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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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忌まわしき能力

 アレス共和国軍の本部建物にある尋問室で、ポールとカレンは、その日、朝から夕方にかけて十六名の兵士を尋問した。

 当然、犯人につながる糸口は見つからなかった。

「いやあ、疲れたよね。カレンちゃん」

「はい」

 長時間、能力を行使したこともさることながら、カレンは昨晩ほとんど眠っていなかった。

 気を抜けば椅子に座ったまま眠ってしまいそうな様子だった。

 尋問室は狭く、四人も座ればいっぱいになってしまうくらいの大きさで、窓には鉄格子と金網、扉は鉄製で強化ガラス製の小さな覗き窓が設けてあった。

 快適性とは無縁の空間にカレンはポールと二人きりになっていた。

 先程まで、廊下には容疑者呼び込み役の兵士がいたが、予定されていた尋問が終わったために引き上げていた。

「そう言えばカレンちゃんは、余程じゃない限り、刀を腰に下げているよね」

 相変わらず馴れ馴れしい態度でポールはカレンに話しかけた。

「はい、お守りですから」

「今も、その刀しゃべったりするの?」

《こいつ、一体何を言い出すんだ!》

「え?」

 ポールはそう言いながら、何気なくカレンの肩に手を置こうとしていた。

《気をつけろ! カレン》

 接触テレパスのポールに触れられるというのは、重大な意味がある。

「触ったら、セクハラで訴えます!」

 カレンが反射的に叫び、ポールはすごすごと手を引っ込めた。

「ごめん、かわいいから、つい」

 こっちが恥ずかしくなるようなことを平気で言う男だった。

 さすがにお人よしのカレンも垂れ目がちの優しい目に警戒の色を浮かべた。

「ホントに、ごめん。ところでヴォガード卿はどうやって暗殺の危機を脱したんだろうね」

 ポールは突然、話題を変えてきた。こいつのノリには本当についていけない。

「どういうことですか?」

 カレンの目に警戒の色は浮かんだままだった。

「ヴォガード卿は寝込みを襲われたんだよね」

 カレンとポールは容疑者を尋問するために事件当時の状況をかなり詳しく教えられていた。

「そう聞きました」

「犯人は無力化ガスを使用して官邸内の警備兵をすべて役立たずにした」

「はい」

「そして犯人は『障壁』の能力で、ヴォガード卿の発火能力に対処しながら、ヴォガード卿に襲い掛かった」

「そう、説明されました」

 本当は説明されるまでもなく、俺たちはその場で体験していた。

「おかしいよね」

「何がですか?」

 カレンは本来であれば心臓が口から飛び出るくらい緊張するはずだったが、猛烈な睡魔に襲われているため良い具合に反応が鈍かった。

「普通、その場合、ヴォガード卿はそのまま殺されてるんじゃないのかな。能力の相性から言って。それに何でヴォガード卿は無力化ガスにやられなかったんだ? 寝る前にガスマスクでも着用して寝るのか?」

 テレポーターなら逃げることができるだろうし、重いものを持ち上げることのできるサイコキノなら、犯人を建物の外に放り出すこともできるだろう。

 しかし、ヴォガードの能力は発火能力だ。

 能力を封じられたヴォガードは『障壁』の能力者に斬り殺されているはずだった。

 ポールの推理は的確だ。

「相手の能力者に何か制約でもあったのかもしれません。『障壁』の能力といっても人それぞれですから……」

 カレンは多少ぼんやりした表情でごまかした。

 確かに『障壁』の能力といっても人それぞれだ。

 俺のように『障壁』の表面を刃に変えることのできる能力者は他に知らない。

 ほかにも物理的な攻撃しか防御できない者、刀は防げても銃弾は防げない者、『思念波』しか防げない者という事例を知っている。

「じゃあ、ガスは?」

「わかりません」

「ふうん……ところでカレンちゃん、アレス共和国の建国の四英雄の話って知ってる?」

《なんなんだ、こいつは! 話の展開についていけない! 単にカレンと話をしたいだけなのか?》

「はい、難民収容所で教えてもらいました」

《カレンもいい加減こんなニヤケたやつとの会話なんか切り上げればいいものを》

「サイコキネシスのマイク、テレポートのシャオロン、テレパシーのシルビア、そして忌まわしき能力のゲオルグ……ゲオルグの能力って何だと思う?」

 そんな会話を大昔に、ジョン・リードと交わした記憶がよみがえった。

「興味ないです」

《いいぞ、その調子だ。こんなやつ放っておいてさっさと帰ろう》

「死んだ人間の魂を操る能力さ」

「……そうなんですか?」

 カレンは眉をひそめた。

「具体的には、ゲオルグは死んだ人間の魂を物に固着することができた。死んだ人間の能力を使えるマジックアイテムを作ることができたんだ」

《ヴォガードの能力だ……》

 俺はヴォガードの能力は、発火能力だという考えから、このときになって、ようやく解放された。

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