうとしていることに『障壁』は邪魔になる。

 しかし、『障壁』を解除した瞬間に狙撃されたらアウトだ。

《大丈夫です》

 カレンは、大きく深呼吸し、愛らしい顔に強い決意をにじませた。

 『障壁』を解いた瞬間、強烈な『思念波』が周囲に広がった。

 俺は、妹のレナのビジョンを再び見せつけられた。

 怒りと悲しみと後悔が渦を巻き、俺の心は押しつぶされそうになった。

 これでヴォガードを守ろうという兵士が減ってくれれば有り難いが、議事堂前でのことを思い出すと過度な期待はできなかった。 

「行きます」

 『思念波』による『放送』は終わった。俺は再び『障壁』でカレンを包み込んだ。

 両開きの立派な正面玄関から、カレンは執政官官邸の中へと入って行った。

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