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復讐のインテリジェンスソード  作者: 川越トーマ
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賞金

「『スナイパー』マオの賞金が百五十万ギルダム、『ジャミング』パクの賞金が百万ギルダム、二人合わせると、一年分の生活費に相当、支給条件は生死を問わず、ただし、軍籍にある者に対しては支給しない、カトー中尉は支給対象外なので軍として支払業務は発生しない」

 いままで黙って手配書をめくっていた幼い雰囲気の小柄な女性が無機質な声を響かせた。

 褐色の肌で、長く縮れた黒髪をポニーテールにしていた。

 背中にマスケット銃を背負っていた。

 銃の大きさは普通だったが、小柄な彼女が背負うと不釣り合いに大きく見えた。

「そうでもないんだな、これが」

 ポールがポニーテールの少女をからかうような素振りを見せた。

「えっ?」

 ポニーテールの少女は乏しい表情のまま、さも意外そうな声を上げた。

「セリーナ、パクを斬ったのはカトー中尉だけど、マオを倒したのは彼女よ。多分」

 それまで、熱血漢のハリムと言葉を交わしていたマーサが、ポールたちの話に加わってきた。

「だね」

 ポールがうなづいた。

「事実?」

 驚いた感情を短い言葉に乗せて、セリーナはくりくりとした黒い瞳をカレンに向けた。

「よくわからないの」

 カレンは言葉を濁した。

 実際、マオを斬り殺した瞬間をカレンは見ていない。

 それに、マオを倒した際のことを説明しようとすれば俺のことを詳しく話す必要がある。

「マオはAクラスのサイコキノ。あなたは一体どんな能力者?」

 セリーナは、黒く丸い目を細めた。

《余計なことはしゃべるな、考えるな》

 俺は、俺とカレンの周囲に『障壁』を展開したうえで、短く彼女に指示した。

 カレンの周囲に長く『障壁』を張り続けると、テレパシストであるポールに気付かれる。

 俺は彼女に自分の意見を伝え終わると、『障壁』を自分の周囲だけに限定した。

 いろいろ気を使うことが多く、ひどく精神的に疲れてきた。

「テレパシストではあるようだよ」

 まるで、カレンに助け舟を出すかのようにポールが口をはさんだ。

 優しげな微笑みをたたえたままだ。

「ひょっとして剣術の達人?」

 セリーナは畳みかけた。

 幼い外見とは異なり、犯罪容疑者に対する尋問は慣れているようだった。

「それは……」

 カレンは言葉を濁した。

 不安ではあったが、俺は介入しないことにした。

 面倒なので俺のことは隠しておいて欲しかったが、バレたらバレたで仕方がない。

「その部分の彼女の記憶は曖昧なんだよね、マーサ君はなんか見た?」

「いえ、私が到着した時には、すでにあの男は死んでたわ」

 ポールの問いかけにマーサは首を振った。 

「刀を見せて」

「えっ?」

《好きにしろ》

 俺の心の声を確認してカレンは俺をセリーナに渡した。

 セリーナは俺を鞘から引き抜くとしげしげと刀身を見入った。

「血糊がついてない。この刀は最近人を斬っていない」

 そう、マオを斬ったのは刀ではなく、俺の能力だ。

「……」

 カレンの緊張が伝わってきた。

 セリーナは超能力を使用することなく推理で真実に迫ってきた。

「ごめんなさい。証拠と証言が揃わないと賞金が支払えない。公費だから」

 しかし、セリーナが気にしていたのは俺やカレンが気にしていたのとは全く別の次元の話だった。

「構いません。別に賞金は欲しくありませんから」

 カレンは半ば安堵したように、そして、少し気分を害したように答えた。

「ごめんなさい。オハラさん。セリーナに悪気はないの、許してね」

 マーサは、両親を亡くした犯罪被害者であるカレンに金の話を始めたセリーナに苛立ちを示した。

 そして、カレンの気持ちを理解できないセリーナに代わって頭を下げた。

 先ほどのレイジとハリムの一件といい、マーサは損な役回りを演じることが多いらしい。

「大丈夫です。それに私のことは、カレンでいいです。きっとマーサさんより年下ですし」

「何歳?」

 すかさず質問したのは、マーサではなく、セリーナだった。

「十六歳です」

「マーサとポールが二〇歳で、私は十七歳、私の方があなたよりちょっとだけお姉さん」

 セリーナはそう言いながら初めて褐色の顔に笑顔を浮かべた。

 意外とあどけない笑顔だった。

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