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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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執政官官邸

「俺は能力が弱くてな、移動距離も限られるし、運べる荷物の重さも限られる。お前の体重が軽くて助かった」

 一瞬のことだった。気がつくと俺とカレンを取り囲んでいた兵士たちはいなくなっていた。

 周囲の景色に見覚えがあった。先日警備した執政官官邸の前だった。

「なぜ?」

「大切な弟子だからかな。あるいは同じ復讐者として共感したからか……俺も昔恋人を殺されてな」

 レイジの表情は見たことのない優しさにあふれていた。

 しかし、俺としては、あの状況から脱出させてくれたことには感謝したものの、脱出先が執政官官邸前というのは気に入らなかった。

 単に逃がしてくれただけでなく、復讐の手伝いまでしてくれるつもりらしいが、大きなお世話だ。

「こんなことをしたら、カトー中尉まで追われる身になってしまいます!」

 カレンは金色の髪を揺らし、目に涙を浮かべてレイジのことを見つめていた。

「いいんだ」

 レイジは静かに言葉を返した。

「もう疲れた……お前はきちんと区切りをつけてこい」


 レイジとカレンが、悠長にそんなやり取りをしている間に、執政官官邸の正門前を警備していた二名の兵士が突然テレポートしてきた二人の男女に気付き、緊張を走らせた。

「貴様たち所属は?」

 遠くから強い口調で尋ねられた。

 どう返答するかカレンとレイジが一瞬迷った瞬間、別の兵士が正門の兵士のすぐ近くにテレポートしてきた。

「テロリストだ! 警戒を厳にせよ!」

「おい、ひょっとして、あいつらか?」

 正門前の兵士がカレンとレイジを指さし、テレポートしてきた兵士は顔を強張らせた。

「そうだ! あの女だ!」

 次の瞬間、カレンは持ち上げられ、思い切り地面にたたきつけられた。

 地面にカレンよりも一回り大きな窪地ができた。

 間一髪、俺は『障壁』の能力でカレンを守っていた。

《早く起きろ!》

 俺をカレンに催促しながら周囲の様子を窺った。

 レイジがテレポートで正門前に移動し、流れるような動きで刀を振るった。

「カトー中尉!」

 身体を起こしたカレンが珍しく金切り声を上げた。

「安心しろ、峰討ちだ」

 レイジの頭の後ろで束ねた黒髪が踊っていた。

 これで完全に共犯になってしまった。単なる逃亡幇助ではない。

 峰討ちとはいえ、剣筋を見る限り相手は鎖骨や肋骨を折る重傷のはずだ。

「もう、やめてください!」

 レイジに向かってカレンが叫んだ瞬間、レイジは苦しそうに頭を押さえ、膝をついた。

 『ジャミング』だ。離れたところからテレパシーでレイジの能力を封じているらしい。 

 カレンはレイジに駆け寄った。

 門の内側、建物の方角に数名の兵士が集結しているのが見えた。

 誰がテレパシー能力者かは、わからない。

 悪いことに全員マスケット銃を肩に担いでいた。

 カレンはともかく、この状況でレイジが銃撃されるのはマズい。

「ありがとうございました」

 カレンはレイジに向かって頭を下げた。

 そして、レイジに背中を向けると金色の豊かな髪を風になびかせ建物に向かって走り出した。

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