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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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攻撃開始

 科学遺跡『宇宙の港』は小高い丘の上に位置していた。

 金属製のフェンスが敷地を取り囲み、二本の金属製の長大なレールが灰色の雲が広がる空に向かって斜めに伸びていた。

 白いコンクリート製の巨大な建物がフェンスの向こう側にそびえ、屋上には赤茶色の皮鎧に身を包んだ我が軍の兵士たちが見て取れた。

 彼らはフェンスにとりつこうとしている敵マーズ連邦の攻撃部隊に銃撃を加え、なんとか『宇宙の港』敷地内の侵入を防いでいた。

 俺たちは間に合った。

 敵マーズ連邦の攻撃部隊は事前情報どおり、主に丘の斜面に展開していた。

 『宇宙の港』周辺は小石の転がる赤茶色の荒野で、植物はほとんど生えておらず、斜面の下には水たまりができていた。

 火星の大地で目立たないように、マーズ連邦も我々同様、鎧は赤茶色が基調だったが、より目立たないように暗灰色と赤茶色の迷彩模様が施されていた。

 兜は階級に関係なく、赤茶色で装飾のないシンプルなデザインで、ブーツは全員黒だった。

 先程、テントを襲撃したような黒づくめの特殊部隊の存在は遠くからはわからなかった。


 我々の接近に対応して、おびただしい数の兵士たちが布陣を変更しはじめた。

 父の思惑通り、敵の右翼はぬかるみに足をとられて動きが遅れがちで陣形が崩れつつあった。

 敵の騎兵部隊はぬかるみでスピードが落ちることを嫌い、一度斜面を駆け上がって敵の左翼、こちらの右翼側から攻撃をかけようと移動を開始していた。

 ヴォガード卿の率いる我が軍の騎兵部隊も右翼側に展開しており、敵の動きを見ると、一気に突撃を開始した。

 ともに兵力は約一万人だが、騎兵部隊に関してはこちらが相手の二倍の戦力を誇っていた。

 ヴォガード卿は圧倒的に有利に戦闘を進めるだろう。

「攻撃開始!」

 ヴォガード卿の動きを追認するように執政官の号令が聞こえ、我が軍の野戦砲が火を噴いた。

 野戦砲は小型の大砲を台車に乗せた代物で、遠距離攻撃用の主力武器だった。

 砲兵部隊は歩兵部隊の後ろに位置しており、俺は次々に轟く凄まじい爆発音を背中で聞いていた。

 砲弾は敵の騎兵部隊や横っ面を見せている砲兵部隊の周囲に着弾し、爆発よる土煙を巻き上げていた。

 俺が立っていたのは歩兵部隊の最前列、父は俺のすぐ後ろだった。

 父は馬から降り、兜をかぶっていた。

 俺は俺の能力を強化するために、俺の身体よりも遥かに大きい盾を正面に向けて支えていた。

「能力を駆使しろ!」

 父はそう怒鳴ると、自分の周囲の小石を頭上高く、ゆっくりと持ち上げた。

 数は数十個といったところか。

「同士討ちに気をつけろ!」

 次の瞬間、数十個の小石は目にもとまらぬ速さで敵軍に向かって撃ち出された。

 そして、その動きは何回も繰り返され、敵の歩兵部隊の一角が崩れていった。

 父の能力は、機械文明が健在であった頃の『ガトリング砲』とか『バルカン砲』といった連射式の火器と同じような威力を発揮していた。

 一方、騎兵で突撃したヴォガード卿の前面には何本もの火柱が上がっているのが見えた。

 発火能力で敵を焼き払っているのだ。

「いけえ!」

「こなくそ!」

 様々な雄たけびが俺の周囲からも聞こえてきた。

 能力で放たれた小石や銃弾が次々に敵軍に吸い込まれていった。

 敵軍は陣形を崩しながらもこちらに向かって突撃を開始していた。

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